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【ショウワガレージ】〝SGR〟が走る理由、ラリーが育てるジムニー進化論!!!

2025年に開催されたアジアクロスカントリーラリー(AXCR)でショウワガレージが快挙を成し遂げた。ご存知の方も多いと思うが、AXCRは東南アジアを舞台に繰り広げられている、国際自動車連盟(FIA)が公認するクロスカントリーラリー。今年はタイ一国のみでの熱戦となり、その総走行距離は実に3247.72㎞(ちなみに日本だと山口県下関から青森県大間の直線距離が約12000㎞)。しかもそのコースのほとんどがオフロードというから、スケールも過酷さも想像を超えるレベルなのだ。
そんなAXCR 2025に、ジムニーを中心としたカスタムパーツの開発&販売するショウワガレージが『SGR(SHOWA GARAGE RACING)』として初参戦。ドライバーは同社社員ドライバーでありパーツ開発も行なう和田智弘選手。コ・ドライバーはショウワガレージの店長であり、同じく商品開発を行なう伊神敬太郎選手。実はAXCRへの参戦を見据え、和田選手は23/24シーズンに「チーム九州男児」のメカニックで参加。そして、ついにドライバーとして初参加を果たした。

ショウワガレージ・スタッフ
SHOWA GARAGE RACING
ドライバー/和田 智弘 氏

ショウワガレージ・店長
SHOWA GARAGE RACING
コ・ドライバー/伊神 敬太郎 氏

そのAXCRにおける戦績は、ジムニークラス1位、T1Gクラス(ガソリンクラス)2位、そして総合でも16位という見事な成績でフィニッシュ。しかもAXCRの出走順は前年の総合ランクで決まるため、今年初参加のSGRは最後尾からの出走だった…。それでこの結果は凄すぎる!
SGRの快挙はまだ終わらない。AXCRから帰国した直後に北海道で開催されるラリー北海道/XCRスプリントカップに参戦して、ここでもXC‐3クラスで2位を獲得した。ちなみに1位はトーヨータイヤのプロドライバーである藤野/玉城コンビ。あくまでいち社員ドライバーである和田/伊神コンビの凄すぎる戦績が分かるというもの。

参戦マシンはAXCRがJB74ジムニーシエラで、ラリー北海道はJB64ジムニー。ここではラリーやレース活動に会社として参加するショウワガレージの狙いを紐解く。
そもそもショウワガレージは以前からレース活動や参戦車両へのサポートを行なってきた。和田選手もレース活動を通してショウワガレ—ジからサポートを受けていた1人なのだ。また伊神さんや代表・三村さんもハンドルを握ってオフロードレースに出場していた。つまり目的はプロモーションだけでなく、自社製品のテストも兼ねている。特にAXCRのような長距離と悪路をたった数日で走る過酷な競技は、スプリント競技では得ることのできない走行データが集められるし、耐久性テストとしても格好のフィールドとなる。そのためコイルスプリングやアーム、コンピューターなどのカスタムは、基本的には市販モデルを使用している。また今後発売予定のクラッチのテストなども行なわれた。
ちなみに同レースのT1Gクラスで優勝したインドネシアチームのハイラックスはツインターボ仕様で、実質6日間の競技日程のうち(8日間のうち2日間はキャンセル)、SGRは5日間をこのハイラックスより早いタイムでゴール。初日に沼にハマって40分ほどタイムロスがあって2位となったが、まさに「これがなければ…」。
とはいえレースに〝タラレバ〟はないのは世界共通。ともあれ、ショウワガレージ製パーツの耐久性と信頼性は存分に証明された。

AXCR2025は特に過酷で、連日続く穴だらけの道に大型マシンのフレームが折れるという事態まで起こった。そんな状況でしっかり完走・クラス2位という戦績を残し、ショウワガレージ製パーツの走行性能と耐久性、そして信頼性は証明された。ジムニーユーザーならその活躍だけでなく、装着されているパーツにも注目するとより楽しめること間違いなしだ。
ちなみにラリー北海道参戦車両(JB64)は規定によって車検適合が条件だが、これは競技中に一般公道も走るため。一方のAXCR車両は、タイ国内を走れる規制に適合する必要はあるが、ラリーだけに使うなら日本の車検には合わなくても良い。しかしショウワガレージのAXCR参戦は日本で販売する自社パーツの開発や耐久試験でもある。そのためこのマシンに装着されているサスペンションやコンピューターなどはカタログモデルであることは先述の通り。バンパーやフレーム、ホーシングなどはAXCRのために補強を行なっているが、これは他車との衝突やジャンプに備えるためで、日本の車検にも適合し、公道走行が可能なのである。
もちろんモータースポーツ活動を行なってレース競技に参戦する以上、勝利にこだわる必要はある。エンジンを換装したり、スペシャルパーツでチューニングすることはもちろん可能だし、勝負の世界とはそうしたものだ。
しかしショウワガレージは競技を通してエンドユーザーをしっかりと見つめているは確かである。ラリーマシンであるため一見派手の。
ラッピングとエクステリアで隠されてはいるが、今回の2台のマシンはショウワガレージがパーツを提供する際の〝真摯な姿勢〟そのものといえよう。

