日本では1950年代から自動車クラブなどにより〝ラリー〟が開催されてきた。1970年代には全日本ラリー選手権(JRC)が誕生するが、当時は国内だけで完結するローカルなラリーだった。そこで日本のラリーを国際規格(FIA規定)にレベルアップさせ、選手が世界に挑戦する機会として2002年に初開催されたのがラリー北海道だ。
今年が24回目の開催で、スタート/ゴールとなる北海道・帯広や陸別サーキット周辺は、9月の風物詩として注目度が高まる。特設コースだけでなくリエゾンの沿道にも多くの人が駆けつけて、ラリーファンだけでなく地元住民にも理解され愛されているイベントだと実感させられるのである。
全日本ラリーの中でも〝ラリー北海道〟が注目されるのは規模の大きさにある。3日間のうちで競技をは2日間だが、時速100㎞を超えるハイスピードグラベルセクションを設けた12のSSの総区間は102.6㎞。これにリエゾンが加わり、合計632.8㎞という長い区間での戦いとなる。ちなみに参戦車両の多くは、トヨタ・GRヤリスやスバルWRXなど乗用タイプがほとんど。ラリー競技人口の増加を目指そうとして2022年からスタートしたのが、クロスカントリーカーやSUV車両限定で競われるXCRスプリントカップ(以下、XCR)。まだ北海道内限定だが2025年は6戦開催予定で、第4戦がこのラリー北海道との併催で実施された。そして、このXCR第4戦:ラリー北海道に初年度から参戦し続けているのが『FLEX SHOW AIKAWA レーシング with TOYO TIRES』。マシンは昨年2025年に引き続き三菱・トライトンで、それを駆るのはもちろん川畑 真人/中谷 篤組。本年度のXCR参戦は7月開催のARKラリー・カムイに続く2度目。チーム名からも分かる通り、総監督は俳優の哀川 翔さんが務めている。




そこに割って入るのが、ダカールラリーでTLC(チームランドクルーザー)の市販車無改造クラス12連覇に貢献している三浦 昴選手(K‐oneレーシング with TOYO TIRESのランクル250で参戦)。他にマツダ・CX‐60のステアリングを握る寺川 和紘選手/コ・ドライバー石川 美代子選手の姿もあったが、実は2人はCX‐60の開発エンジニアで自分が設計したクルマの性能をXCRで再確認する目的があった。さらに三菱自動車社員有志で結成された帯広三菱のエクリプスクロスPHEVのステアリングを握る浅井 明幸選手もXCRに全戦参戦中。強豪ドライバーがひしめき合う激戦区は、自動車メーカーも注目するカテゴリーとなり、エントリー台数も年々増加の一途を遂げている。
己のプライドをかけてXCマシンが激走する!

セレモニアルスタートの初日から明けて、ラリー2日目となる9月6日。いよいよ本番開始とあって、朝からピリピリした空気の中、午前6時から1分刻みで各車が続々スタート。なお今大会からXCRクラスの出走順が繰り上がっていたため、各チームは夜明け前から入念な最終チェックを実施していた。
この日はパウセクカムイ/陸別ロング/ヤムワッカを複数回走行する8セクションの設定。2日前に各チームともレッキを実施していたが、その際はかなりぬかるんでいたという。ただし、急速に路面が渇いたことでむしろ比較的ドライなコンディションに。そのため序盤は様子見とばかりに抑え気味のペースで走行する。
川畑選手が1セクでトップを取ると、続く2セクでは番場選手が巻き返し、まさに一進一退の攻防が続く。そんな中で動きがあったのは起伏に富んだ3セク。坂を登るためにアクセルの踏み込み量が大きくなる場所で、川畑選手のトライトンがセーブモードに入ってしまうというトラブルが勃発する。これによりまったく速度が上がらず、大きく順位を落としてしまったのだ。
入れ替わるように頭角を表したのがCX‐60の寺川選手。ロードクリアランスに優れた番場選手が圧倒的に有利かと思われたが、MAGIC TY MAZDA CX‐60は、その真逆の低重心と回頭性の良さで何度もトップタイムをレコードしていく。番場選手もこれに食い下がっていき、何とかトップでラリー初X550hを相棒にしてきたが、久しぶりにハイラックスのステアリングを握り、ある意味ホームグラウンドでもある北の大地におけるラリーを熟知しており、淡々とタイムを重ねていたのだ。
一方思うようにスピードが上がらない『FLEX SHOW AIKAWA レーシング with TOYO TIRES』の川畑選手が駆るトライトンは、8セク終了時点で順位は8位に後退。また期待されたK‐ONEの三浦選手のランクル250にもマシン不調が起こって、トップから15分遅れの9位にとどまった。
もちろん「このままラリー北海道を終われない!」 ということで、北愛国サービスパークに戻った川畑選手は可能な限りの対策を施して、残りの4セクションで少しでも上位を目指すことを静かに決意していたようだ。
まだまだ続くトライトンvsハイラックスの戦いをまず制したのはハイラックス!

