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ランクルの本質に原点回帰した新型ランドクルーザー〝250〟誕生

新型として誕生したランドクルーザー250系は、ランクルの本質へと原点回帰を果たしたモデルだという。確かにそのスタイリングはスクエアでボクシー、まさに往年の本格派4WDを追求したように思える。そう、スタイリッシュさより力強さが見て取れるのだ。
 そんなランドクルーザーシリーズの歴史は72年とかなり長い。そのルーツは戦後、間もない1951年。米軍と警察予備隊から要請を受け、開発されたトヨタ・ジープBJである。BJはテスト走行で富士山6合目まで登り、その走破力の高さをアピールするが、警察予備隊に採用されることはなかった。なお、デビュー当時はトヨタ・ジープBJとネーミングされたが、1954年に商標権問題からジープの名称が外され、ランドクルーザーと命名される。ここからランクルとの歴史が本格的に始まる。
 1955年にBJの後継モデルとしてランクルFJ25がデビューし、海外で高く評価され、年々、輸出台数と輸出国を拡大。20シリーズは戦後復興期の1950年代に1万台以上輸出された。
 ランクルが世界で認知されたことにより、トヨタの土台骨を築き上げたのみならず、自動車産業を日本の基幹産業に発展させたといっても過言ではない。
 ランクルの2代目となる40系は1960年に誕生。1984年まで25年間の長きに渡り生産される。ランドクルーザーの名声を確立したのが40シリーズである。なお、40のロングホイールベースが45系であり、45系は55、60、80、100、200、300系といったBIGランクルへと進化する。
 1984年にデビューした3代目となるランクル70シリーズは、現在もワークホースとして海外市場で高く評価さるる。70はランクルの伝統を唯一、継承しているモデルなのだ。この70の力強い角張った顔をマイルドにして1990年にデビューしたのがランドクルーザー・プラドシリーズだ。1990年前後は4WDブームが定着した時期であり、乗用車からの乗換え組が多く、このような新ユーザー向けに既存の4WDを化粧直し、ラグジュエリー化して誕生したのがプラドだ。 プラドとはポルトガル語で「平原」を意味する。クロスカントリーより平原を走る姿をイメージしていた。
 1996年にデビューした2代目プラド(90系)はランドクルーザーの名前を冠するが、サーフのシャシー、サスペンション、パワーユニットがベースだ。クロスカントリー4WDとして重要な実用性の比重は小さく、乗用車的な使われ方に比重が置かれている。
 プラドは90系以降、2002年に120系、2009年に150系と進化を重ねる。そして今回、14年ぶりのフルモデルチェンジで250系(5代目)へ進化した。先述の通り、新型ランドクルーザー250の位置付けは“ライトデューティー”。高級路線へと寄っていたコンセプトを見直し、人々の生活と実用を支えるランクルの本質に原点回帰させた。
 今回、発表されたランドクルーザー250は、ランドクルーザーの本来の姿を追求しているのだ。

