『BFGoodrich』は四駆乗りにとって憧れのブランドだ。筆者は1980年代の後半にジムニーでオフロード走行の楽しさを知り、90年代にジープを乗り継いできた経験からもそう言えるだろう。そしてその究極はマッドテレーンT/A KM3。最もワイルドなトレッドパターンと厳選サイズ設定による存在感には男として憧れを抱かざるを得ない。その姿には、行く道を問わない自由な冒険旅行をイメージする。もちろん多くのユーザーから支持されるオールテレーンT/A KO2もブランドを語る上で忘れてはいけない存在だ。
2022年、そんなBFグッドリッチに新たな仲間が加わった。マッドテレーン、オールテレーンに続く第3のタイヤ「トレールテレーンT/A」だ。今回はそのパフォーマンスを確かめるべく、BFグッドリッチの現行3つのタイヤすべてを乗り比べて試すこととなった。クルマはランドクルーザープラド。それをオンロード、モーグル、ヒルクライム、ダート、ガレ場というシーンで走らせてみた。
新作トレールテレーンで注目なのが、まずその見た目。BFグッドリッチの血統を受け継いだゴツメのトレッドパターンを持ち、さらにサイドウォールにまでブロックが迫っているのがいい。アウトラインホワイトレターも映える。
迫力があるにもかかわらず、オンロード性能に長けている。そうした意味においては〝オフロードタイヤ〟の頂点に君臨してきたBFグッドリッチにとって、新たなジャンルへの挑戦とも言える。
実際、トレールテレーンで最初にオンロードを走った時は「このトレッドパターンでこの乗り心地?」という具合に快適そのものだった。表面の整ったアスファルトをオンロード専用タイヤのようにスーッと走れる。また振動や騒音もほとんど感じない。加えて、舗装状態の悪い路面でも乗り味は良好だった。凸凹を肉厚のコンパウンドでいなしてフラットに近い状態で走らせてくれるし、これにはイマドキのヨーロピアンSUVのような感覚すらあった。
◆Trail-Terrain T/A
カスタムデザイン
アドバンスド・ディフレクション・デザイン


ショルダーデザイン
セレイテッド・ショルダー・デザイン


トレッドパータン&サイプ
フル・ディプス3Dロッキングサイプ





OFF ROAD


ON ROAD



●同じBFGタイヤでもこれだけ違う!
今回のBFグッドリッチ・タイヤ3種乗り比べに際して、フィーリング・インプレッションと共に改めて現行ラインナップでのポジショニングをチェックした。まず、A/T KO2タイヤはすべてのシチュエーションにおいて優等生(性能比としてはオンロード:オフロード=6:4といったイメージ)。一方でM/T KM3タイヤは最高峰のオフロード性能を誇りながら街乗りにも十分対応する(オンロード:オフロード=2:8)。なお、最新のトレールテレーンは、まさにこのマッドテレーンの真逆のオンロード:オフロード=8:2に位置する(ロックのようなシリアスオフロードは考慮されていない)。愛車をどのように使うかにより、選ぶタイヤをしっかりと検討したい。
■All-Terrain T/A KO2 性能チャート


■Mud-Terrain T/A KM3 性能チャート


オフロードスペシャリストにふさわしく、大地へのグリップ感は最も強い。それは例えるなら土や泥に突き刺さって掴むが如し。サイドウォールもしっかり使えるため、あらゆる道なき道の制圧が可能。ロードノイズは感じるが、オンロードの乗り心地も十分だ。
■Trail-Terrain T/A 性能チャート


トレールテレーンは新世代のBFグッドリッチとして高いオンロード性能を誇っているが、それでいてオフロードではイメージ以上に走らせられる。ヒルクライムではトレッド面のパターンが、モーグルではサイドパターンが、岩や土を間違いなく蹴ってくれている。走行状況によってセンターデフをロックする必要はあるが、オフロードのグリップはブランド名を裏切ることはない。
こんな走りができるのは、タイヤの剛性が高いからだろう。最近はボディ剛性の高いオフロード車が増え、サスペンションを柔らかくセッティングして快適な乗り心地を生んでいるが、それも強い入力に対してタイヤの剛性がなくては役立たない。つまりこのタイヤでは、オンロードのコーナリングとオフロードでのグリップ力を両立させているから、相当そうした部分に長けているのだ。
これらが今回BFグッドリッチの3つのタイヤを走らせて感じたことだ。ではトレールテレーンT/Aはどんなユーザーにオススメかというと、BFグッドリッチがこれまでにアプローチしてきたターゲットとは少し違うかもしれない。言うなれば、オフロードに興味はあっても日常の中に積極的に取り入れてこなかった方々だろう。BFグッドリッチの名を知っていてもオフロードに走りに行かないため、そのパフォーマンスは必要ないと思っている人にこのタイヤはピッタリとハマる。いわゆるSUV用オンロードタイヤよりワイルドで、それと同等で快適にオンロードを走れてしまうのだからちょうど良い。また、オールテレーンT/A KO2と異なるアウトラインホワイトレターも新鮮に感じられる。
それに今回は、サイズも15インチ~22インチと幅広く設定されている。そうした面でも、オールテレーンを履きたくても叶わなかったという人にも扉を開いた。もしかしたらこのタイヤをきっかけに、オフロードを走ってみたい気持ちになるかもしれない。
トレールテレーンの登場でSUVオーナーの選択肢は広がった。そのうち、街中にトレールテレーンを履いたSUVをたくさん見かけることになるに違いない。

ちなみに本記事はYoutube連動企画であり、動画でも乗り心地やそれぞれの違いを解説しているので、この春タイヤ購入を検討の方は参考にされたし!
■BFGoodrich SUVタイヤの3種国内最速乗り比べ:https://youtu.be/N0gIFU8WM0A
- 日本ミシュランタイヤ株式会社
- https://www.bfgoodrichtires.co.jp