TOP > 記事 > 【激レア独車 04/ALPINA B7 Turbo 1981y Part.2】アルピナが自動車メーカーとして最初に手がけたマシン。隠れた細部の魅力をチェック!!

【激レア独車 04/ALPINA B7 Turbo 1981y Part.2】アルピナが自動車メーカーとして最初に手がけたマシン。隠れた細部の魅力をチェック!!

✔マーレー製のピストンを搭載
✔ピアブルグDL型インジェクション
✔絶妙なバランスのチューニング

乗り心地を犠牲にしない
アルピナらしいチューニング

 タイプライター製造工場の片隅でチューニングパーツの開発から始まり、一台一台を丁寧に手作業で作り上げる自動車メーカーへと成長していったアルピナ。その真骨頂はやはりエンジンにある。ここでは、B7ターボのエンジンがどんな仕様になっているのかを詳しく見ていこう。
 ベースとなっているエンジンは630CSなどに搭載された3ℓの直6SOHCで、これにKKK製ターボチャージャーが組み合わせられている。ターボ化に当たっては圧縮比を7.3に変更。さらにターボチャージャーの温度上昇を防ぐために、アルミ製の空冷式吸気インタークーラーを装着している。室内にはブーストコントローラーを備え、任意でブースト圧を変更することが可能。燃焼室は半球形に加工され、マーレー製の鍛造ピストンを採用。カムシャフトはアルピナ専用品となっている。燃料供給システムは、ピアブルグDL型機械式インジェクションで、吸気共鳴を利用して効率を高めたレゾナンス式のインテークマニホールドも搭載している。こうしたチューニングによって、最高出力300psを発揮するモンスターエンジンへと仕上げられたのである。
 現代の感覚で見れば、5シリーズとは言っても決して大きなボディではなく、足回りも古典的なフロント・ストラット、リア・セミトレーリングアームの組み合わせだ。それでいながら、当時の4ドアセダン最強と言われた300psのパワーを受けとめて、バランス良く仕上げられているのはアルピナの技術力の高さだと言えるだろう。今でいうアルピナシャシーキットなど、ショックアブソーバーやスプリングの絶妙なセッティングは、アルピナらしい乗り味を実現するために一役買っていることも忘れてはならない。
 当時のチューニングカーと言えば扱いにくい特性のエンジンばかりだったが、B7ターボは実用性を犠牲にすることなくパワーアップを実現し、当時としては世界最速250㎞/hという記録まで打ち立てた。こうしたチューニングの方向性は基本的には現在も変わってはいないものの、チューニングカーとしての味わいは薄くはなっているように感じる。アルピナが自動車メーカーとして注目を集めるきっかけとなったこのB7ターボは、チューニングパーツを製作したり、レースでのサポートといった初期のアルピナの魂が込められた一台だと言えるかもしれない。
 中古車としては非常にレアな存在なので売りに出ることはあまりなく、名車ゆえに現在のオーナーが手放さないケースも多いというB7ターボ。もし、購入を検討しているなら出物があったらすぐに問い合わせたほうがいいだろう。現在、日本に残っているB7ターボはそう多くないので、入手できるチャンスは限られているからだ。

機械式インジェクションは
オーバーホールできる

水回りや電気系はB7ターボのウィークポイントなので、プロによる定期的な点検とメンテナンスをしておくことが大切だ。
 
 B7ターボのメンテナンスで重要になってくるのがエンジン回りで、NAモデルに比べて専用品が多数使われており、たとえゴムホースであっても高くつくことがある。
 年式的に見て気になるのはエンジン内部のパーツが劣化している可能性が高いということ。オイル漏れがひどいクルマならヘッドを開けてオーバーホールを検討しておきたい。カムシャフトやクランクシャフトは専用品となっているので、オイル漏れにより油圧が低下して、メタル系のパーツにキズなどを付けてしまうと大きな出費に繋がる。ピアブルグDL型機械式インジェクションにも注意が必要だ。これに不具合が起きるとエンジン不調になり、最終的にはエンジンが始動できなくなってしまう。新品パーツが欠品となっているため、ドイツに送ってオーバーホールをする必要がある。費用もそれなりにかかるため、試乗の際にはアイドリングの状態などエンジンの調子をよく確認しておきたい。ターボ車なのでタービンの状態にも気を配る必要があり、これも30万円以上もする高価なパーツ。ただ、きっちりと整備されたクルマであればこうした部分には手が入っていることが多いので、購入の際は整備記録などを確認しておくといいだろう。
 電気系が弱く、燃料ポンプリレーやメインリレーはトラブルが発生しやすいポイント。エンジン不調の原因にも繋がる重要なポイントだ。これらは事前に予防整備ができる部分なので、エンジン本体やインジェクションの故障に比べれば対処しやすい。燃料系はポンプやフィルターなどを定期的に交換しておくと安心感が高まる。そのほかインテーク側のゴムホースに亀裂が入り、そこから外気を吸ってしまうことによるエンジン不調もよく発生するトラブルだ。水回りは基本だが、ラジエターも含めて、ウォーターポンプやサーモスタットなどまとめて交換することで効率的に整備しておきたい。これは工賃の節約にも繋がる。
 冒頭に書いたように、専用品が多いのがB7ターボの維持における不安要素。専用品を壊さないためにも、周辺の消耗品はきっちりと交換しておくことが大切。水温や油温の上昇はエンジン本体に大きなダメージを与えてしまうので注意しよう。

エンジンルームにも数々の専用品を装着

エンジンルームには数々の専用品が使われているが、写真奥に見えるブルーのパイプもアルピナ専用品なのだ。これはプラグコードを通すためだけのパイプなのだが、こんなところまで専用品を使うという、当時のアルピナのこだわりが見て取れる。エンジンの横を通っているパイプなので、やはり熱対策という意味もあるのだろう。ちなみに、ここも定期的な交換が必要で、コードと同時に換えることが多いようだ。

Detail Check

パーツや各部の作りに至るまで細かく見てみる!

専用パーツを使って組み上げた

最速のストレートシックス!

レゾナンス式インテークマニホールド

アルピナのロゴが入った黒いダクトがレゾナンス式インテークマニホールド。吸気共鳴を利用して吸気効率を高めるものである。

機械式インジェクションを搭載

インジェクションはピアブルグDL型。電子制御ではなく、機械式によって作動するB7ターボ独自の燃料供給システムを搭載している。

Restore & Maintenance

レストア&メンテナンスのポイント

高価な専用品の
トラブルに要注意!

同世代のアルピナであっても、NAモデルに比べてターボは専用品が多く使われている。とくにエンジン回りのトラブルには注意が必要で、不具合が起きると費用が高くつくケースが多い。

ハイウェイスターガレージのオリジナルパーツであるエアコンフィルターキット。これにより、サビなどがエアコンシステムに詰まってしまうのを防げる。
マフラーも専用品となっているが、年式的に見て劣化が進んでいるケースも少なくない。純正は高価なのでワンオフのステンレス製マフラーを作るのも手だ。