新型ボディサイズ&エクステリア

 ランドクルーザー250は。上級モデル300と同じ強度・高剛性と軽量化を実現するGA‐Fプラットフォームを採用し、オフローダーとしての基本性能を大幅に向上していることが最大のトピックだ。これにより生じたのはボディサイズの拡大だ。サイズは全長4925㎜、全幅1980㎜、全高1870㎜であり、いずれの数値も150プラドよりひと回りサイズアップしている。ホイールベースも150プラドより60㎜プラスとなったが、これはランクル80系から続くビッグランクルと同じ“伝統の2850㎜”となった。
 エクステリア自体はアクセントラインなどを極力省き、塊感のあるスクエアなボディを採用。長年乗っても飽きの来ないスタイリングなのだが、一方で250はオフロードでの取回し性能を重視したスタイリングに気を使った。
 ボンネット形状は中央部を低く設定し路面を見やすく、両サイドは高くして角の認識を容易に。無駄なコーナーの角を面削ぎし、狭い場所での取り回し性の向上を実現している。なお、ベルトラインは一段低くして、側方路面の覗き込み確認が簡単に行なえる。さらにドア下部は障害物の干渉を避けることを目的に削ぎ取られている。
 こうしたベルトラインやドア下部の形状は、ヘビーデューティモデルのランクル70に由来したもの。同時に発表された70との親和性も意図しているのだろう。さらに、歴代ランクルでこだわり抜いてきた機能性のひとつとして、ランプ類は高く中央に寄せて、枝などによる破損リスクを低減している。ドアミラーもランクル40系と同様に縦型を採用している。
 こうなると気になるのは対地障害角だ。250は150プラドと同一数値となるアプローチアングル31度、ランプブレークオーバーアングル23度、ディパーチャーアングル23度を踏襲。ただしクロカンオフロードをするには、ディパーチャーアングルには多少不満がある。最低でもアプローチアングルと同一にすべきだ。アプローチ時にクリアできる障害物でも乗り越えた後にリアバンパーを擦ってしまう確率は高い。この7度の差は以外と大きいのだ。
 ヘッドランプはLED耐熱性樹脂PES式、LED3灯リフレクター式、LED1眼Bi‐PES式+丸形DRLの3タイプを用意。簡単に言えば、3連角目ヘッドライトのフロントマスクと丸目2灯ヘッドライトの2種類のフェイスを用意している。北米ではすでに発表されているが、前者の各目がベースグレードで、丸目は1958というグレードと呼称している。最大の魅力は、このフロントマスクは、車両購入後であっても自由に・簡単に交換可能であることだ。
 筆者個人的には、250はオフローディング重視したモデルと主張していることもあり、似合う顔立ちは丸目だろう。周りを見渡してみれば、本格派クロカン4WDであるジープ・ラングラー、ジムニー、Gクラス、ディフェンダー(※1)、そしてランクル70もこの丸型ヘッドライトを採用している。この〝丸目化〟はオフローダーとしての原点回帰なのだ。
 ちなみにボディのカラーバリエーションは現時点では定かではないが、今回の発表会ではホワイトルーフを採用する2トーンカラーバージョンが登場していた。このホワイトルーフは、元祖ランクルである40シリーズでは定番のカラーだった。ちなみに当初ルーフが白くされていた理由は、熱帯地方で強烈な太陽光によって室内が熱くなることを少しでも和らげる…という目的があった。今ではクラシカルな雰囲気を想起させる手段のひとつである。つまり、これも原点回帰ということで間違いない。

●ボディサイズ(カッコ内は150プラド比)
〇全長4925㎜(+100㎜) 〇全幅1980㎜(+95㎜) 〇全高1870㎜(+20㎜)
〇ホイールベース2850㎜(プラド比+60㎜)
※80系から続く2850㎜のホイールベースとなり、立ち位置もこれまでのプラドではないとが分かる。
※ランドクルーザー300VXグレードと比較するとは全長は-25㎜、全幅1980㎜は同じ

●対地障害角は従来型同等以上の±0度を維持
〇アプローチアングル31度/〇ランプブレークオーバーアングル23度 〇デパーチャーアングル23度

ヘッドライトは丸目と角目の2種類だが、それ以外のバンパーやグリル、ボンネットなどのパーツは同じというのも面白い。実はフロント回りは、バンパーとヘッドライト下のボディ同色部分、アンダーガード横のパーツは3分割式で取り外しが可能で、それぞれ交換できる。これはオフロード走行でパーツが傷付いた時にそれぞれのパーツごとに脱着できることを目指したという。もちろんスタイリングの面でも、角目フェイスに飽きたら丸目に(その逆も…)可能だという。
丸目2灯フェイスは元々の70、もしくはランクル40からのオマージュだと分かりやすいが、北米のティザー画像にて3連角目の250と角目4灯のランクル60が並ぶ画像を発見!250系はこれまでのランクルシリーズの要素を凝縮したランドクルーザーだということがよく分かる。

新型デザイン&インクステリア

 ランドクルーザー250シリーズの内外装デザインは、伝統とモダンを統合しながら、Reliable(過酷な使用用途にも耐えられる信頼性)、Timeless(永く愛せる飽きのこないシンプルさ)、Professional(プロが使う、無駄のない道具に共通する洗練された機能美)などをキーワードに開発された。その結果、内装は以前の高級・豪華な雰囲気からリアルオフローダーの機能性を感じさせるデザインへとシフトしている。インエリアにも原点回帰の思想が、各所に取り入れられているのだ。
 まずオフロード走行で重要なことは“視界”である。前方の障害物のみならず、ボディ両サイドの障害物を素早く視認し、ヒットを避けることがトラブル防止には不可欠。その点では、250は死角を減少させる直立したAピラー、カウルとインパネ上部を低く抑え、良好な前方視界を確保、フロントドアはベルトラインを従来型より約30㎜低くして、路面を見下ろしやすくした。
 ちなみにラゲッジルームは従来型398ℓから408ℓへと拡大。人だけでなく、余裕をもって道具の収納もできる。

