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3シリーズ BMW M3

2022.02.09

【走りの本能を刺激するスペシャルカーの世界 Vol.07/BMW M3 (E92)】F1テクノロジーが投入されたM3初のV8ユニットを搭載

初代モデルから直列エンジンにこだわってきたM3だが、M3シリーズとしてはじめてV8ユニットを搭載したのがE92型。ボディを拡大しても最低限の重量増で抑えてくるのはBMWのすごいところだが、エンジンにおいても徹底的な軽量化とF1テクノロジーを投入することで魅力的なパワーユニットに仕上げている。

BMW M3 (E92)

フロント、サイド、リアのエアロパーツ、ドアミラーはMの専用品。足回りにはEDC(エレクトロニック・ダンパー・コントロール)を搭載。取材車のホイールは社外品となっている。
 

V10エンジン直結の
パワーユニットを搭載する

 M3は、1986年にデビューした初代モデルから20年以上にわたって、“伝統の”直列エンジンが採用されてきた。ところが、4世代目のE92型M3ではV型8気筒エンジンを搭載した。
 最高出力420ps/8300rpm、最大トルク40.8㎏‐m/3900rpmを発生する4ℓV型8気筒ユニットは、高回転型エンジンコンセプトを継承しており、8つのシリンダー毎にコントロールされるインディビジュアル・スロットル・バタフライ、MダブルVANOS(バリアブル・カムシャフト・コントロール)を装備。しかも、2000~8400rpmという広域なエンジン回転域において、その約85%以上の能力を使うことが可能だ。
 このS65B40A型ユニットは、90度のバンク角や、92.0㎜×75.2㎜のボア×ストローク、12.0対1という圧縮比は、E63/64型M6、E60/61型M5が搭載するあのV10ユニット、S85B50A型エンジンと同じ。つまり、E92型M3の高回転型V8DOHCエンジンは、5シリーズや7シリーズに搭載されていたN62型V型8気筒エンジンをベースにしたものではなく、F1テクノロジーを投入して開発されたV10エンジン直結のユニットだと言える。ちなみにエンジン重量は、気筒数が2つ増えているにもかかわらず、ひとつ前のE46型M3に搭載されていた直6エンジンよりも15㎏も軽い。
 0~100㎞/h加速はわずか4.8秒、最高速度は250㎞/h(リミッター作動)というパフォーマンスを誇る。
 ルーフはスチール製に対し5㎏の軽量となるカーボンファイバー製を標準装備とされ、軽量化と重心の低下が図られている。ちなみに車両重量は、先代M3から80㎏増の1630㎏に抑えられる。
 当初は、6速MTと6速セミATであるSMGⅡがラインナップしたが、2008年に新世代トランスミッションである「7速M DCT ドライブロジック」を設定した。クラッチペダルがなく、ステアリングホイールに装備されたパドルシフト、もしくはセンターコンソールのセレクターレバーでシフトアップ/ダウンを可能とするシステムだが、これはトランスミッション内に2つのギアセットとそれぞれにクラッチが1組ずつ用意されており、2つのクラッチを交互に作動させることにより、エンジンパワーの伝達を遮断することなくトルクを継続的に利用することを可能としたものだ。7速M DCT ドライブロジック搭載車の0~100㎞/h加速は4.6秒と、6速MTよりも0.2秒速い。
 Mの称号は、もともとはBMWのモータースポーツ部門が1972年に子会社として独立してBMWモータースポーツ社となり、その後1993年からBMW M社(BMW M GmbH)となったことに由来する。その哲学は「常に革新的な目標に向かって、新たなテクノロジーを開発し続ける」。このM3においても、走り慣れた一般道やサーキットであっても、最高のドライビングプレジャーをステアリングを握る者に味わわせてくれる。
エンジンは、F1テクノロジーが投入されたV10ユニットがベース。一つ前のE46に搭載された直6よりも気筒数が2つ多いV8にもかからず、エンジン自体は軽くなっている。
ステアリングやシフト、メーターなどにM専用品を装着したインテリア。カーボンパネルを各所に配したスポーティなインテリアとなっている。
新世代のトランスミッション「M-DCT」を搭載。これは7速タイプでパドルシフトでのダイレクトな変速が楽しめる。サポート性に優れたシートはMの専用品。
ルーフをカーボンファイバー製とするなど、クルマ全体として徹底的な軽量化が施されている。