TOP > 記事 > 【 ドイツ車世代別メンテ/中年世代 (新車から11年〜20年)/プロローグ 】

【 ドイツ車世代別メンテ/中年世代 (新車から11年〜20年)/プロローグ 】

クルマにとっての中年世代と言えるのが、新車登録から10年が過ぎた頃から。これまでの使われ方次第で様々な部分に故障が出始める時期だ。一方で、快調なクルマはトラブルフリーでめちゃめちゃ元気。コンディションの格差が大きくなるタイミングでもある。

 

様々なメンテナンスが必要になって
ユーザーの愛が試される淘汰の時期

消耗品ではない部分の
故障が多発するように

 設計上、必ず交換するようになっている部分は別にして、クルマの故障というのは偶発的なもの。同じ年式の同じモデルを同じように使っていたとしても、トラブルが起きる部分とタイミングは同じとは限らない。だから一様に「壊れ始める」と言うことはできないのだけれど、やはり故障が発生する確率がグンと高くなるのが新車から10年を超えた頃から。また「消耗品」についても、これまでより交換がはるかに大変な部分が加わってくる。いよいよ本格的な「手入れの時期」を迎えるわけだ。
 若年世代では、壊れた部分だけを交換する対処療法で十分に足りていたメンテナンスだが、中年世代に入るとあちこちに劣化が見られるようになるため、根本的な治療が大切になってくる。ダメになったところだけを交換しても、その隣や反対側も同様に劣化しているわけで、翌月、もしかしたら翌日には限界を迎えるかもしれない。これをその都度交換していたのでは、クルマはいつもガレージではなくて修理工場に入っているということになってしまう。
 例えばウォーターポンプから水漏れが発生して交換するのであれば、周囲のホース類はもちろん、ラジエターの使用年数も考慮して同時に交換するといった「セットメンテナンス」が、その後の信頼性を高めるために大切になる。もちろん一時的には費用が必要になるが、度々交換作業をすることを思えば、工賃の節約になると考えるべき。そう思って維持費を払えるだけの愛情を感じられないクルマなのであれば、思い切って手放してしまう方がいいタイミングとも言えるのが、この時期だろう。実際に、人気のないモデルが中古車市場から淘汰されてゆくのは、新車から10〜15年くらいの間である。
 この頃になると中古車の価格も100万円前後まで下がり、車両の価値よりも維持費の方が高くなるはず。見栄や経済性ではなく、それでも乗り続けたいと思えるほど好きかどうか。このハードルを乗り越えたクルマだけが、ネオ・クラシックの世界へと生き残ることができるというわけだ。

燃料ポンプのような部品は、壊れる前に予防メンテナンスとして交換しておくことを検討してもいい時期である。

電子部品のトラブルも多くなる頃。湿度の高い日本の気候も一因といわれているが、突発的なものなので十分に注意しておきたい。

 

足回りや排気系、エンジン本体など
これまで以外の部分に手入れが必要

 エンジン本体やATといったクルマの心臓部分、そして足回り関係や排気系など、これまでとは違った部分にも手を入れる必要がある。
 まずエンジンでは、深刻なオイル漏れが発生するケースが増えてくる。この原因は、エンジンのヘッドとシリンダーの間に挟まっているガスケットの劣化や、クランクシャフトの軸部分にあるオイルシールの劣化など。またバルブ部分に備わるオイルシールが硬化して、オイルが燃焼室内に入ってしまうオイル下がりも多くなってくる。ATも走行距離による違いこそあるが、そろそろ内部の磨材が磨り減って来るのでオーバーホールを検討したい時期。マフラーもパイプの曲がった部分やサイレンサーに穴が開いたり、全体的にサビが進行して補修が必要になってくる頃だ。車種によっては、触媒も割れたりして交換が必要になることもある。
 さらにショックアブソーバーの劣化による乗り心地の悪化やオイル漏れに始まり、足回りからの異音などブッシュやボールジョイントなどの交換が必要になるのもこの頃から。車体の重さを支えてきたハブベアリングにも負担が溜まっている頃で、これはあまり乗らないでいたクルマの方が劣化が早い傾向がある。
 カムシャフトの駆動にタイミングベルトを使用しているモデルでは、そろそろ交換しておくと安心。FFモデルの場合は、ドライブシャフトの等速ジョイント部分に使用されているゴムブーツが切れてしまうことが多くなる。どちらも消耗品ではあるものの、ドイツ車では10年までは交換するケースが少ないもの。交換作業が大変なため、費用的にもそれなりの出費となる。こういったゴム製の部品は、国産車よりも耐久性が低いと思っておこう。
 あれこれと高額な修理が必要になる時期なので、割安な部品の入手先や部分修理が可能なショップなど、情報集めをしておくことがとりわけ大切になるタイミングなのだ。

10年を超えたあたりから、オイル漏れの発生が多くなる。写真のようなオイルフィルターケースの他、ヘッドガスケットも要注意の部分。
ATの内部に使用されている消耗パーツ類。走行距離や使用環境による違いはあるが、早いものではそろそろオーバーホールの時期である。

10年落ちとなると、ショックアブソーバーはかなり劣化が進んでいる。乗り心地も明らかに変わってきているので、一新すれば違いを体感できる。

ベルト駆動のエンジンでは、タイミングベルトを交換する時期。ドイツ車の場合はさほど弱くはないものの、やはり10年は交換時期の目安。
 

中年世代のメンテナンスを
お得に済ませる Key Points

本当にダメな部分だけを
交換すれば経済的

いよいよ本格的な手入れが必要になるこの時期。維持費は欠かせないものと考えて、効率的にメンテを進めることが大切になる。1つ1つの単価を削って、大きく手を入れることが大切だ。

中年世代の三箇条
一、高価な部分はリペアを活用
二、消耗部品はセット交換が基本
三、小さくケチって大きく手入れ

行距離も10万キロに近くなり、国産車だったら「そろそろ寿命か?」なんて声も聞こえ出す10年落ち。基本的な部分の耐久性が高いドイツ車でも、さすがに部品単位ではダメになる箇所が増えてくる。これを壊れた部分だけ交換していると、毎月のように次から次へとトラブルが連発して、気分的にもイヤになってしまうはずだ。
 例えば左右に付いているものならば、片側がダメになったら反対側も交換するとか、イグニッションコイルが1つダメになったら全部換えてしまうとか、高い確率でトラブルの連鎖が予想される部分は、事前に手を打っておくことが大切になる。費用を気にしないのであれば、ディーラーに任せておけばこういった万全の手入れをしてくれるが、そうもいかない人も多いはず。
 そこで活用したいのが、ダメになった部分だけをリフレッシュするリペアのサービスである。スピードメーターユニットはディーラーなら丸ごと交換となる部分だが、メーター業者に出すと現物を修理できる場合もある。よく動かなくなるドアミラーは内部の配線を修理すれば復活することが多く、コンピュータユニットは内部のハンダを付け直したり、コンデンサーなどの消耗品を交換すると再使用できるケースがある。またシートの表皮、ドアや天井の内張りなど、内装に傷みが目立ち出すのもこの頃から。こういった内装部品は交換するとなると非常に高価で、さらに色の問題があるので国内に在庫されていることが少なく、入手に時間がかかるのも難点。このような部分も、内装の専門家ならキレイにリペアしてくれるのだ。限られた予算で中年世代のドイツ車を良い状態にキープするには、1つ1つの項目についてなるべく費用をかけない方法を探り、より多くの部分をメンテすることが大切なのである。