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【GERMAN CARS アーカイブ/2014年9月号より】多走行車の現状チェック/走行12万kmオーバーのメルセデス・ベンツEクラスワゴンに乗ってみた!

多走行車というと、どんなイメージを持っているだろうか? ここでは中古車として販売されている走行12万kmオーバーのメルセデスに乗りながら、その印象をレポートしてみたいと思う。ただし、記事はすべて2014年9月号からの抜粋なので、中古車の相場や「現行型」「先代」などの表記はすべて2014年当時のものとご承知おきいただきたい。それでも長く乗れるドイツ車の資質を知ることは、現在でも大いに購入の参考になるはずだ。

 

「ドイツ車=長く乗れる」説を徹底検証
多走行車にはお得なクルマが隠れている!

メルセデス・ベンツE320 4MATIC
ステーションワゴン (S210)

 

多走行車に対する
一般的イメージは本当か?

 中古車における多走行というと、走行10万㎞以上をイメージする人が多いと思う。中古車マーケットでは、走行5~7万㎞といった一般的な中古車に比べて多走行車は割安になっている。ご存知のように中古車相場は需要と供給の関係で成り立っているので、ニーズが少なくなれば価格は安くなる。けれども安いからといって手を出せないのは、コンディションが悪い、トラブルが心配といった理由が一番だと思う。
 でも、そのイメージは本当に正解なのだろうか。多走行であっても、前オーナーが大切に乗ってきたクルマはオドメーターの数字以上に良いコンディションを保っているのだ。走行20万㎞でも内外装はピカピカ、機関も絶好調というクルマも実際に存在している。だからこそ、「多走行」という理由だけで本当にお得な中古車を見逃してしまうのはもったいないと思うのだ。そこでここでは、中古車マーケットに流通している走行12万㎞のメルセデス・ベンツをサンプルにして、多走行車の現状を探っていきたい。
 サンプルカーは99年式のE320 4マチックステーションワゴン。S210と呼ばれるタイプで、中期型にあたるモデルだ。丸目4灯のヘッドライトや曲線を多用したデザインはこれまでのメルセデスの雰囲気とは異なるが、新車時には爆発的な人気を集め先代型よりも大幅に販売台数を伸ばしている。インテリアの雰囲気もモダンな印象になり、ウッドパネルを多用したインパネ回りはドイツ車らしい高級感に溢れている。
 ワゴンとしての性能も非常に高い。広大なカーゴルームは使い勝手が良く、荷室の下にはサードシートまで備わり最大で7人まで乗車することが可能。サードシート用のドリンクホルダーまで備わっているのだ。 さらに、テールゲートを軽く落とすだけでロックしてくれるクロージングサポート機構や、重い荷物を積んでも車高を一定に保つ油圧式レベライザーなどメルセデスらしい実用性を重視した作りになっているのが魅力だ。メルセデスのワゴンは、初代モデルから世界中のワゴンのお手本とされてきた。3代目となるS210も、ワゴンとしての実力はトップレベルにあると言ってもいい。
 ルックスは前期型だが、エンジンは後期型にも積まれた新世代のV6SOHC。低回転域から太いトルクを発生させ、燃費性能にも優れたパワーユニットである。これに電子制御式の5速ATが組み合わされ、効率的な制御を実現している。
 S210全体の中古車相場を見てみると20~120万円で、平均走行距離は9万㎞。ワゴンは走行距離が多めの傾向があるものの、2世代前のモデルということもあり多走行車も流通している。走行10万㎞以上に絞ってみると、20~70万円という相場なので、非常に割安な状況になっているのだ。
 今回、神奈川県横浜市にあるアイディングからお借りしたS210は走行12万㎞で48万円。実際に乗って触ってみた印象を、買う気でレポートしていきたいと思う。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )

 

