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【German Neo Classics / vol.02】1974y BMW 2002 turbo(E10T/E20)わずか1672台しか存在しないレアモデル

クラシックBMWを語る上で欠かせない存在と言えるBMW2002。そのシリーズの中で最高峰に君臨し、昨今では最も手に入れにくい絶滅危惧種としてマニアの間で噂されるのが2002turboだ。新車販売から40年を経て色褪せるどころか、より一層魅力を増し続ける独自の存在価値を徹底解剖する。

 

“駆け抜ける歓び” の原点

BMW 2002 turbo

(E10T/E20)1974y 
エクステリアは基本的にフルオリジナルを忠実に守りつつ、下回りを中心に駆動系をはじめとする機関系をフルレストア。マーレーの6J×13インチアルミホイールは当時用意されていたオプションだ。
 

量産車初のターボーチャージャー搭載

“マルニターボ”

 量産車として初となるターボチャージャーを搭載し、1973年にデビューを飾ったマルニターボ。2002の持つ無駄を削ぎ落としたプレーンなフォルムを基調にフロントリップスポイラーが加わり、リベット止めのオーバーフェンダーやリアスポイラーが装備されたアグレッシブなスタイリングは一目見てturboと判別できる象徴である。
 しかしそのフォルムは日本国内のディーラーモデルと欧州モデルでは異なり、欧州モデルのオーバーフェンダーがビス留めであるのに対して、国内ディーラー物は板金作業に溶接、パテを使用してこのフォルムを成形しており、本国仕様よりも錆びが発生しやすい。そのため、シンプルオートでは本国仕様に戻すことを推奨している。
 このようにワイドフェンダー一つとってみても、当時のモータースポーツシーンにおいて斬新なフォルムモディファイだったこともあってエクステリアにばかり脚光を浴びていたが、特筆すべきはそこではない。最も注目して欲しいのは心臓部に値するエンジンである。
 2002tiiと同じく2ℓ水冷直4SOHC機械式燃料噴射仕様に、KKK製ターボチャージャーを組み合わせることでで、最高出力、最大トルクでベースとなる2002tiiに対して30%を上回るパフォーマンスアップを実現。その動力性能は当時のスカイラインGT-Rをも唸らすもので、当時の2ℓクラスハイパフォーマンスカーの最高峰モデルと呼ぶに相応しい存在だった。
 しかし、1973年に発生したオイルショックの影響を大きく受けて、わずか2年間で生産された1672台を世に送り出したのを最後に市場から姿を消してしまった。その影響もあって、昨今では国内のみならず世界的にも希少価値が高く、価格は高騰し続けており、特に程度の良い個体は高値で取引されているようだ。
 そのようなマーケット事情にもかかわらず、マルニターボを複数台ストックし、フルレストアを施して新車時と何ら遜色のないレベルにまでコンディションを復元させるスペシャリストが、今回撮影車両を提供してくれたシンプルオートだ。
 取材車はオリジナルフォルムを忠実に守りつつもパワーステアリングやR134aクーラーの追加、点火システムのアップグレードを施し、USB・AUX対応のオーディオ換装など昨今のカーライフシーンを考慮した快適仕様となる。もちろん「快適=贅を尽くす」ではなく、マルニターボ特有の乗り味や良い意味での癖は生かしてあることもポイント。そこからは現代のクルマでは味わえない独特な躍動感、鼓動感がダイレクトに伝わってくる。
 “駆け抜ける歓び”というキャッチフレーズが印象的なBMWではあるが、量産車初にしてBMWターボチャージャー搭載車の元祖が持ち合わせるポテンシャルの高さやパフォーマンスは格別。軽量なボディとアナログならではのクルマを操る楽しさは、駆け抜ける歓びの原点を存分に味わうことができる。
オイルクーラーが標準で装備されるM31ユニットにKKK製ターボチャージャーをドッキングしたエンジンは170HP/5800rpm、24.5kg-m/4000rpmのパフォーマンスを発揮する。ボディ剛性を強化するタワーバーはノンオリジナルだ。
ダッシュボード中央に時計とブースト計を追加したメーターベゼルが収まるコックピット。レーダー探知機やETCなどの装備も極力存在感を掻き消してさりげなく取り入れ、ヘッドユニットは現代の音源事情に合わせてAUX、USB対応式に換装。さらに純正のRECARO製のセミバケットシートが採用されており、パワステやクーラーの追加もあって長時間のドライブも快適そのもの

