ボディはコンパクトながら
高いボディ剛性を持つW201
世界初となる
マルチリンクサスを装備
角目世代のメルセデスの中でもっともコンパクトなモデルである190シリーズ。Sクラス並みの作りを持つFRサルーンとして、今でも根強い人気を誇っている。
この190Eのトピックといえるのが、ダイムラー・ベンツ時代の大発明とも言えるマルチリンク式リアサスペンションを採用したこと。今や世界中の自動車メーカーが採用するほどスタンダードなもので、その元祖がW201なのだ。
当時、マルチリンクを完成させるまでに8種類の基本形と70種類にも及ぶバリエーションを検討し、その半数以上を実際に試作して走行テストを行なったという。現在では素材の違いなどはあるものの構造に大きな変更はないことから、W201に搭載されたマルチリンクサスがどれだけ優れていたかが分かる。さらに、今ほどコンピュータによる解析技術が発達していない頃に生み出されたところもダイムラー・ベンツの技術力の高さがうかがえる事実だ。
マルチリンクの構造は5本のリンクによって構成されており、路面から受けるあらゆる方向からの入力をうまく逃がし、抜群の走行安定性を実現。少々の走行ではヘタらない耐久性の高さも魅力のポイントだ。
当時のSクラスであるW126のセカンドカーというコンセプトで開発されたためサスペンション以外の作り込みも素晴らしく、ボディ剛性においてはW124を凌ぐほど。エンジンは4、直6のガソリンとディーゼルエンジンをラインナップし、燃料噴射装置はKEジェトロニック式を採用している。
小型車ながら手間とコストを惜しまずに作られたW201は、オーバークオリティ時代の名車を代表する一台であると言える。
そんな190シリーズの中でも、個性的な存在が2.5-16バルブ。角目世代のメルセデスは実用車としての理想を追求したクルマだが、16Vモデルはスポーツサルーン。AMGなど特殊なモデルを除けば、角目世代でも唯一無二の存在なのである。その背景にはドイツツーリングカーレースがあり、エボリューションⅠ&Ⅱといったホモロゲーションモデルも登場しているが、それは後のコーナーで解説することにして、ここでは市販車である2.5-16バルブを見ていきたい。
16バルブモデルは全身にエアロパーツを纏い、搭載される直4DOHCエンジンは名門チューナーのコスワース社が作ったヘッドを持つ。極めて高い精度で加工され、その官能的なフィールはマニアを虜にするほどだ。この16バルブの直4DOHCは、当初2.3ℓだったが、後に2.5ℓにパワーアップし、車名も2.3‐16バルブから2.5‐16バルブに変更されている。
5ナンバーサイズに収まるコンパクトなスポーツサルーンは、BMWのM3とこの16Vモデルくらいしかなく、今ではほとんど見かけなくなった。それだけに今、16バルブモデルに乗ることは貴重な経験になると思う。さらに前述した世界初のマルチリンクサスペンション、コスワースヘッド、専用のエアロパーツ、そしてメルセデスによる徹底的な作り込みが所有する満足感をさらに高めてくれる。
中古車の流通量を調べてみると以前よりも激減していて、全く探せないというわけではないが、良質な中古車は少なくなっている。そんな中で見つけた取材車は走行8.8万kmでボディカラーはブルーブラックとなる希少な存在だ。
エクステリアは、味わい深い往年のメルセデスらしさに溢れている。専用のエアロパーツを装着し、ノーマルの190とは違った特別感がある。取材時の天候が雨だったこともあり、ボディの状態などが伝わりにくいかもしれないが、目立つようなキズもなく良いコンディションを保っていた。
インテリアの特徴はサイドサポートが張り出したスポーツシートを装着しており、これは後席も同様。センターコンソールに油温計、ストップウォッチ、電圧計が備わる。これも標準モデルにはない独自の装備である。
共通する部分としてエアコンやパワステ、パワーウインドーなど基本的な快適装備は揃っているから、現代のアシとしても十分に通用する。
今回の取材車のような16バルブモデルは、これから先いつ出てくるか分からない。前述したように中古車の流通量が減ってきているから、購入を検討しているならぜひ実車を見に行ってほしい。
このクルマを販売しているのは、東京都江戸川区にあるトータルアクセス。角目世代のメルセデスを得意とし、自社工場を持つ専門店である。スタッフはこの時代のメルセデス・ベンツに詳しいので、購入や整備を検討しているなら一度問い合わせてみるといいだろう。
維持は大変なの?
1990y Mercedes-Benz 190E2.5-16
基本的なメンテナンスについてはノーマルモデルと変わらないが、コスワース社チューンのエンジンヘッドや独自の構造を持つ部分は注意したい。
コスワースヘッドは
シビアな設計
このクルマに搭載される16Vエンジンは、補機類や各消耗品の交換など基本的なメンテナンスは通常モデルと同じだが、コスワースヘッドの良さを維持するためには10万㎞に一回のオーバーホールが必要になる。
ヘッドを開けてをみると、コスワースヘッドの加工精度が非常に高いのがわかる。エンジンに詳しいメカニックを唸らせるほど、よくできたヘッドなのである。それだけにヘッドに関しては通常モデルよりもシビアであり、定期的なオーバーホールが必要になるわけだ。エンジンヘッドの面研や各部の調整など、相応の技術を持った修理工場でしっかりと整備してもらう必要がある。一度整備しておけば当分は問題ないので、購入時には整備実績の有無を確認するようにしたい。エンジンに大きな価値を感じる人も多いので、きっちりと整備しておくと安心して乗り続けられるだろう。
また、カムシャフト部分には油圧式のレベライザーポンプが備わるののも特徴的な部分。だが、オイル漏れや異音などのトラブルが起きやすい箇所でもある。その場合、これを取り外し、通常のビルシュタインなどのショックを装着することも可能。こうしたモディファイも、古めのメルセデスを維持していく上では有効な手段だといえる。
こうした機関部のメンテナンスについては部品も供給されているのでさほど心配はないのだが、外装パーツには注意。とくに専用のエアロパーツは入手困難であり、見つかったとしても時間がかかる。中古車の流通量が少ないクルマなので中古パーツも探しにくい状況にある。それゆえ、エアロなど破損してしまわないよう、気をつけよう。
近年においては、純正品以外のパーツも多く流通しているし、時間がかかっても海外から部品を取り寄せることも可能。まだまだクラシックと呼ぶには早いクルマだが、その特別感の佇まい、希少性の高さなど、所有するだけの価値はあると思う。良いコンディションを保ち続けるためにも定期的にメンテナンスを実施しながら動体保存してほしいと思う。
トータルアクセスの強みはココ!
長年の経験で培ってきた
目利きと乗り方提案
東京都江戸川区にあるメルセデス専門店「トータルアクセス」は、長年、角目世代のメルセデスを扱ってきた。その経験が販売車両や整備に現れている。
角目世代の困り事を
解決してくれる専門店
また、代表自身も大のメルセデスフリークであり、角目世代を多く乗り継いできている。その経験から導き出した、角目世代の乗り方提案はとても参考になる。部品の選び方、メンテナンスのタイミング、アフターパーツのチョイスなど、角目世代のことで困ったことがあったら一度相談してみるといいだろう。
●TEL:03-5605-1333
●URL:http://www.totalaccess.co.jp/