ランクルシリーズでは初のフル液晶タイプ12.3インチデジタルインストルメントクラスターを搭載。インストルメントクラスターはパームレスト形状を採用しており、走行中でも安定した画面操作を可能とする。ドライバーの足元にはニーパッドが設置されており、挙動が不安定なオフローディングでも安定した乗車姿勢を維持できる。
インテリアの各スイッチは機能ごとに異なる形状と操作方法を採用した。例えば機能ごとにトグルスイッチ、プッシュスイッチ、ロータリースイッチに分類されているのだ。ドライビングしている際に目線を切ってスイッチを目で確認せずに、ブラインドで操作することが可能となる。これは路面が激しく変化するオフローディングでは重要なポイント。さらに、シリーズ初となる電子パーキングブレーキも採用。

新型メカニズム&パフォーマンス

パワートレーンは、従来型以上にランドクルーザーにふさわしい力強い走りや環境性能を実現している。パワーユニットは仕向け地の特性に合わせ5タイプ用意する。
 国内仕様は、最高出力150kW(204PS)・最大トルク500Nmを発揮する1GD‐FTV型2.8ℓディーゼルターボ+8速ATと最高出力120kW(163PS)・最大トルク246Nmを発揮する2TR‐FE型2.7ℓガソリン+6速ATを設定。1GD‐FTV型は、これまでのキャリーオーバーのように感じるが、排気エネルギーで高速回転させるタービンホイールを小型化かつ形状を最適化することで応答性を高めた。
 ダイレクトシフト縦型8速ATは完全新開発である。8速としたことで、悪路での低速走行から高速巡航まで幅広い範囲で力強くスムーズな走りを実現している。一方2.7ℓガソリンは低コストグレードに設定される。ATも従来と同じ6速でありながら、スロットルレスポンスを改善して現行プラドより力強い走りを達成している。
 さて、北米や中国には最高出力243kW(330PS)・最大トルク630Nを発揮するT24A‐FTS型2.4ℓガソリンターボ・ハイブリッド+8速ATを設定している。このパワーユニットはランクル初採用のパラレルハイブリッドシステムである。日本への導入は当初はない…とされているが、将来的には導入される可能性もあるだろう。

 プラットフォームには、現行ランクル300と同じGA‐Fプラットフォームを採用、オフローダーとしての基本性能を大幅に向上させている。GA‐Fプラットフォームは超高張力鋼板をフレームの適材適所に使用し、堅牢性と高い剛性を確保する。従来型比で大幅な剛性強化フレーム剛性は+50%向上、車両全体の剛性としては+30%向上となる。
 サスペンションシステムはフロントにハイマウントのダブルウィッシュボーン式、リアは伝統のリジットアクスルに4リング式を採用する。サスシステムにはAVS(Adaptive Variable Suspension System)を搭載。このAVSはオフロード用、オンロード用をL4/H4によって制御内容を切り替える。さらに各センサーからの信号を元に4輪それぞれのショックアブソーバーの減衰力を適切に調整してくれるのだ。
 例えばL4ではモーグルなどサスペンションの動きが大きくなる場面で安定する制御を織り込み、H4では従来のAVSと同様に、ドライブモードセレクトの操作によって制御モードを最適に切り替えることができる。
 新機能としてトヨタ初となるSDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism )を採用。これはスイッチ操作で、フロントスタビライザーの効果をオン・オフできるもの。結果としてオフロードの悪路走破性と乗り心地、オンロードでの操縦安定性を両立することができる代物だ。他メーカーのオフロードモデルではすでに採用されている機能だが、これが結構役立つはず。なお、このSDMは時速30㎞以上になると自動的にロックされる。
 さらにステアリングはこれまでの油圧式パワーステアリングから、ついにランクルシリーズ初となる電動パワーステアリング(EPS)を搭載する。EPSは低速時の取り回し性の向上、オフロードでのキックバック低減を始め、素早いレスポンスとシャープなステアリング操作を実現できているという。この理由によって、ランクルでも採用することできたとか。
 ブレーキは、ユニットを刷新するとともにサイズを拡大。サスペンションのジオメトリーを見直すことにより、制動時の姿勢を改善し、どんな状態でも安定的にブレーキングできる。
 ランクル300に搭載するマルチテレインセレクトも踏襲して装備。テレインセレクトはトラクションが低いオフロード走行において、タイヤ空転によるスタックや駆動力不足による失速を防ぐ電子制御システムだが、オート・ダート・サンド・マッド・深雪・ロックの6モードを選択可能だ。これはモードごとに駆動力、サスペンション、ブレーキ油圧を自動で統合制御してくれて、スタックを防いでくれる。特に各種センサーの情報から走行中の路面状況を推定し、駆動力を最適化するオートモードは、H4およびL4でも作動。ドライバー自らがモードを任意で切り替えることなく、走行シーンに応じた走破性能を引き出すことができる。これが地球全土でから生還する…というランクルの思想なのである。
 なお、ローレンジではオート・サンド・マッド・ロックの4モード、ハイレンジではオート・ダート・サンド・マッド・深雪の5モードを選択できる。
 ほかにも300シリーズで採用しているオフロード走行システム・マルチテレインモニターも搭載する。マルチテレインモニターはフロント、両サイドに搭載するデジタルカメラで車両周囲の状況をドライバーに知らせるシステム。特にドライバーの死角になりやすい車両周辺の路面状況を確認できる。これにアンダーフロアビューなどを装備している。
 ここまで書いてきた通り、ランドクルーザー250はランドクルーザーとしてオフロード・オンロードを問わず、操縦しやすさと快適性を向上し、かつクラストップレベルの先進安全性能を満載している。なお、今回の内容はあくまでも発表時のもので、現時点では車両販売価格のほか、国内仕様と海外仕様の違いもハッキリとは分かっていないことも多い。とにかく言えることは、まさに史上最高のランクルといっても良い仕上がりだということだ。またハイブリッドパワートレーンがのちに国内市場に投入される可能性も「ゼロではない」ようだ。

