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愛車に優しい 取り扱い方法〜ヤングクラシックモデル編 Part-01〜

頑丈な鉄の塊に思える自動車だが、実はとても繊細でデリケートな機械。間違った扱い方1つでも、長年の蓄積によって故障の原因になることがある。そこでこのコーナーでは、ドイツ車をトラブルフリーで長く快調に走らせ続けるために気をつけておきたい、愛車に優しい取り扱い方を紹介しよう。

中古車の故障頻度は扱い方によっても違う

 「輸入車は壊れる」という情報は都市伝説的に広まっているが、はたして本当なのだろうか? 実際に長く乗っているユーザーに聞くと、確かによく壊れるという意見と、トラブルなんて一度も経験したことがないという意見に大きく分かれる。新車から2年程度までの高年式モデルの場合は、製造段階での組み立て精度によって初期トラブルが発生する率が違ってくるのだ。国産車ほど厳格な生産管理が行なわれている欧州メーカーはないだろう。実際のところ、確かに初期トラブルは少なくない。しかしこれは保証期間内に対処されるもので、言わば織り込み済み。

 では一般的に3年落ち以降となる中古車の場合はと言うと、ユーザーの取り扱い方とメンテナンス内容による部分が大きいのだ。専門知識のあるメカニックに定期的にチェックしてもらい、壊れる前に問題のある部分を手入れすれば故障の確率はグッと減る。そして同じくらい重要なのが、クルマのメカニズムを理解して、メカ部分をいたわる優しい取り扱いをしてやることなのだ。これは輸入車でも国産車でも同じことだが、国産車ほどタフではない部分が多々あるドイツ車の場合、非常に意味がある。またドイツ車は国産車よりも長く乗られる傾向が強いので、古くなってきた時に長年蓄積された負荷が原因で故障が発生するというケースもある。何はともあれ、壊さない乗り方は心掛け1つでできるのだ。

愛車に優しい取り扱い(その1)→ドアを閉める時は必ず窓を閉じた状態で

ドアの内部に収まっているパワーウインドーのレギュレータ。窓が開いている状態では、上写真のようにガラスはこの部分のみで支持されている。

弱点の窓落ちを防ぐ唯一の有効な手段はコレ!

ドイツ車のトラブルとして定番とも言えるのが、パワーウインドーの不良。中でもガラスそのものがドアの内部に落ち込んでしまう「窓落ち」と呼ばれるケースが多い。これはガラスをレギュレータに固定している樹脂製のスライドピースと呼ばれる部品が折れてしまうことが原因。

 ウイークポイントと言ってもいいほどトラブルが多いウインドーレギュレータに、大きな負荷をかけてしまうのが窓が開いた状態で勢い良くドアを閉める行為だ。クーペを除けばほとんどのドイツ車はサッシのあるドアを採用しているが、ウインドーが閉まっている時はスライドピースに加え3辺のゴムがガッチリと支持した状態となっている。ところが窓が半開の状態となると、ガラスに当たっているゴムは左右側の半分程度。これでは不安定だ。さらに全開となった時には、完全にドアの内部でサッシのゴムからは外れてしまう。このような状態の時にドアを勢いよく閉めると、不安定なガラスの重さによる大きな反動がレギュレータに加わることになる。次第にダメージを与えて行くのは確かだ。

 またドアを後ろ手で勢いよく閉めると、シートベルトのアンカーを挟み込んで思わぬキズを付けてしまうこともある。クルマから降りたらドアのノブを握って、30センチくらい手前から押し込むように閉めるのが正しいドアの閉め方だ。もちろん窓は閉めておくことをお忘れなく。

 

愛車に優しい取り扱い(その2)→信号待ちでPやNレンジにするのはやめる

信号待ちなどでATをすぐにNレンジにシフトするクセがある人は、ドイツ車に乗るならこれを直しておきたい。またシフト操作はゆっくりと確実に。

駆動力が伝わる時に最も大きな負荷がかかる

以前のAT車は停止状態で大きな振動が出るものが多かったためか、信号などで停車するとすぐにATのセレクターをNレンジやPレンジにシフトするクセのある人がいる。非常に丈夫な国産車のATはこの程度ですぐに壊れることはないが、ドイツ車にとってATは鬼門とも言えるポイントだ。

 実はトルクコンバータ式のATにとって、最も大きな負荷がかかる日常的な操作は、Dレンジに入って駆動力が伝わる時。「コン」という軽い衝撃を感じると思うが、アレなのである。もちろんAT本体にとってみれば、フルードの油温が異常に上昇してしまうという致命的なダメージも考えられるのだが、こちらは機械的な故障が原因となるもの。日常的な操作としては、DレンジやRレンジにシフトする回数を必要以上に増やさないというのが鉄則なのだ。5分程度までの停止ならば、シフトはDレンジのままで問題ない。

 また、車庫入れなどでバックさせる時についやってしまいがちなのが、車体がまだ前に進んでいる状態でRレンジにシフトしてしまう行為。これはATの内部で急激な逆回転が生じることで大きなダメージを与えてしまう。急いでいる時も、しっかりとブレーキを踏んで完全に停止させてから、Nレンジでひと呼吸おくイメージでゆっくりとRレンジにシフトするように心掛けたい。もちろんRからDレンジへのシフトも同様だ。

愛車に優しい取り扱い(その3)→ステアリングはクルマを動かしながら切る

パワステの油圧は左右に一杯に切った時のロック位置で最高となる。オイルが滲む原因となるので、なるべく目一杯までや据え切りは避けるべき。

パワステにかかる圧力はロック位置で最大になる

国産車はコンパクトカーを中心に電動パワステが主流となっているが、ドイツ車では車種を問わずに発生しているのがパワステの油圧ラインからのオイル漏れ。これも持病のようなもので、遅かれ早かれ滲んで来るのだが、やはり使い方でその進行を遅らせることは十分に可能だ。

 油圧式のパワステにはクルマに使用されている油圧の中でも最も高い、12〜16MPa(メガパスカル)という高圧が使用されている。これは気圧の100倍以上という圧力で、業務用の高圧洗浄機と同等のもの。ここでポイントとなるのが、ハンドルを限界まで回した時に油圧が最大となるということ。ロック位置まで回すと「キュー」という音が出ることが多いが、あの時に最も高い油圧がかかっている。つまりその状態をなるべく避ければ、オイルの漏れを予防できるわけだ。

 また昔のパワステが付いていないクルマを運転すれば簡単に分かるが、停止状態でのハンドルの据え切りは重くて大変。車重が1トンもないような小型車でも回せたものではない。ところが前へでも後ろへでも、少し動かしながらだと驚くほど楽に切ることができる。どんどん大きく重くなっている現代のクルマでは、パワステの高圧に助けられているからこそ据え切りも楽にできるが、これもなるべくなら避けた方がパワステに余計な仕事をさせることなく済むということなのだ。