Profile of Mercedes-Benz S210

車内の快適性を高めた
長距離ドライブ向きのワゴン

 ステーションワゴンは97年モデルに追加。当初は伝統通りカーゴルームの床下に2名分のサードシートを持つ7人乗りだったが、00年のマイナーチェンジからはオプションとなった。ハイドロレベライザーやテールゲートのイージークローズ機構など、ワゴンとしての基本装備は124世代と変わらない。大きな違いがあるのが4MATICシステムで、前後比率を固定した完全なフルタイム式となっている。車内の快適性を高めた、長距離ドライブ向きのワゴンだ。
往年のメルセデスらしさを残しつつも快適性を高めたインテリア。パワーシートやエアコンなどの快適装備も正常に作動していた。ATは電子制御式の5速タイプを搭載している。
ドイツ車らしい質感の高さを持つレザーシート。多重構造を持つ作りになっていて長距離ドライブでも疲れにくい。
広大なスペースを持つカーゴルーム。リアシートを倒せば長尺物でも積める実用性の高さが魅力。
取材車には2名分のサードシートが備わる。先代から受け継がれた伝統の一つ。
取材車のルックスは前期型だが、エンジンはSOHCのV6ユニットを搭載する中期型。環境と燃費に配慮したパワーユニットで、低速域から太いトルクを発揮する扱いやすい特性。
 

程よいパワーで
ワゴンの重たさを感じさせない走り
街中から高速まで
メルセデスらしさを楽しめる

低速域から太いトルクを発生させるので、街中でも扱いやすい。V8モデルほどの強烈な加速ではないが、普通に街中を流すくらいであれば、1速発進のATと相まって不満を感じる場面はないはず。
 

外装は内装に比べて
リーズナブルに再生できる

 まずは、外装回りから見ていこう。細かなキズがあるのは価格を考慮しても仕方がない部分。バンパーにも目立つキズがあるが、中古パーツが豊富にあるS210なのでそれらを活用すれば問題ないだろう。経年劣化によって白く腐食してしまうモールも気にならないレベルだ。
 長野ナンバーということもあり、タイヤはスタッドレスを装着していた。購入時にはタイヤを履き替える必要はあるが、好みのタイヤをチョイスした上でスタッドレスまで付いてくると考えればそれほどネガティブな要素ではない。それに多走行車はタイヤの交換時期に来ているケースが多いので、ここは消耗品と割り切るべき。最近ではリーズナブルなタイヤもたくさん流通しているので工夫次第で費用は抑えられる。
 インテリアは前オーナーから預かった状態で、販売店でのクリーニングはしていない。それでもキレイな状態を保っていて、ウッドパネルにも目立つようなキズはなかった。レザーシートに擦れキズなどはなく、座る機会が多いドライバーズシートの座面も沈み込むような印象はない。適度にスプリングが効いた座り心地を維持しており、助手席や後席においても違和感はなかった。
 内外装をジロジロと眺めた後、普段の実用でありがちなシーンをシミュレーションしてみることにした。まずはエンジンをかけてみると、一発始動でアイドリングも安定している。ATをDレンジに入れた時のショックもない。このまま街中を走ってみたが、気になる異音や振動はなく、ATのシフトチェンジもスムーズ。排気量は3.2ℓ。軽快というわけではないが、ワゴンの重たさを感じることはなく低回転域から太いトルクで引っ張ってくれるような印象だ。V8のような強烈なトルクではないけれど、街中で乗る分には決して不満のない走りだった。ATが1速発進であることも影響しているだろう。
 撮影地に戻り、今度は駐車場に止めてみる。ステアリングを思いっきり切っても異音などはなく、足回りアームのボールジョイントやラック&ピニオン式となったギアボックスにも問題はなさそう。ホイールベースはセダンと同じ。全長は20ミリ延長されているが、見切りが良いから運転しやすい。
 駐車スペースにクルマを停めた状態でエアコンをチェックしてみたが問題なし。パワーウインドーも正常に作動していた。中古車の場合、フロントよりも開ける機会が少ないリア側をチェックすることが重要となるので覚えておこう。便利な装備であるテールゲートのクロージングサポートも正常。よくバタンと勢いよく閉めてしまう人がいるが、それはトラブルの原因になる。テールゲートを軽く落とし込むだけでロックされるので、正しく操作することがトラブル予防に繋がる。しばらく走った後に水温をチェックしてみると、気温30℃の取材当日でも90℃前後で安定していた。冷却系に不具合があれば水温にも影響するはずだから、現状においては問題ないと言えるだろう。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )

 

サンプルカーの現状を見る!