創業から30年間一切ぶれないスタンスを貫く

シンプルオートのフルレストアに密着

入手困難な部品の手配からクラシックBMWに秀でたレストア技術まで、全てを兼ね備えてこそ専門店の証。シンプルオートの最大の魅力はそのスタンスを長きに渡って貫き通していることだ。
 

高い技術と知識に裏付けされた

妥協なきレストア

 BMW2002を中心に200CS、セダンなど、様々なクラシックBMWのスペシャリストである大阪のシンプルオート。創業から30年間と長きに渡ってクラシックBMW一筋を貫いている。昨今のヒストリックカー事情を見てみると、その時代に応じて様々な車種を扱うショップが多い中で、シンプルオートは流行の風に左右されることなく一貫してクラシックBMWのみを扱っている。
 しかし、ただ単純に専門店として、長年店舗を切り盛りしている訳ではない。専門店としての名に恥じないよう、豊富な経験と知識はもちろんのこと、古くなればなるほど入手困難になる純正パーツに至るまで、万全のサポート体制を整えていることは基本中の基本。きっちりとレストアされていないクルマを所有した一部のオーナーによって、「旧車は壊れる」「トラブルが多くて維持するのが大変」と騒ぎ立てられるのが辛い部分であり、一番の脅威であるそうだ。
 そんな印象を吹き飛ばすかの如く、どこを見ても非の付けようのないクオリティでユーザーを満足させるのがシンプルオート。極上コンディションのクラシックBMWを提供し続けることが、シンプルオートの使命であり、同社が自信を持ってオススメするフルレストア車なのである。
 とは言っても、100人いれば100通りの乗り方やこだわりがある。同じ2002ターボでもフルオリジナルを求める人から快適仕様を求める人、時にはボディや内装のヤレはそのままで良いから機関だけはしっかり仕上げて欲しい! と言った具合に、そのニーズは多種多様。じつはそこにこそ、シンプルオートの強みがあるのだ。
 同社の物件情報を一度でも見たことのある読者ならご存知の通り、車両価格は全て「応談」となっている。これは、ニーズに応じて必要な手を加えていくからで、一概に「ポッキリ○○○万円です」とは答えられないのが本音なのだ。例えば、パワーステアリングやR134aクーラー換装などの快適装備の有無、インテリアの総張り替えなどといった付加価値をどこまでやっていくかは絶対数の少ないクラシックBMWを販売する上で必須項目。そこを考えもせずに価格だけ問い合わせて安い方を選んでしまっては、結局のところ“安物買いの銭失い”となってしまうのがオチ。要は良い物にはそれなりのレストアが施されているということだ。
 ここで紹介しているレストア中のマルニターボを見ても分かるように、足回りパーツのフルリフレッシュやミッション、プロペラシャフト、エンジンルームまで、とても50年近く前のクルマとは思えないコンディションに復元されているのがその証拠。ちなみにボディは、リフトで上げなければ全く見えない腹下部分に至るまで徹底したレストアを施している。ここまでこだわってこそフルレストアを語れるのだ。
 年々良い個体が減っている中で、まだまだ生かせる個体はシンプルオートと言う名の名医によって元気を取り戻す。現役を諦めかけたクラシックBMW達にとってみれば、その存在は最後の駆け込み寺にして“楽園パラダイス”と言っても過言ではないだろう。

趣味車と割り切ってオリジナルにこだわれば重ステも悪くないが、普段乗りで使うユーザーにとっては大きな負担。電動パワーステアリングを搭載すれば軽快なステアリングさばきが可能になる。
R134aクーラーの換装や、昨今の音源事情に応じたAUX、USB対応ヘッドユニットの換装、カーナビにETC、レーダー探知機などニーズに応じて快適装備を追加できる。またこれらインテリアパーツのみならず、普段乗りからストリート、サーキットまで用途に応じて点火ポイントの変更やインジェクション化など、機関系のアップグレードも得意分野。
ボディの色褪せや内装の劣化をリフレッシュするだけで、コンディションが良さそうに見えるが、程度の良さを語る上で本当に大事なのはボディと足回り。フレームやボディ底部が朽ち果てていては本末転倒なのだ。取材車はビルシュタインショックやコイルの新調、各種ブッシュ類リフレッシュに始まり、下回りの処理、機関に至るまで徹底的に整備されている。
一階は商談ルームと作業スペース。2階には豊富なパーツストック。3階にはレストア作業を待つベース車輛をストック。こことは別の場所に販売車輛が室内保管されており、現車確認の際は事前に問い合わせをしておこう。
シンプルオート
●所在地 : 大阪府寝屋川市宝町29-8
●TEL : 072-839-6778
●URL :  http://simpleauto.jp