「ドイツ車=長く乗れる」説を徹底検証
多走行車にはお得なクルマが隠れている!
メルセデス・ベンツE320 4MATIC
ステーションワゴン (S210)
多走行車に対する
一般的イメージは本当か?
中古車における多走行というと、走行10万㎞以上をイメージする人が多いと思う。中古車マーケットでは、走行5~7万㎞といった一般的な中古車に比べて多走行車は割安になっている。ご存知のように中古車相場は需要と供給の関係で成り立っているので、ニーズが少なくなれば価格は安くなる。けれども安いからといって手を出せないのは、コンディションが悪い、トラブルが心配といった理由が一番だと思う。
でも、そのイメージは本当に正解なのだろうか。多走行であっても、前オーナーが大切に乗ってきたクルマはオドメーターの数字以上に良いコンディションを保っているのだ。走行20万㎞でも内外装はピカピカ、機関も絶好調というクルマも実際に存在している。だからこそ、「多走行」という理由だけで本当にお得な中古車を見逃してしまうのはもったいないと思うのだ。そこでここでは、中古車マーケットに流通している走行12万㎞のメルセデス・ベンツをサンプルにして、多走行車の現状を探っていきたい。
サンプルカーは99年式のE320 4マチックステーションワゴン。S210と呼ばれるタイプで、中期型にあたるモデルだ。丸目4灯のヘッドライトや曲線を多用したデザインはこれまでのメルセデスの雰囲気とは異なるが、新車時には爆発的な人気を集め先代型よりも大幅に販売台数を伸ばしている。インテリアの雰囲気もモダンな印象になり、ウッドパネルを多用したインパネ回りはドイツ車らしい高級感に溢れている。
ワゴンとしての性能も非常に高い。広大なカーゴルームは使い勝手が良く、荷室の下にはサードシートまで備わり最大で7人まで乗車することが可能。サードシート用のドリンクホルダーまで備わっているのだ。 さらに、テールゲートを軽く落とすだけでロックしてくれるクロージングサポート機構や、重い荷物を積んでも車高を一定に保つ油圧式レベライザーなどメルセデスらしい実用性を重視した作りになっているのが魅力だ。メルセデスのワゴンは、初代モデルから世界中のワゴンのお手本とされてきた。3代目となるS210も、ワゴンとしての実力はトップレベルにあると言ってもいい。
ルックスは前期型だが、エンジンは後期型にも積まれた新世代のV6SOHC。低回転域から太いトルクを発生させ、燃費性能にも優れたパワーユニットである。これに電子制御式の5速ATが組み合わされ、効率的な制御を実現している。
S210全体の中古車相場を見てみると20~120万円で、平均走行距離は9万㎞。ワゴンは走行距離が多めの傾向があるものの、2世代前のモデルということもあり多走行車も流通している。走行10万㎞以上に絞ってみると、20~70万円という相場なので、非常に割安な状況になっているのだ。
今回、神奈川県横浜市にあるアイディングからお借りしたS210は走行12万㎞で48万円。実際に乗って触ってみた印象を、買う気でレポートしていきたいと思う。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )
Profile of Mercedes-Benz S210
車内の快適性を高めた
長距離ドライブ向きのワゴン
程よいパワーで
ワゴンの重たさを感じさせない走り
街中から高速まで
メルセデスらしさを楽しめる
外装は内装に比べて
リーズナブルに再生できる
まずは、外装回りから見ていこう。細かなキズがあるのは価格を考慮しても仕方がない部分。バンパーにも目立つキズがあるが、中古パーツが豊富にあるS210なのでそれらを活用すれば問題ないだろう。経年劣化によって白く腐食してしまうモールも気にならないレベルだ。
長野ナンバーということもあり、タイヤはスタッドレスを装着していた。購入時にはタイヤを履き替える必要はあるが、好みのタイヤをチョイスした上でスタッドレスまで付いてくると考えればそれほどネガティブな要素ではない。それに多走行車はタイヤの交換時期に来ているケースが多いので、ここは消耗品と割り切るべき。最近ではリーズナブルなタイヤもたくさん流通しているので工夫次第で費用は抑えられる。
