車検以上の点検と整備によって
2年間の信頼性が決まってくる
車検のシステムを
正しく理解しておこう
憧れのBMWを手に入れて気分も最高潮! なんて思っている時にやってくるのが車検。これはクルマに乗る上では欠かせないが、車検と整備の違いを正しく理解しているだろうか。「車検を取ったばかりなのにクルマが壊れた」と思った人は、車検と整備を勘違いしているかもしれない。
車検では、取得に実務経験も必要な国家資格である自動車検査官が、クルマをしっかりとチェックする。整備状態に問題があれば必ず不合格になる厳しい検査だ。しかしここで重要視されるのは、クルマの安全性に直結する部分。ブレーキやサスペンション、ライト類やスピードメーターなど、故障すると他のクルマを巻き込んだ事故に繋がるような箇所に集中している。自動車というのは、ネジ一本まで数えると3万点近い部品が組み合わさって出来ているため、そのすべてをわずかな時間で検査することなど不可能なのだ。
そこで安全に走るための機能を保つために重要、かつ基本的な部分を重点的に点検しましょう、というのが車検のシステム。だから逆に言えば、車検に落ちるクルマというのはよっぽどの問題を抱えているということになる。普通ならば、不合格になるとしてもヘッドライトの光軸が少しズレていたとか、そんな程度である。このように、車検システムというのは街を走る自動車の安全性を保つためのものであって、数多くある消耗部品の交換状況やメカニズムの信頼性までもチェックする機能は持っていないわけだ。だから「車検を受けたばかりなのに、クルマが故障して止まった」というのは普通に考えられること。故障の少ない国産車では、車検に受かるためのポイントだけを整備した程度でもその先の2年間を何事もなく過ごすことができる場合が多いが、消耗部品として定期的に交換しなくてはいけない部分が多いBMWなどのドイツ車の場合、それ以上の点検と整備をどこまでやっておくかで、2年間の信頼性が決まると言ってもいい。だからこそ、どこで誰に整備してもらうかが大切になるのだ。
では、具体的にどんな整備が必要になるのか。サンプルカーを使って検証していきたいと思う。取材に協力してもらったのは、埼玉県越谷市にあるBMW専門ショップ「つたえファクトリー」。ここでは24カ月点検のほか、オリジナルの点検メニューを用意している。BMWの整備経験が豊富な同社だけに、ウィークポイントを含めた点検メニューとなっているのが特徴だ。即交換が必要な部分、なるべく早く交換すべき部分、予防整備しておきたい部分の3つに分けて診断してくれるから、今後のメンテナンス計画を立てる上でとても参考になる。
車検の項目だけではなく
その後のメンテプランを提案
サンプルカーは06年式のBMW5301ツーリング(E61)。走行距離は10万㎞で、ちょうど車検の時期を迎えている。大内工場長がクルマの隅々までチェックしてみると、ヘッドカバーパッキンの劣化によるオイル漏れ修理とフロントのブレーキパッド交換が必要との診断だった。車検をクリアするだけならこれだけの整備でOKだが、今後やっておきたいメンテナンスとして挙げてくれたのが、点火プラグ、イグニッションコイル、エアフィルター、ATF交換、足回りのコントロールアームの交換とのこと。
次にやるべきメンテナンスだけではなく、どこから優先的に手を入れるべきかをアドバイスしてくれるのが、つたえファクトリーの車検整備なのである。
また、新車時からロングライフのエンジンオイルが使われている高年式モデルの場合でも、やはり走行5000㎞くらいを目安に交換すべきというのが現場のメカニックの声。ATFも無交換が指定になっているが、ATの構造を考えれば定期的な交換が必要とのこと。このあたりはプロによる診断が必要になるので相談してみるといい。
高度な電子制御システムが搭載されている先代モデルでは、コンピュータ診断も必須。目視での点検後には、ディーラーと同じ診断機を使ってクルマの状態を確認。エラーコードを見極めながら、すぐに交換が必要か、それともリセットして様子を見るかの診断もしてくれる。つたえファクトリーには元ディーラーメカニックが多数在籍しているから、技術だけではなくディーラーとのパイプも太い。常に最新の情報を把握していることも、同社の強みだと言えるだろう。
費用だけを考えれば、車検代行業者やガソリンスタンドでの車検といったチョイスもあるが、消耗品の交換を前提としているBMWの場合、信頼できるショップや工場に任せることがクルマのコンディションを左右する。大切な愛車だからこそ、車検時の正確な診断と確実な整備を施してやることが重要なのだ。