素性の良いボディを生かすエンジンの改良を実施
京都府福知山でプロショップを営む「株式会社くさやま」が手掛けた190Eは、走りを意識した2・6スポーツラインがベースになっている。デビューから30年を超えるクルマが増えつつあるW201の中で、今後の課題となるのがパーツ問題。入手が難しい高価な純正パーツに頼らず、継続的に走りを楽しみながら維持するアプローチとして作り上げたのが、この2台のW201である。
剛性の高いボディを用いつつ、搭載するエンジンにはパワフルな3・6ℓ直6DOHCおよびSOHCのそれぞれを電子制御化。軽量コンパクトなW201のボディを生かした走って楽しいマシンをコンセプトに仕上げたクルマになっている。
排気量は2台とも同じ3・6ℓとなっているが、ヘッドの違いでその差がはっきりと出た。ダイレクトイグニッション化したSOHCエンジンは、6気筒独特の回転がシルキーでジェントルフィールなエンジン音が存分に味わえるコンフォータブルで、トルクフルな仕様となっている。これに対し、DOHCのAMG仕様は4気筒の元気の良さを思わせるパワフルな特性で、アクセルを踏み込んでいくと、SOHCに比べてパワーの違いが感じ取れるエンジンとなっている。今回の2台はいずれもATモデルであったが、6MTへの換装も可能である。今後、株式会社くさやまとしては、機会を見て4気筒バージョンも手掛けていく予定である。では早速2台のフィーリングの違いについて見ていこう。
似て非なる2つのエンジン構造の違いが走りに直結
まずは、W202型C36AMG後期モデルに搭載されるM104型 3・6ℓエンジンに、電子制御式の5速ATの組み合わせ。ECUは、モトロニックから進化したME2・1制御に変わった純正コンピュータを流用。これに伴って、電子制御式5ATのコントロールユニットとともに、ABSからETSの4輪制御ユニットも移植となり、必然的にその配管もW201用に作り替えている。アクセルもワイヤー式からポジションセンサーでのスロットルコントロールユニットへと変更。駆動系はW201のプロペラシャフトにW202のフランジを加工して取り付け。メーター類もワイヤーレスに加工済みである。もちろんハーネス類もW202のものとなる。
一方、もう一つの190Eのエンジンは、オリジナルと同じM103ユニットでも、3ℓのヘッドにM104型のAMG3・6ℓの腰下を使用。これによりSOHC6気筒の3・6ℓとし、ディストロビューターは廃止、汎用品のイグナイターと燃料デリバリーを新設して、これまた汎用品カムポジションセンサーによるダイレクトイグニッションによる点火方式に変更している。
これに伴い、ECUはサブコンを使って制御。ミッションは機械式4ATのままにすることで、エンジンマネージメントのみの変更で済むことになる。どれも市販で手に入るパーツのみで電子制御化されているので、メンテナンス性にも優れた仕様となっている。
M103ユニットを電子制御化
ヘッドはSOHC6気筒のM103ユニットだが、腰下はM104型3.6ℓAMGユニットのものを使用している。点火系をダイレクトイグニッション方式とし新設したコンピュータで制御。トランスミッションは機械式のままなのでオリジナルを残しつつもメンテナンス性を高めた仕様と言える。
M104 3.6 AMGユニット&5ATに換装
機械式4速のままだとファイナルの違いで変速しない5ATは、W202のファイナルデフとリヤのドライブシャフト、リヤハブの位置まで全て変更。冷却系やエンジンマウントも含めて、緻密な計算と高い技術によって3.6ℓのAMGユニットを見事に機能させている。
両車ともにパワーアップ分のストッピングパワー補強として、R129純正の対向4ポットキャリパーと16インチ用ローターを移植。ブレーキチューンも万全だ。
コンパクトなボディに、3.6ℓ直6エンジンを搭載。燃料制御をECUでマネージメントすることで、さらなるパワーを得ている。軽量コンパクトなボディの作りの良さ、とりわけ足回りに関しては素性の良いレイアウトのまま、ほぼボルトオンに近い移植ができることがわかり、若干のフェンダー部の加工を要するくらいで済む効率の良さであった。
【取材協力】株式会社くさやま https://kusayama.co.jp