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2022.03.04

【直すか?買い替えるか?ドイツ車人生決断のヒント】Episode.06

 トラブルがきっかけで直して乗り続けるか、他のクルマに乗り替えか、という相談が多いのが修理工場。そこにはユーザーの様々な悩みや愛車に対する思いが交錯している。そんな中で、直す決断をしたユーザーのエピソードを紹介しよう。

購入時から気になっていたATトラブルが発生!

 メルセデス・ベンツCLSクラスが欲しくて、中古車販売店を回って探していました。でも、いろいろな情報を知るたびに、ATの故障が心配になってしまったのです。というのも、何かあったら高額になるというのが分かっていたから。買う前から心配してどうするんだ、とも思いましたが、トラブルが起きた時に対処できるどうかというのは私に重要なことだったんです。それでも欲しい気持ちは抑えられなかったのでクルマを絞り込んでいくと、ある修理工場で希望のボディカラー、グレードのCLSを発見。早速、実車を見に行きました。
 クルマのスペック、条件は自分の希望通りだったのですが、やはりATなどの大物の故障が心配でした。担当してくれた方にATのことを話すと、「当たり前のことを言ってすみません」と前置きした後で、新車ではないので100%大丈夫だとは言えません。どうしても心配なら手厚い保証が付くメーカーの認定中古車がいいと思いますよ、との返事。そして、このクルマのエンジンには7速のフィーリングが合いますよ、とも言っていました。私自身もそう思っていたこともあり、認定中古車を購入する予算もなかったので、この工場での購入を決意。工場ならメンテナンスの相談もしやすいとも思いました。
 それから1年ほどトラブルもなく乗れていたのですが、走行中に「ウィーン」という大きな異音が発生。すぐに購入した修理工場に連絡して点検してもらうと、ATの不具合であることが判明。フロントポンプという部分がダメで大きな異音を発生させる、とのことでした。メーカーからも対策パーツが出ているほど頻発しているトラブルだったのです。
 詳しい話を聞いてみると、トルクコンバータとの接続部分にフロントポンプがあり、この不良を放置しておくとポンプが焼きついてしまったり、最悪の場合トルクコンバータ内のディスクが剥離してしまうこともあるそうです。このような状態だと走行不能になることもあるとか。
 ATを降ろしての部品交換になるので費用もそれなりに掛かることと、まだ1年しか乗っていないということもあってどうするべきか本当に悩みましたが、直す決断をしました。ATのことは購入時に気にしていたこともあって、なぜか心構えができていたようにも思います。
 それと購入の相談をしている時に、メンテナンス費用は必ず必要になるので予算全部を車両代に当てるなら他のクルマの方がいいというアドバイスがあったのも、後になって思えば良かったのかもしれません。
 クルマを購入したばかりの時は、分かっていても自分のクルマが壊れるとは思えなかった。所有した満足感と楽しさの方が大きかったですから。でも、実際にトラブルが起きてしまって落ち込みましたが、今では修理をして良かったと思っています。

高年式のメルセデス・ベンツに採用されている電子制御式の7速AT。最近ではフロントポンプの不良は落ち着いてきたが、当時は対策品が出るほど頻発したトラブル。
整備記録や明細が残っていればATのメンテナンス状況を把握できるが、高年式モデルの場合、オーバーホールに至るケースは少ない。走行距離が多いクルマは注意したい。

“直す”という決断の決め手は?

「購入時に整備予算をストックしておいたことで修理に対応できた」

購入時は気分も盛り上がっているので、クルマを選ぶこと、買うことに気が向いてしまうが、中古車の場合整備予算をストックしておくのは必須。整備履歴が分からないクルマであれば、なおさら重要になってくる。