最終日の9月7日は、4つのセクションを設定。旧池田球場と音更が舞台で、それぞれ2回走行する。池田ステージで低重心な寺川選手が番場選手との差をジワジワと詰めるものの、起伏の多い音更ではエンジン出力の差を活かし番場選手が逃げるという攻防。ちなみに池田の2本目となるSS11では、川畑選手はそれまでの鬱憤を晴らすような走りを披露し、ついにXCRクラスで最速タイムをマーク。今回は残念ながら表彰台には届かなかったが、次に繋がる息吹を感じさせた。
さて、前日までの差は僅かに詰まったが、最終的にはハイラックスを駆る番場選手がトップでゴール!「これまで違って国際クラスの次にXCRクラスが出走する順番に変わったことで路面が荒れておらず、今回は楽しく走れました!」とコメント。4年連続のXCRシリーズチャンピオンにまた一歩近づいた。
初参戦ながらCX‐60で番場選手に肉薄する23秒差で2位となった寺川選手は「自分で言うのも何ですが、非常に良いクルマだと再認識しました」と語る。3位でフィニッシュしたマナ選手は1月のブリザードラリーに続く挑戦で以下のコメント。「日本の林道はタイと違って起伏があり、また大きな岩や穴があってテクニカルでした」
まさに明暗が分かれる結果となった北海道ラリー2025/XCRクラスだが、役者も揃ってきたことで、来年以降も盛り上がりで、さまざまなドラマを見せてくれることだろう。
ちなみに車両重量2000㎏以下のクロスカントリー車両と、排気量2000㏄以下のSUVもXCRスプリントカップの対象。これまでレポートしてきたXC‐2クラスとは異なり、XC‐3はジムニーやジムニーシエラ、ライズやロッキーなどの9台がエントリーし、こちらも熱いバトルを展開していた。
SS1から終始トップをキープして、そのままゴールしたのは、川畑選手同様に普段はD1グランプリにも参戦する藤野選手。XCRは今年から挑戦しているが、シリーズチャンピオンも間近。海外のAXCRにも参戦する「ショウワガレージ with TOYO TIRES」の和田選手とは約90秒、3位の奈良選手とは約2分という僅差で激戦を制した。昨年に続きプロショップが参加するなど、ジムニーシリーズを中心にXC‐3クラスのエントリーもやはり増えている。そういった意味でも、北海道ラリーとXCRスプリントカップは、やはり目が離せないラリー競技となりそうだ。

川畑選手と同じくXCRに4年連続、しかもフル参戦中の番場彬選手が見事優勝。コ・ドライバーはレーサーでもある元SKE48の梅本まどか選手。2人のコンビでシリーズチャンプも間近に迫ってきた。装着タイヤはジオランダーX-AT。




帯広駅前で開催されるセレモニアルスタートには、多くの観客が詰めかける。街のメインストリートが完全に封鎖されてポディウムから1台ずつスタートする様は、海外レースやラリーでも見られる光景そのもの。またスタート前に帯広市立若葉小学校にラリーカーと選手が訪問し、ラリーを含むモータースポーツの振興や理解を得るための活動も行なっている。






各チームが整備を行なうサービスパークは帯広駅南にある北愛国交流広場に設置。ラリーカーを間近で見られるのはもちろん、さまざまなグッズの販売や配布も。さらに三菱4WDや自衛隊車両の同乗体験も開催され、大人から子供までギャラリーで賑わった。


荒れた路面でリタイアが相次ぐ厳しいコンディションの中(89台中24台がリタイヤ)、K-one Racing with TOYO TIRESとして参戦したTLC(チームランドクルーザー)の三浦 昴選手はマシンを巧みに操り、攻めの走りを見せた。ただし、やはり新型トライトン勢と同じような状況で苦しく辛い戦いを強いられた。「ランクル250が持つ本来の力を発揮しきることが難しかった。全てのユーザーが安全に安心してあらゆる道を走破するための性能とラリーでクルマの素性をさらけ出すということに、どうしても矛盾が出て両立させることができなかった悔しさが残ります」と三浦選手はコメント。9位でフィニッシュしている。


昨年に引き続きピンクにカラーリングされたトライトン「モモ//トン」で参戦した竹岡圭・山田組。「最新のクルマでラリーに参戦することの大変さを今回も実感させられました…」と語ったが、シュノーケルとボディダンパーの装着で、吸気温度の抑制と操縦安定性を向上。着実に前進している印象。なおラリー北海道後のXCR第5戦「ラリー・イーストイブリ」にも参戦予定だったが、大嵐で開催中止に。


