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W124

2022.01.17

中古車一期一会 ~気になるクルマに会いに行く!~

 W124シリーズの中でもトップに君臨する500Eの人気は凄まじい。常に良い個体を求めるフリークが多く、年式にこだわって探している人も少なくない。そんな中で人気のポルシェライン92年式が売りに出たので、ここで紹介していこう。

メルセデスフリークを熱狂させるポルシェラインの500E

 ドイツのアウトバーンは、アドルフ・ヒットラーが残した唯一の国家遺産と言われ、速度無制限の高速道路は自動車の技術開発と安全性向上のために大きな役割を果たしている。そしてそのアウトバーンから多くの個性的な名車たちが生まれてきたことも事実だ。
 日本がバブルに沸いた1990年頃は、第2次スーパーカーブームと言われ、ポルシェやメルセデス・ベンツ、BMWなどの各メーカーは競って高性能スポーツカーを開発し個性的なクルマが人気を集めていた。当時の開発目標として、見た目のカッコ良さは重要だったが、優れた運動性能と安全性の確立に加え車体のコントロール性能は最も重要視された部分。だが、スポーツカーといえばトレッド幅とホイールベースの比率から2ドアを基本とせざるを得ない。その宿命として乗車定員が犠牲となり、さらに長いドアは乗り降りに不便とされていた。
 この問題を解消するため高性能で実用的なスーパー・スポーツ・セダンの開発を急いでいたメルセデス・ベンツは、その開発とチューニングをポルシェに委託した。1990年M119エンジンを搭載したW124・500Eの誕生である。
 当時経営難に直面していたポルシェの生産ラインを利用して生まれた、新しい時代のスポーツセダンである500Eは、世界中の話題となり「ポルシェライン」の愛称で親しまれた。資本提携のない事業提携は極めて珍しく、一説によれば、ポルシェとメルセデス・ベンツが縁故関係にあったことが遠因とも言われている。
 500Eは、販売価格も別格であった。それまでW124のナローモデルが700万円前後であったのに対し、500Eは実に倍以上の1500万円を超える販売価格となってしまったのだ。コストを度外視して誕生した500Eポルシェラインは、1年後にメルセデス・ベンツの生産ラインへと戻されることになる。それにより吸気系がダブルインテークホールからシングルホールへ。カムのガイドもメタルから樹脂製へと変更された。プーリーやベルトも細くなり、見えないところで徐々にコストダウンが実行されていた。
 最高出力は、メルセデスラインが325psであるのに対し、ポルシェラインは330psと5馬力の差でしかない。しかし、その走りは両車を乗り比べた者でしか分からないほどわずかではあるが、体感的に全く別物であると感じてしまう。わずか5psの差がまるで路面に爪を立てて走る猛獣のように、荒削りで乱暴なイメージさえ与えてくれるから面白い。この官能的なポルシェの味付けが堪らないのだ。
 500Eは本革シートが標準装備と誤解している人がいるかもしれないが、実はシート中央部分にチェックのモケットをあしらったコンビ革シートが標準装備である。多くのオーナーがオプションであった本革シートを発注したため、現在中古車として流通しているほとんどの500Eが本革となっているのは、そのためである。
 今回の取材車両は、メンテナンスが万全で、整備もよく行き届いている。さらにアイディングで車検を継続し、エンジンのチェーンテンショナーも交換したばかりとのこと。500E人気は冷めるどころか、近年では再燃しているようにも思える。良い個体が減っているので、上質な車両は即決するべきだと、私は思う。

U-CAR DATA

1992y Mercedes-Benz 500E (W124)

●検5年11月●走行11.7万km●ブルーブラック●内装黒本革●サンルーフ
●ナカミチストレオ&ウーハー●記録簿、整備データあり●修復歴なし●値段 575万円

W124としては王道ともいえるブルーブラックのボディカラーにオレンジのランプが映える。塗装のコンディションも良い。
足回りはフロントがストラット、リアが伝統のマルチリンクとなる。抜群の走行安定性を発揮する。
シートは本革タイプで、高級感のある室内空間となっている。後席が2座になっているのも特別なクルマである証。長距離走行でも疲れにくい絶品のシート。
ウッドパネルはキズや経年劣化により変色してしまうケースがあるが、このクルマはキレイな状態をキープしている。キズが付きやすいセンターコンソールの小物入れ部分にも目立つようなキズはなく、前オーナーが大切に扱ってきたのがよく分かるコンディションだ。
走行距離は11万kmを超えているが、年式を考えれば多走行というわけではない。走行距離よりもコンディションを重視して選ぶようにしたい。
定期的な点検と消耗品の交換を怠らないことが、この時代のメルセデスを快適に維持するコツ。困ったことがあってもW124専門店であるアイディングがサポートしてくれるから心強い。
 
●取材協力:アイディング
●所在地:神奈川県横浜市都筑区早渕2-1-38
●TEL:045-590-0707
●URL:http://www.i-ding.com/
●定休日:毎週月曜日