派手な装飾ではなく
中身にこだわった贅沢なクルマ
ドアを開けた瞬間から
驚きの別世界
1980~1990年代において、ベンツと言えば、やはりこのカタチだろう。これは間違いないと思う。バブル景気が加速するのと比例して、86年頃から新車価格を上回るプレミア的なプライスが付き始め、持っているだけで資産価値が増え続けるという異常な状況だったSクラス。とくに560SELはとりわけ人気が高くて、ディーラーではいつ納車されるか分からないというありさま。そんなクレイジーな時代背景とは無関係に、とにかく一級品の素材を使って丁寧に作られているのが2代目のSクラスなのだ。
今のメルセデスに初めて乗ったとしてもビックリするようなことはないが、とにかくこの時代のSクラスは他のクルマとはまるで別モノ。ドアを開けた瞬間から、その重さと建て付け感に驚き、シートに座れば感動し、アクセルを踏んでみれば感激する。グッとノーズを持ち上げて進む野性的な加速感から、防音室の中に居るような空気感まで、何もかもが特別で独特の世界だった。
当時はあんなに威圧的で近寄りがたい雰囲気を漂わせていたルックスなのに、不思議なもので今となっては、威厳と共に気品あるスタイルに見えてくる。もちろん、堂々としたグリルがそびえ立つフロント回りにも、これでもか! というロングホイールベースのサイドにも強い存在感はあるけれど、イヤミを感じるものではない。「懐かしさ」と言うほど枯れた雰囲気ではないが、いい感じにアクが抜けて、例えるなら「昔は悪かったんでしょ」という中年オヤジのような感じか。もちろんクルマとしての信頼性も、まだまだ実用車として十分に現役レベル。暑い日や雨の日はガレージに籠もりっ切り、というようなことはない。
これから2代目SクラスことW126を手に入れるなら、是非ベロアシートのクルマをおすすめしたい。ちょっとやそっとじゃスリ切れることのない、高い耐久性を持つレザーシートも実用的ではあるけれど、レザーと同等のプライスだったオプションのベロア生地は、分厚いウッドパネルに加えて一際の贅沢感を与えてくれる。昔の洋館にあるソファのような肌触りの良さは、ヨーロッパ車でないと絶対に味わえない世界。そもそもルーツを遡れば、レザーシートは馬車の御者が座る席に使用され、その車内はファブリック張りだった。ヨーロッパ車の文化においては、レザー=高級は間違いなのだ。
ブームとなったことで荒れたコンディションのクルマが多く、維持費が大変という印象が定着してしまったこのモデルも、さすがに現在まで生き残っているクルマは本当に大切にされてきたものばかり。今度こそ手に入れて、明るい未来を信じて日本中に勢いがあったあの時代を思い出してみるのも、バブルなんて知らないけど単純にカッコいいから乗るというのも、今ならありだと思う。
今となっては単にステイタスを求めてという世代のクルマではないW126だが、その中で「今ならありでしょ」と思うのが、今回取材した直6SOHCを積んだ300SE。新車当時は560SELや500SEの存在の影に隠れていた感じだったが、強烈な熱害との戦いでもあるV8エンジンと比べて、エンジンルームにスペースがある直6ユニットは、熱害の影響が緩やか。加えて点火プラグやタペットカバーパッキンなどの消耗部品の点数もV8に比べて少なくなるので維持費は抑えられる傾向にある。
取材車は90年式の300SEで、上品なパールグレーとなっている。エクステリアも年式を考えれば良いコンディションを保っていて、これまでのオーナーが大切に扱ってきたことがよくわかる。インテリアを見ると、レザーシート? と思いきや実はシートカバーが装着されていて、その中身は高級なベロアシートとなっている。当時のメルセデスらしい大ぶりなステアリングは味わい深く、ウッドパネルにも目立つようなキズや割れなどはない。ATは機械式の4速タイプで、ダイレクトなシフトフィールを堪能できる。
取材車の走行距離は7万kmであり、年式を考えれば少ない部類に入る。機械は動かしていないと調子が悪くなるというが、取材車は程よく走ってきたクルマだといえるだろう。
このクルマを販売しているのが、神奈川県横浜市にあるアイディング。W124など角目世代のメルセデスを得意とする専門店である。同社では豊富な経験から、購入後に手を入れるべきポイントを熟知している。クルマを仕上げるにしてもレストアレベルなのか、安心して街乗りができるレベルなのか、など、乗り方と予算に応じて対応してくれるのが嬉しい。ぜひ相談してみよう。
維持は大変なの?
1990y Mercedes-Benz 300SE
300SEに搭載される直6SOHCはM103型と呼ばれている。クルマ全体の整備が必要なのは間違いないが、ここではオイル漏れと燃料系に注目する。
オイル漏れは
早めに対処すること
年式的に見て、多くのM103ユニットはオイル漏れを起こしている。タペットカバーやコの字シールはもはや定番のポイントで、長く乗っている人なら少なくても2回は交換しているだろう。オイル漏れを放置すると思わぬトラブルに繋がることはすでにご存知だと思うが、ではなぜそんなにも漏れてしまうのか。経年劣化は仕方ないとしても、ゴムパッキンを正しく交換できていないケースもあるのだ。例えばコの字シールを交換するとき最後にフロントカバーを押し込むようにしてセットするが、このときにゴムシールがずれてしまったり、きっちりと装着されていないケースがあるのだ。案の定漏れが再発して、液体パッキンでその場をしのぐという手荒な作業を目にしたこともある。人為的なミスによる漏れの再発もあるので、作業はこの時代のメルセデスをよく知る修理工場に依頼するようにしたい。
M103エンジンの燃料制御はKEェトロニック。このシステムで重要なのが燃料系パーツの状態。フューエルポンプ、フューエルアキュームレータ、プレッシャーレギュレータなどが正常に作動していないと、何を交換してもエンジンの調子はよくならない。また、燃料分配装置であるフューエルデスビのトラブルも増えてきている。これは分解整備ができないうえに非常に高価。海外にはリビルト品もあるようだが、それでもけっこうな価格なので失敗のリスクは避けたいもの。そのため現状では中古品を使って対処するケースが多いようだ。機械式の4速ATは一度はオーバーホールをしているかもしれないが、シフトショックや滑りを感じたら修理が必要だ。パワステポンプやステアリングギアボックスなどのオーバーホールも検討しておきたい時期に差しかかっている。
加えて、水回りパーツであるサーモスタット、ウォーターポンプ、ラジエターあたりもチェックしておきたいところ。さらに冷却ファンの状態なども見ておくと安心感は高まる。
いずれにしても、消耗品の交換は必須なので、W126をよく知る修理工場に任せるようにしたい。
アイディングの強みはココ!
専門店ならではのノウハウで
対応してくれる
販売も整備も
とことんこだわり抜く
アイディングで販売されているW124は、仕入れからしてとことんこだわっている。だから、走行2万㎞といった低走行の極上車だったり、ディーラーできっちりと整備されてきた高品質車を中心に販売しているのだ。W124など角目世代は流通台数が減ってきているが、それでも驚くような極上車が店頭に並んでいたりする。
同社では自社工場を完備しているので、購入後のメンテナンスも安心。メカニックはW124など角目世代のメルセデスを熟知したベテラン揃い。やはり専門店としてのノウハウが生かされているのだろう。
クルマの知識がないと心配と思う人もいるかもしれないが、同社のスタッフは皆気さくな人ばかり。クルマのことで困ったことがあったら相談してみよう。きっと解決策を提案してくれるはずだ。
●所在地:神奈川県横浜市都筑区 早渕2-1-38
●電話:045-590-0707
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