BFGoodrichはオフローダーに高く評価されているアメリカンタイヤメーカーである。国内で4WDブームが始まったのは、1980年代前半であるが、この時代、国産タイヤメーカーには国内向けオフロードタイヤは皆無で、トラック用タイヤを4WDに装着する時代であった。
アメリカで開催するスタジアムレースやバハ1000などデザートレースで優勝するチームは、BFGoodrichタイヤの装着が定番だった。リアルオフローダーの夢はBFGoodrichタイヤを装着することにあった。
SUVのドレスアップの第一歩はタイヤとホイールの変更だ。ファッション性のみならず、実用性という面でももっとも効果的なドレスアップといえる。人間界でも足もとは重要なポイントである。金融機関や経営者は取引先の信頼度を確かめる一つの手段として足もとを見る。靴が清潔であり、磨かれているか否かでその人物像を判断するという。
SUV用のBFGoodrichタイヤは、最もアグレッシブなマッドテレーンタイヤKM3とオールラウンダーであるオールテレーンタイヤKO2、そして、2022年2月にデビューしたオンロード重視のトレールテレーンTTだ。今回は、TTを含め、KM3、KO2のパフォーマンスをチェックする。テスト車両は、本格的なクロスカントリー4WD・ジムニー シエラとミニバンでありながら高いオフロード走破性を秘めるデリカD:5である。
◆3兄弟実力診断
3タイプともタイヤサイズは15インチから22インチまで揃える。最も豊富にサイズをラインナップしているのはKO2であり、78サイズもある。すべてのSUVに対応できる。KM3は62サイズ。TTは37サイズであるが、今後、増やしていく予定であると聞く。
TRAIL-TERRAIN T/A
優れたオンロードパフォーマンスとオフロードパフォーマンスの両立
舗装路における様々な路面環境下において、安全性と快適性を確保したSUV・4×4用タイヤ。その性能は砂利道やキャンプ場など、非舗装路においても安心性能を提供します。
All-Terrain T/A KO2
46年の歴史を持つオールテレーンの代名詞
Mud-Terrain T/A KM3
本格オフロードタイヤが生み出すスタイリッシュな機能美
■JIMNY SIERRA編
ジムニー シエラは数少なくなった本格的なクロスカントリー4WDであり、オーナーにはリアルオフローダーが多い。トライアルなどオフロード競技の世界で人気が高い車種だ。競技でハイパフォーマンスを期待するとなると文句なくKM3となるのだが…。オンロードパフォーマンス中心で3タイプをテストする。オンオフに関わらず、ブレーキングあるいはコーナリングはポイントではあるが、最近のユーザーが重要視するのは静粛性と乗り心地である。
ショートホイールベースのジムニー シエラは、タイヤの静粛性及び、乗り心地がダイレクトにドライバーに伝わってくる。とくに静粛性は、旧型よりは大幅に向上しているが、ボディ遮音性はそれほど高くはない。どんな結果になるのか?
まずは静粛性から。KM3はブロックパターン特有のゴーという音が響いてくる。これはノイズではない。サウンドとして捉えるべきだ。KM3の後にKO2をテストする。KO2の静粛性は、KM3との比較では数倍高いといえる。ゴーの濁点が消滅したとも表現できる。最後にTTを試走。静粛性はKO2を装着したデリカD:5と同等といえる。
ダートでのスラロームのパフォーマンスはどうだろうか。
TTはスムースさを感じる。滑らかにパイロンをすり抜け、グリップ力を失うことはない。KO2もスムースに回頭する。対してKM3は、ゴツゴツとしたフィーリングがステアリングに伝わってくるし、グリップ力が強すぎてパワーユニットがフォローしきれていない面もある。今回のようなフラットなダートでは、ジムニー シエラのパワーとTTやKO2のグリップ力がマッチしている。KM3はもっと荒れた路面のほうが実力を発揮できるようだ。
ブレーキングに関してはオンロードではTTが最も制動力が高く、KO2、KM3と続く。オフロードではオンロードと逆の順位となる。
卜部敏治超私的タイヤ相性考察
第一位 Mud-Terrain T/A KM3
第二位 All-Terrain T/A KO2
第三位 TRAIL-TERRAIN T/A
オンロードの使用が大半という人にはTTがベストチョイスではあるが第3位。あくまでも個人的な見解であるが、スタイリング的には、KO2やKM3との相性の良さを推してしまう。第2位はKO2だ。すべての路面で及第点を叩き出す。とくに渓流に踏み込んだり長距離ドライブをする人にはKO2を勧める。見た目ではKM3に劣らない迫力はある。第1位はKM3。マッドタイヤであることを強調する塊感があるトレッドブロックが、ジムニー シエラに力強さを与える。KM3にはオフロードエリアで遊びたいという気持ちにさせてくれるという隠れた魅力もある。
