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【 GERMAN SPECIAL CARS!! vol.01 至福の時間を特別なクルマで。/ 夢のはじまり。Mercedes-Benz 300SL 】

スペシャルなエクステリアとスペックを持ちながら、常識的な手入れさえしてやればいつでも持てる能力を発揮してくれる高性能車。トータルバランスに優れた足回りや世界一といってもいいハンドリング性能と高性能エンジンを堪能できる。そんなジャーマン・スペシャルカーをたっぷりと紹介していこう。

 

至福の時間を特別なクルマで。

 スペシャルカーというとスペックが他のクルマを圧倒していたり、デザインもレースカーのような出で立ちのクルマもあって眺めるだけでも刺激的。スペックだけを見れば現代のクルマに追いつけない旧世代モデルでも、そのヒストリーを辿れば当時の凄さを理解することができ、それが新しい発見になり魅力にもなる。そして、そんなスペシャルカーを自分で所有する満足感というのは、まさに格別だ。さらに言えば、そういった高性能モデルは、その他のベーシックモデルと比べて希少性が高く、クルマとしての価値が残りやすい。時代を遡るほどにそういった傾向が強くなってくるから、スペシャルカーはクルマ趣味の醍醐味をより強く感じられるモデルなのである。
 一般的に見ると、スペシャルカーやスーパーカーと呼ばれるクルマは、イタリアンスポーツカーのようなド派手で官能的なエンジンサウンドを持つクルマの方がイメージしやすい。若かりし頃、スーパーカー図鑑を眺めたり、博物館で開催されるスーパーカーショーで現物に出会い感動を覚えた記憶が残っている人も多いはずだ。街中で目にする「自動車」とは大きくかけ離れた美しく力強いフォルムに、強烈なインパクトを受けたものだった。当時としては驚異的なエンジンスペックは、数字を見るだけで様々なイメージを妄想させた。
 だが、そういった妄想の中のスーパーカーは現実とは少し違う。昔のスーパーカーの四連のキャブレターは調整に神業を必要とし、完調なエンジンなど皆無に等しい。V型ユニットの加工精度は極めて低く、満足に回る「当たり」のエンジンは10基に1基もあれば良いほうといった具合だった。妄想し、憧れた夢のスペックを引き出すこと自体、現実では難しかったのである。
 その頃に比べると現代のイタリアンスポーツカーは信頼性が向上し、性能もアップしているが、これを購入するのも維持するのも一般人にはそう簡単なことではない。
 一方、ドイツのスペシャルモデルは、量産車をベースにチューナーが手を加えたものや、エンジンをスワッピングしたものなど、一見地味な印象がある。スタイリングにしても、イタリア車の工芸品のような繊細な美しさとは少々雰囲気が異なる。比較するならば「普通」なのだ。
 だが、実用的で堅実なパッケージングで作られているドイツのスペシャルモデルは、常識的な手入れさえしてやればいつでも持てる能力を発揮してくれる。さらにトータルバランスに優れた足回りやハンドリング性能は世界一と言っても良いもの。破綻なく安心して高性能エンジンを堪能することができる。
 いつでも、毎日でも限界性能で楽しめる高性能車。本特集ではそんなジャーマン・スペシャルカーをたっぷりと紹介していこう。

古き良き時代を感じる伸びやかなスタイリングは、今の感覚で見ても非常に優雅なもの。クルマに対する夢を与えてくれた存在。インテリアはレザーでトリムされた豪華な室内にはメッキパーツが輝く。ルームミラーはこの時代らしく、ダッシュボードに装着。ミッションは4MTとなる。ガソリン自動車として世界初となる機械式の燃料噴射システムを搭載したこともトピック。これはボッシュ社との共同開発によって生まれたもの。エンジンは45度も傾斜して搭載されるためオイルはドライサンプ式。最高出力は215psだが、同じ排気量を持つキャブレター仕様のエンジンより、65psもパワフル。