インテリアは前オーナーから預かった状態で、販売店でのクリーニングはしていない。それでもキレイな状態を保っていて、ウッドパネルにも目立つようなキズはなかった。レザーシートに擦れキズなどはなく、座る機会が多いドライバーズシートの座面も沈み込むような印象はない。適度にスプリングが効いた座り心地を維持しており、助手席や後席においても違和感はなかった。
内外装をジロジロと眺めた後、普段の実用でありがちなシーンをシミュレーションしてみることにした。まずはエンジンをかけてみると、一発始動でアイドリングも安定している。ATをDレンジに入れた時のショックもない。このまま街中を走ってみたが、気になる異音や振動はなく、ATのシフトチェンジもスムーズ。排気量は3.2ℓ。軽快というわけではないが、ワゴンの重たさを感じることはなく低回転域から太いトルクで引っ張ってくれるような印象だ。V8のような強烈なトルクではないけれど、街中で乗る分には決して不満のない走りだった。ATが1速発進であることも影響しているだろう。
撮影地に戻り、今度は駐車場に止めてみる。ステアリングを思いっきり切っても異音などはなく、足回りアームのボールジョイントやラック&ピニオン式となったギアボックスにも問題はなさそう。ホイールベースはセダンと同じ。全長は20ミリ延長されているが、見切りが良いから運転しやすい。
駐車スペースにクルマを停めた状態でエアコンをチェックしてみたが問題なし。パワーウインドーも正常に作動していた。中古車の場合、フロントよりも開ける機会が少ないリア側をチェックすることが重要となるので覚えておこう。便利な装備であるテールゲートのクロージングサポートも正常。よくバタンと勢いよく閉めてしまう人がいるが、それはトラブルの原因になる。テールゲートを軽く落とし込むだけでロックされるので、正しく操作することがトラブル予防に繋がる。しばらく走った後に水温をチェックしてみると、気温30℃の取材当日でも90℃前後で安定していた。冷却系に不具合があれば水温にも影響するはずだから、現状においては問題ないと言えるだろう。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )
サンプルカーの現状を見る!
車高を一定に保つ油圧式レベライザー
普段の実用でありがちなシーンから
コンディションを確認してみる!
Scene 01 街中の走りはどんな印象?
Scene 02 オートマチックのシフトショックや変速タイミングは?
Scene 03 ステアリングを切った時に異音はない?
Scene 04 エアコンは壊れてない?
Scene 05 ウインドーは正常に動く?
Scene 06 クロージング機構は使える?
Scene 07 水温はどんな状況?
これから手を入れることで
信頼性はより高まっていく
今回、多走行車の現状を知るべく、いろいろとチェックしてみたが、「思っていたよりも普通に使える」という結論に至った。外装については手を入れる箇所があるものの、車両価格が安いので中古パーツなどを使えば解決できる。内装パーツは高価だが、取材車のコンディションは良好なのでとくに手を入れる必要はない。それに外装は比較的リーズナブルに再生できるので、内装の状態が良かったことは好印象だったのだ。
装備面においても不具合は見当たらなかったし、実際に走ってみても大きなトラブルを抱えている様子はなかった。このクルマを販売しているアイディングでは、同社が扱うすべての中古車に整備を施した上で販売している。今回撮影したS210もこれから点検を行ない、必要な整備を行なった上で店頭に並べるそうだ。それで48万円というプライスは魅力的だと思う。
ベースのままでも良いコンディションをキープしていたので、これから手を加えることによってより信頼性は高まる。メルセデスワゴンの中古車としては先代のS211タイプの後期型が人気だが、安くても150万円、低走行車は300万円オーバーとなっている。根強い人気を持つS124タイプも人気だが、年式的にみてもそれなりに手間がかかり強い思い入れがないと維持するのがツラくなってしまう。
そう考えると、気軽に乗れるメルセデスワゴンとして、S210というチョイスは十分にアリだと思う。エンジンの信頼性は高く、メンテナンスポイントも定番化しているから維持も難しくない。そもそも大きなトラブルが少ないクルマなので、コンディションの良い個体に巡り会えれば長く楽しむことも可能だ。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )]
取材協力 : I DING アイディング