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300E W124

2024.05.23

【メルセデス愛が止まらない!】1991y 300E (W124) / GERMAN CARS アーカイブ/2022年10月号より抜粋

クルマとしての基本性能を追求したひとつの形といえるのがメルセデスW124シリーズ。ここで紹介する前期型の300Eは走行5.6万kmで、記録簿はないが程度良好のディーラー車。ベテランユーザーだけではなく、これからW124に乗りたいという人にもお勧めだ。W124は1983年に登場した190Eと極めて近い構造とスタイリングに生まれ変わったミドルレンジのモデル。Eクラスと呼ばれるようになったのは94年のマイナーチェンジ以降だ。当初はSOHCの直列エンジンのみを搭載していたが、V8を積んだ500Eの登場を皮切りに、93年からは全エンジンをDOHC化、制御方法も大幅に進化している。最大の特長はマルチリンク式のリアサスペンションで、これによって深い乗り心地と確実なハンドリングを身に付けている。

斬新なアイデアと理にかなった作り込みが各所から感じられる

 1886年ベンツが世界で初めて自動車を発明して今年で136年である。その間、自動車は社会的にも技術的にも目まぐるしい進化を遂げている。特に今世紀に入ってからの自動車を取り巻く環境の変化は急速である。効率的で快適な装備が至れり尽くせりで便利。ブラックボックス化された機械にすべてを支配されても何の不満も違和感も抱くことはない。それどころかナビや自動運転の便利さに慣れてくると元の不便さには戻れなくなってしまう。運転支援技術の進化はこれからの社会において無くてはならないものであることも否めない。安全で快適な空間を安価に作り出す開発者の努力には敬服させられるものがある。
 だが、この技術的進化の陰で発明当初から基本的にその形を変えていないものがある。それがワイパーである。メルセデス・ベンツはそのワイパーに一度だけある変化を試みた。1985年W124モデルでデビューした1本式のモノワイパーの誕生である。ワイパーといえば、自動車の開発当初からゴム製の細長いブレードが左右を往復しガラスに付いた雨を取り除く。そしてなぜか2本のブレードがシンクロし同時に動くことが常識であり、無駄に重なり合う二つの軌道に違和感を唱える人は少ない。むしろ、それが当たり前という認識だった。だからこそ当時、合理的で斬新なアイデアで生まれたW124の1本ワイパーには違和感があったものの、とても衝撃的でもあった。コストを度外視した画期的なワイパーは経済的な理由で継承されることはなかったが、今改めてW124に散りばめられたシンプルで理にかなった無駄のない設計思想を知れば知るほど、W124の奥深さを感じさせてくれるから面白い。
 今回取材した300Eは、W124の中でも人気のあったポピュラーでオーソドックスなモデルである。エンジンはM103型6気筒SOHCで、総排気量2960㏄、最高出力185ps/5700rpm、最大トルク26.5㎏-m/4400rpmと、W124の堅牢なボディをコントロールするには十分なパワーである。15インチの鍛造ホイールは軽量で運動性能や操舵性が飛躍的に向上し、リアのマルチリンク式、フロントのストラット式で構成される足回りが確実に路面をとらえ、どんな轍も難なくいなしてくれる。しなやかでシットリとした走りは、まるで路面に吸い付くようなダイレクト感があり、“人車一体”を感じさせてくれる。この乗り心地の良さは奥深いもので、興味があるならぜひ試乗してほしい。取材車はお洒落な外装色ノーティカルブルーであり、目の肥えたW124フリークにもこだわりの強さをアピールできるはずだ。
 電子制御に支配された無機質で乾いた現代のクルマとは全く別世界の存在であるW124。程度の良い個体が減ってきている今、走行5万㎞ほどの前期型300Eに出会えるチャンスは限られている。

ヤングクラシックに乗る醍醐味が味わえる走行5.6万kmの300E

カラーを楽しめるのもクルマ趣味のひとつ。ノーティカルブルーの落ち着いた雰囲気はネオクラシック世代となったW124のキャラクターともマッチしている。ボディには目立つなようなキズはなく、キレイな状態を維持している。

シンプルでアナログな構造を持つ維持しやすいエンジン

M103型直6ユニットの燃料噴射装置はKEジェトロニック。半分アナログな構造なので信頼性は高いといえるが、関連する燃料系パーツのメンテナンスが今後の維持のポイントになる。そういった意味でもこの時代のW124に詳しいメカニックによる定期的な点検を受けておくことで、トラブルを未然に防ぐことに繋がっていく。
年式から見れば低走行と言っても過言ではないスペックを持つ取材車両。可動部分の劣化、負担は少ないので、消耗品の交換がメンテナンスの中心になる。

アルミホイールからバンパー、樹脂パーツまでキレイな状態を維持しており、とても30年以上前のクルマとは思えない。ステアリングにもしっかりとシボがあり、前オーナーが大切に扱ってきたことが想像できる。ボディにはくすみなどはなく、屋内保管だったかどうかは不明だが、モールの状態を見ても、大事に保管してきたことは確かだ。

シンプルでありながら、実用性を重視したインテリアには、エアコン、パワステ、パワーウインドーなど日常的な快適装備が揃っている。紺のファブリックシートは破れや色褪せもなく、座面のアンコにも弾力が感じられる。エアコンなどの快適装備に不具合はなく正常に作動。ベテランユーザーのみならず、初心者にもお勧めできる。

SHOP GUIDE / アイディング

W124専門店ならではキメ細やかなサービス

神奈川県横浜市にあるアイディングは、W124専門店として長い歴史を持つプロショップ。老舗ならではの目利きで仕入れたW124は、同社のベテランメカニックが仕上げた状態で販売する。車両価格を抑えてコツコツと整備しながら維持していくスタイルもあるが、まずは良い状態のW124を知ってほしいとのこと。困ったことがあったら相談に乗ってくれるキメ細やかなサービスで多くのファンから愛されている。

※全て GERMAN CARS 2022年10月号より抜粋。
相場や「現行型」「先代」などの表記は
全て2022年当時のもの