4大会連続で参戦したFLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYOTIRESの川畑選手。番場選手の独走を食い止めるか!と期待されたが、マシントラブルで無念の8位。今回のマシントラブルは、ECUの書き換えとサブコンピューター加装が原因。実はサブコンピュータとECUのマッチングが影響して、マシンがエンジンに異常が起きたと勘違いすることでエンジンを守るため出力を低下させていた。そのトラブルはチームメカニックと三菱自動車のエンジニアとの連携でひとまず押さえ込むことに成功したが、その時には勝敗は決していた。ただし川畑選手の駆るトライトンは SS11でクラストップのタイムをマーク。トライトンが本来持っているポテンシャルに加え、ドリフト世界チャンピオンの意地を見せてくれたのだ。写真はSS11での鬼神の如き走り。





TEAM JAOS with KAYABAは、かつてAXCRでコンビを組んだ能戸・田中組が久々に復活。今回はKYBが開発した「環境作動油『サステナルブ®』」という、SDGsに配慮したリサイクルオイルを使ったサステナルブダンパーの性能を実証するという目的があり、持続可能なモータースポーツ活動の一環として参戦。ドライバー・能戸選手の地元ということもあり、丁寧な走りを見せ、ノントラブルで完走してXC-2クラスで4位入賞。
これまでも逆境に打ち克って来たチームはまたも雪辱を果たせるのか!?

今回のラリー北海道/XCRスプリントカップにおいて、誰もが「トライトンvsハイラックス」という、番場選手との一騎打ちを期待していたが、まさかのマシントラブルに見舞われたFLEX SHOW AIKAWA Racing with TOYO TIRESの川畑選手。「ドライバーとして勝負したいのに今回はそれができないラリーでした。心が折れそうになりましたが、とにかくサービスまでトライトンを運ぼうと走り続けました。こんな沈んだ気持ちで終わりたくなかったので、リスクはありましたがSS11では集中し、なんとかこの三菱トライトンでトップを取りたいと思って走りました。自分の未熟のところもありますが、ドライバーとしても向上心を持って、チームとも課題を克服してなんとか次戦勝ちたいと思います。」と振り返る。
哀川 翔総監督も「まずは完走できてよかったです。やるからにはトップを取りたいというのは、自分も川畑くんもチームも一緒です。今回は悔しいけど、最終日の走りが本来の姿だと思っています! 一歩ずつマシンを仕上げて行きたいね。この経験を次への糧にします! 」と語ってくれた。

車両重量の規定がないXC-1唯一のエントリー車両である惣田選手のデリカD:5。第3戦まではランクル80が参戦マシンだったが、今回から車両をチェンジ。オートガレージチャンプの4インチアップキットにクスコのスペシャルショックを組み合わせた仕様のデリカだ。早田選手は「エンジンコンディションが良くない…」とスタート前は語っていたが、そこは長年の経験でしっかりカバーして、見事完走。クラス優勝を果たしている
AXCR2024で優勝経験があるMana Pornsiricherd/Kittisak Klinchan組は、AXCR2025でもチーム三菱ラリーアートとがっぷり四つの戦いを見せた。そして、昨年同様、現行ハイラックスで今回も来日。タイと異なる路面状況に苦しみながらも3位で表彰台をゲットした。

ラリー北海道2025のXCRで総合優勝を果たした番場選手だが、想定していなかった伏兵となったのが、『TCP MAGIC with TOYO TIRES』のマツダCX-60(寺川/石川組)。タイヤにOPEN COUNTRY R/Tを履かせた以外ほぼノーマルという仕様だったが、潜在能力の高さを見事に実証! ドライバーを務めたマツダの開発エンジニアである寺川 和紘選手が「意のままに操れた」と語る言葉が印象的だった。
XC‐3クラスはジムニーを中心とした参戦車両となりOPEN COUNTRY装着車両が表彰台を独占!


XC-3クラスは12台がエントリーし、入賞の栄誉を手にしたのはすべてジムニー系。しかも全車が「OPENCOUNTRY」タイヤを装着しており、TOYO TIRESが表彰台を独占! ちなみにXC-2クラス2位のCX-60もOPENCOUNTRY R/Tをチョイス。舗装路からグラベル、果てはマッディな路面まで合計600㎞以上のあらゆるシーンで確実なグリップを実現した。



上からXC-3クラスで優勝した「WISTERIA with TOYO TIRES」(装着タイヤはOPEN COUNTRY R/T)、そしてOPEN COUNTRY A/T Ⅲを装着した2位の「ショウワガレージ with TOYO TIRES」と「チームトライバルスポーツ」が3位に入り、ワン・ツー・スリーフィニッシュのXC-3クラスで快挙を成し遂げた。なお、優勝したWISTERIA with TOYO TIRESは同シリーズの第2戦・第3戦に続いて3連勝。シリーズチャンピオンに向けて期待が高まっている。
- 全日本ラリー選手権(JRC)第6戦RALLY HOKKAIDO/XCRスプリントカップ
- 開催地:北海道帯広市
- 開催日:2025年9月5日〜7日
- https://www.rally-hokkaido.com












