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ジムニー

2021.11.18

JB64とJB23に見る〝ジムニーの本質〟とは?

 デザインを大きく変えて登場した現行型だが、さらに、今に求められる安全性や環境性能も採用し、まるで本当に別モデルかと思えるような進化を遂げていた。しかし、オフロード走破性を最優先するために採用されたハードウェアの数々は、内容を大きく見直し、もちろんパーツそのものも変わっている。さらにチューニングによって操縦性を高め、制御によって走破性を引き上げ、その一方で、やはり乗用車的な快適性や操縦性を大きくアップしている。そう、日和ったのではなく、バランスレベルを〝20年分以上に〟アップさせていたのだ。
 JB64へのモデルチェンジは、イマドキのSUVテイストを採り入れただけではない。装備だけピックアップしても、チルト機構のついたステアリング、深さを増したカップホルダー、段差をなくしたラゲッジルームデザインなど、先代モデルのウィークポイントを解消したかのようなものばかり。先代オーナーの立場からすれば、正直言ってクヤシイ内容であり、だから先代を所有する僕は、どうしても現行型を褒めちぎることができない。それはむしろ現行型を認めているからにほかならない。しかも4年目にしてようやく2型へ移行し、一部グレードにアイドリングストップ機能やオートライト機能を装備するなど、その悔しさはますます強くなった。
言うまでもなく、クヤシイけれどそれは羨ましいの裏返し過ぎない。今回は、そんな視点で新旧モデルを比較紹介してみる。

◆外装比較

比較したのは、一部改良前のJB64/1型とJB23/7型。ボディ形状の違いで、サイズには変更がなくても視覚効果的にJB64の方がワイドに見えたり、車高が上がっているかの印象がある。

 

JB64

JB23

軽規格・660㏄であるがゆえ、サイズに大きな違いはないが、見た目は大きく違う。新旧のエクステリアを見る限り、どこかに共通項はあるのだろうかと思えてくる。まず現行型は過去のジムニーに採用されていたデザインモチーフが各所に描かれており、バランス良くまとめられている。しかし個々に眺めていくと、並みいる本格派モデルのディフェンダーであったり、ラングラーであったり、Gクラスをイメージさせるスタイルを感じられるところがある。
 一方、先代のJB23のエクステリアデザインは、デ当時は行き過ぎ感を覚えていたものだが、フロントのブリスターフェンダーや、Aピラーの付け根を前へと出して傾斜を緩めていることなど、今見ると確かにエレガントといえるテイストが感じられる。

◆内装比較

シートについては、ラゲッジルームを活用することに配慮してバランスをつくり込んでいった現行型に対して、先代はもちろんそれも考えつつ、フロントのみならずリアシートにも乗員をしっかりと座らせることをターゲットにしている、という違いがある。
 現行型はフロントシートを快適性と機能性をバランスさせ、リアシートは座り心地をデザインした上で、アレンジした際にフラットになるように、そして左右手前までフラットな空間を提供できるように設計。対して先代のリアシートは意外にもすっぽりハマるかのような心地良さがあるが、現行型のようにラゲッジルームをフルに活用できない…という不足がある。

JB64

インパネは水平基調としたことで広がり感を手に入れた室内。パワーウインドウスイッチは現行型ではセンタークラスターへと移動することで、横幅や足もとスペースにゆとりが生まれたこともポイント。多機能になった分、メーター内での表示すべき情報は増え、センターにマルチインフォメーションディスプレイを備えている。

JB23

加飾パネルを用いることで機能性を強調しており、そのテイストは当時のトレンドであるため時代を感じてしまう。オーディオユニットは2DIN分を確保。メーターはシンプルなデザインとしており、飽きの来ないテイストである。過度なデザイン性はここでは見当たらないが、今回の取材車両である7型の後では順次採用されていく。

◆エンジン比較

エンジンはK6A型からジムニー用にチューニングされたR06A型へ換装れた。日常での扱いやすさのほか、オフロードで求められる低速域のトルクを充実させつつ、高速までしっかりとトルクの発生をもたらす。ほかにも変更点は多いが、印象に強く残っているのはトランスミッション。今回の試乗車はMT仕様だがATではいわゆる滑りを小さくしている。かつてのズルズルしている感じは消え去り、まさにダイレクト感が増している。

JB64

JB23

乗り心地が悪いわけでも、直進性が不足しているわけでも、ましてやグリップ性能が低いわけでもない。つまりFRレイアウトをベースとしたモデルとしてはバランスが取れているのだが、現行型はそのすべてを大きく引き上げている。そのため、レベルが異なるといった印象だ。
サスペンションの動きやグランドクリアランスには不足はないが、パートタイム4WD(前後デフがオープン)ゆえに、現行型JB64のような制御で良いから、差動制限装置が欲しいと思ってしまうことはしばしばある。スタックした際に期待される低速トルクも、JB64と比較すると若干物足りない印象がある。

◆フレーム比較

フレームの形状だけを比較するとあまり変わっていないように見えるが、実は新設計。クロスメンバーを追加し、ボディマウントゴムを大型化したこと、ストレスなく動くサスペンションを作り込んだことで、剛性感の中にしなやかさを提供。結果、心地良さを強く感じ取れるようになり、安心感と操る愉しさまで手に入れている。タイヤも剛性感をアップし、グリップ感や直進性に大きく寄与している。

JB64

JB23

◆4WDシステム比較

4WD システムは、表記上は〝先代と変わらぬローレンジを備えたパートタイム式〟を採用といえる。ただし切り替え操作は後期JB23でセンタークラスターに配置されたスイッチ式を廃止し、かつてのようにフロアに配置されたトランスファーレバーにて行なう。さらに現行型ではイマドキの走破アシスト機能であるブレーキLSDトラクションコントロールを装備。グリップを失ったタイヤに対してブレーキを掛け、接地輪へトルクを伝えて脱出をアシストする。つまりJB64 はハイレベルなハードとソフトが融合することで、最強に近い走破性を手に入れているのだ。

JB64

 
スズキセーフティといった予防安全技術もカメラ式で搭載。

JB23

基本のコンポーネントは変わらないがパーツや制御の変更によってキャラクターにはブレがない!

しなやかかつ剛性感に溢れたサスペンションと、その性能を引き出してくれるタイヤが組み合わせる。それもあり、快適性はもちろん、操る愉しさとさらに安心感もある。ハッキリ言って、先代で不足していたすべての乗り味を手に入れているため、オンロードの走りは先代ユーザーがもっとも羨むべきポイントとなるのだ。
サスペンションのストローク量は新旧で変わっていないが、路面を自在にトレースしていくフィーリングがより豊かになり、操る愉しさがアップしている。また、スタックしても(もしくはしそうになっても)、電子制御によって強引に脱出することも可能としている。