SGRエンジンオイル SR-ONE & SS-ONE

AXCRとラリー北海道参戦車両のエンジンを護ったのがショウワガレ—ジ・オリジナルの新開発エンジンオイル『SR ONE(エスアールワン)』。これは基油にグレード4のPAOを使用し、耐熱性と潤滑性、洗浄性に優れたエステルを混合したレーシングスペック。ECUチューンを行なっていたり、オフロード愛好家の車両にオススメなのだ。一方ノーマル車からライトチューン向けが『SS ONE(エスエスワン)』。こちらはグレード3のVHVIを基油とし、エステルを配合したストリートスペックの高性能オイル。それぞれシエラ、ノマド用の4ℓ缶と軽ジムニー向けの3ℓ缶をラインナップしている。

■JIMNY SIERRA JB74【SGR】 RALLY CAR / AXCR

タイヤは極悪路で信頼性の高いダンロップMT2を採用(市販サイズの195R16)。ホイールはRAYSのジムニー専用設計の超軽量・競技用スペック「A・LAP-J PRO」を履く。

AXCRラリーマシンの数少ないスペシャルパーツが前後アイアンバンパー。形状は純正ボディに沿いながら、両サイドを延長して幅を拡大。肉厚な鋼材でワンオフで製作される。このバンパーで木をなぎ倒しながら走行する場面もあったという。

AXCRマシンのコクピットはメーターやエアコンスイッチなども含め、いい意味で純正然としている。ナビ部分は加工されキルスイッチやメーターが固定され、さらにコ・ドライバー側にはラリーコンピューター用ホルダーやマップ修正用のペンホルダーなどを用意。ブリット製のフルバケタイプのシートに6点式シートベルトを装備。ステアリングはオリジナルを開発中の革巻きのセミディープコーンに換装してある。

サスペンションは市販品のSGアジャストコイル50だが、ハイスピード走行に対応すべくリザーブタンク付きのKINGショックを選択。ここに自社製大容量バンプとKINGショック製のエアバンプをセット。スタビライザーは純正だがスタビリンクは自社製に交換し、前後アームも自社製の強化アームに換装済みだ。さらにフロントには大容量8の字バンプラバー、リアに大容量バンプラバーを装備し、ラテラルロッドの取り付け部やホーシングもすべて補強されている。

各種装備や補強で重量はノーマルより増しているため、ボンネットは軽量化のために自社カーボン製に換装。グリルは耐衝撃性に優れたABS素材のスポーツグリルで、シャープな目つきになるアイラインタイプに交換。なおウインカーやリアのテールランプなどはすべてショウワガレ—ジ製のLEDパーツに換装している。

AXCRマシンのフレームはあえて黄色にペイントされている。これはオイル漏れやクラックをいち早く見つけるため。また補強は外側だけでなくフレームの内部にまで行なわれている。意外にシンプルに思われるかもしれないが、燃料、キャニスター、アームピボット、そしてスキッドプレートなどにガード類を装備。マッドフラップはワンオフ品。

AXCRマシンのエンジンはショウワガレージ製のPowerd ECU spec1(レギュラー仕様)でチューニング。これは現地の燃料のオクタン価が未知数のためとのこと。ちなみに高温多湿、かつ大量の砂がエアクリーナーに詰まって、空気の流入量が1日で極端に変化するという状態でもエンジントラブルは皆無で、Powerd ECUの信頼性を証明。またエンジンマウントのブッシュもワンオフ加工で強化してあった。

5ZIGENと共同開発したマフラーに交換。アクセルレスポンスが向上とスポーティなサウンドが魅力的。こちらも市販品。

■JIMNY JB64【SGR】RALLY CAR / RALLY HOKKAIDO

ラリー北海道に参戦したJB64が装着する足回りは、コンフォートコイル。車高変化はなく純正サスより乗り心地の向上を狙ったパーツだ。競技マシンといえば硬い乗り心地を想像するかもしれないが、このクルマは実に快適、まさにコンフォートな乗り味だ。ただしショックにはKINGショックを採用するほか、バンプ延長するなど、細部はハイスピードなラリーに向けたセッティングだ。

両車ともに開発中のスポーツLSDを装備。コーナーで突然効かないようマイルドに効き始めるが、最終的にはしっかりと効くという特性を狙っている。これに関しては発売の可否も含めて未定。

エンジンはターボパイプを圧力損失のないアルミ製に交換しているほか、コンピューターをショウワガレージのPowered ECU spec2でチューニング。なおこのマシンはウインチを使用しないためバッテリーを小型化して軽量化が図られていたのもポイント。この車両もオリジナルエンジンオイル『SR-ONE』を使用。マフラーはJB64用Linksマフラーを装備。

純正らしさを残すインテリアだが、助手席前にはラリーコンピューターを搭載し、ステアリング前にはコーナーの曲率がひと目でわかる一覧表を掲示。これを見つつナビの指示で操作していくという。

トーヨータイヤ・オープンカントリーA/TⅢは、高いトラクション性能とコントロール性がありながら、市街地も静かに快適に走れる万能タイヤ。スノーフレークマーク付きで雪道も走行可。ホイールはAXCRマシンと同じ。

スポーティなデザインのバンパーやグリルでカスタムしたエクステリア。ウインカーやテールランプも含めてすべてショウワガレージ製。またカーボンボンネットに交換して軽量化も万全。