取材車のタイヤはスタッドレス。サマータイヤに交換する必要はあるが、オマケ付きと考えたいところ。
バンパーにキズがあったが、車両価格を考慮すれば妥協すべきポイントか。中古パーツを使えば安く直せる。
シルバーのモールは劣化が目立ちやすいが、取材車は塗装されている。ケミカルで落とせばよりキレイになる。
S210では定番のBピラー部分の劣化。気になるほどの劣化ではないが、ここをカバーするシートもある。

車高を一定に保つ油圧式レベライザー

S210のリアサスペンションには油圧式のセルフレベライザーが搭載されている。ショックアブソーバー内部のオイル圧を、ガス圧を使ったアキュームレータとポンプで発生した油圧によって調整し、加重が変化しても車高を一定に保つというものだ。現在ではエアサスペンションが普及したためこのような特別な仕掛けは不要になっているが、旧世代のワゴンモデルやVIPサルーンなどでは標準搭載されているクルマが多かった。
 
 

普段の実用でありがちなシーンから
コンディションを確認してみる!

Scene 01 街中の走りはどんな印象?

実際にありがちなシーンとして、まず街中を軽く流してみた。ラック&ピニオン式のギアボックスとなるステアリングはシャープな印象で運転しやすい。パワーも十分でストレスなく走ることができた。
 

Scene 02 オートマチックのシフトショックや変速タイミングは?

中古車購入においてATのコンディションは重要な要素。PレンジからDレンジに入れた時、またはその逆といった操作でのショックはなく、試乗中の変速タイミングにも違和感はなかった。
 

Scene 03 ステアリングを切った時に異音はない?

買い物などで駐車場に入れるのはありがちなシーンの一つ。足回りのボールジョイントやギアボックスが劣化していると異音が出やすいが、ステアリングを切っても異常はなかった。
 

Scene 04 エアコンは壊れてない?

壊れると高くつくのがエアコン。取材車は問題なく作動しているからこの夏も乗り切れるだろう。
 

Scene 05 ウインドーは正常に動く?

パワーウインドーはフロントだけでなく、開ける機会が少ないリアもチェックすることが大事。
 

Scene 06 クロージング機構は使える?

テールゲートも問題なし。クロージング機構が備わっているので軽く落とし込めばロックされる。
 

Scene 07 水温はどんな状況?

しばらく走ってから水温をチェックしてみたが、90℃前後をキープ。冷却系も問題ないだろう。
 

これから手を入れることで
信頼性はより高まっていく

 今回、多走行車の現状を知るべく、いろいろとチェックしてみたが、「思っていたよりも普通に使える」という結論に至った。外装については手を入れる箇所があるものの、車両価格が安いので中古パーツなどを使えば解決できる。内装パーツは高価だが、取材車のコンディションは良好なのでとくに手を入れる必要はない。それに外装は比較的リーズナブルに再生できるので、内装の状態が良かったことは好印象だったのだ。
 装備面においても不具合は見当たらなかったし、実際に走ってみても大きなトラブルを抱えている様子はなかった。このクルマを販売しているアイディングでは、同社が扱うすべての中古車に整備を施した上で販売している。今回撮影したS210もこれから点検を行ない、必要な整備を行なった上で店頭に並べるそうだ。それで48万円というプライスは魅力的だと思う。
 ベースのままでも良いコンディションをキープしていたので、これから手を加えることによってより信頼性は高まる。メルセデスワゴンの中古車としては先代のS211タイプの後期型が人気だが、安くても150万円、低走行車は300万円オーバーとなっている。根強い人気を持つS124タイプも人気だが、年式的にみてもそれなりに手間がかかり強い思い入れがないと維持するのがツラくなってしまう。
 そう考えると、気軽に乗れるメルセデスワゴンとして、S210というチョイスは十分にアリだと思う。エンジンの信頼性は高く、メンテナンスポイントも定番化しているから維持も難しくない。そもそも大きなトラブルが少ないクルマなので、コンディションの良い個体に巡り会えれば長く楽しむことも可能だ。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )]

 

取材協力 : I DING アイディング

W124世代を中心にメルセデス・ベンツの販売と整備を行なっている専門ショップ。在庫車はすべて整備してから引き渡すなど、コンディションにこだわっているのが魅力。熟練のメカニックも在籍している。
 
●住所: 神奈川県横浜市都筑区早渕2-1-38
●☎: 045-590-0707
●URL: http://www.i-ding.com/
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