とくにKO2のショルダー部は、タフサイドウォールラバーで力強さを感じた。KM3がタイヤに刻む特徴的なV字型の深い切り込みが、素早くマッドを輩出しトラクションを維持していた。デザイン的にKO2やKM3よりも大人しいデザインのTTだが、ショルダー部V字型デザインがしっかり機能し、砂利道でのスラロームでもしっかりトラクションが得られている。
ジムニー シエラ専用の「F6 Boost for JIMNY SIERRA」。あえて16インチを設定。6.0Jという太めのリム、マイナス5というインセットで、ディープなリムやコンケイブを実現。
メッシュスポークデザイン、1ピース構造ながら、まるで別体パーツで構成されているかのように見えるビードロックリング、個性的なデュアルカラーリングなど、とくに美意識の高い人に人気。
ジムニー専用設計だからこそ実現できた67.8㎜のリム深度。さらに別体パーツを想わせるリムフランジ部のあしらいによって、抜群の奥行き感を5.5Jのリム幅に盛り込む。
■DELICA D:5編
最近のタイヤ特性で重視されているのは乗り心地と静粛性である。4WDユーザーの多くは、オフロード走破性で不可欠なグリップ力の重視度は低い傾向にある。
デリカD:5のユーザーの多くはファミリーである。キャンピングやウィンタースポーツを楽しみ、また、長距離を旅することも多い。
長距離ドライブで重視したいのは静粛性と乗り心地である。TTのオンロード静粛性はトップクラスといっても良い。特にKM3を試乗した後にTTをテストすると、オンロードの静粛性の高さに感心する。TTの試走後にKO2をテストするが、やはりここでもTTの静粛性の高さが感じ取れる。もちろんKO2が騒音並みのノイズではないことも指摘しておく。
乗り心地もTTがベスト。KM3は通常の路面では気にならないが、路面のつなぎ目を通過すると凹凸感がダイレクトに伝わってくる。乗り心地でもバランスの高さを得ているのはKO2だ。
オンロードの高速ワィンディングでは、TTに多少、ロール感を感じるが、アクセルを緩める必要性は感じない。もっともロール感を感じないのはKM3である。サイドウォールの硬度が高くロールを抑えているともいえる。コーナーを出た後の揺り戻しも少ない。
KO2のロール感はTTとKM3の中間にある。なお、TTはコーナーを攻め込むとスキッド音も出るが、粘り強く路面をトレースし、気になるほどのノイズではない。
ダートスラロームで感心するのはKO2だ。スムースにパイロンをすり抜けていく。TTもKO2よりも多少、滑りを感じるが、KO2と同程度のスピードを維持しながらパイロンを駆け抜ける。これに対し、KM3は小石を蹴散らしながらパイロンを通過すると表現できる。グリップ力はしっかりと保持しているが、荒々しさがある。
卜部敏治超私的タイヤ相性考察
第一位 TRAIL-TERRAIN T/A
第二位 All-Terrain T/A KO2
第三位 Mud-Terrain T/A KM3
まずは第3位から発表する。クルマの性格と使われ方との相性を総合的に判断するとKM3である。ただし、ルールラック、フロントガードなどを装着したオフロードスタイルでは、ルックス的にKM3が似合うことも記しておきたい。2位はKO2だ。とくにキャンピングやスキーなど、頻繁にアウトドアに出かける人にお勧めしたい。堂々の1位はTTである。デリカD:5はアウトドアのみならず、日常的に活用しているオーナーが多い。乗り心地のみならず、乗用車タイヤと同等のオンロード性能は、大きな魅力である。
KO2はオフロード走破性を維持しつつオンロードでの静粛性と乗り心地の良さが際立つ。KM3は、やはり本格的クロスカントリーで最大限の走破性を発揮するようである。TTに関しては、オンロード性能を追求しつつも、砂利道など未舗装路でも高い性能を発揮していた。
極限までリム深度を深くすることで実現したリムフランジの別体パーツ感は、車種専用設計にこだわるからこその造形。ダイヤモンドカット仕様なら、よりリムの深さを強調する。
M9の進化系とも取れるデザインを採用しているM8。ビードロックテイストのリムフランジとメッシュスポークを見事に融合させ、より洗練された美しくもタフな印象に仕上げられた。
アルミ鍛造プレスによる専用センターキャップもツヤ消しブラックでカラーリング。モノトーンのセミグロスブラック(いわゆるツヤ消しブラック)を調色。TEAM DAYTONAのロゴもブラックアウト。
※装着サイズとして225/75R16を選んだ理由は、3つの乗り比べ企画をする為にパターンが揃うサイズを使用。
実際に販売店でお求めの際はサイズをご確認下さい。
- 取材協力:
RAYS(https://www.rayswheels.co.jp)
TRAIL(http://www.trail.co.jp) - 撮影協力:
BFGoodrich(https://www.bfgoodrichtires.co.jp)
つくるまサーキット那須(https://sunrise-circuit.jp/index.htm)