スペックは変わらないが、ターボチャージャーは新規開発。排気のエネルギーで高速回転させるタービンホイールを小型化かつ形状を最適化することで応答性を高めている(単純に羽根を小さくするとエンジン出力は落ちるが、効率を上げることで出力は維持される)
250が採用するディーゼルパワートレーンは、燃費・力強い走りで定評のある1GD。そこに新型の8ATを組み合わせることで、オフロード/オンロードでの扱いやすさを向上。なお、シフトはランクルらしくゲート式を採用。150プラドでは、インパネ下部に設置されていた4WD切り替えスイッチは、シフト周辺に変更。走行中の操作も容易に。走行モード切替はシフト横となるなど機能性が高まっていることが分かる。

ハイテクデバイス「マルチテレインセレクト」は、ランクル200や150プラドはもちろん、ランクル300より進化したシステムとなる。さらにマルチテレインモニターもランクル300と同じく搭載。マルチテレインモニターはフロント、両サイドに搭載するデジタルカメラで車両周囲の状況をドライバーに知らせるシステム。特にドライバーの死角になりやすい車両周辺の路面状況を確認できる。これにアンダーフロアビューなどを装備している。アンダーフロアビューカメラはフロント画面表示中に停車し、画面内のスイッチを押すと手前で撮影された過去の映像に現在の車両周辺の映像を合成することで車両下の状態や前輪の位置を確認できるシステム。タイヤ付近の状況や障害物との距離を把握できスタック脱出に威力を発揮する。さらに、トヨタ初搭載となるバックアンダーフロアビューも採用する。このシステムにより後退時に後輪周辺をクローズアップで大きく表示し、スタック脱出を手助けする。オフロード走行支援システムとしてタイヤの向きやテレインセレクトモード、駆動レンジ、ボディの傾斜度、アクセル踏み込み量などオフロード走行時に必要な情報をすべて一目でわかるようにセンターディスプレイに一括表示する。

4WDシステムはフルタイム4WD式。通常時の前40:後60の駆動配分を、センターデフに組み込まれたトルセンLSDが状況によって配分を制御。もちろんセンターデフロックやローレンジも装備し、積雪時やオフロード走行時にはHIGH-LOW(H4-L4)レンジの切り替えをスイッチで任意に行なえる。
 これらをベースに、ハイテク電子デバイスの「マルチテレインセレクト」や「マルチテレインモニター」などでオフロードの走りを大きくサポート。そうランクル300とほぼ同じ、いやいや250は、それ以上に進化したデバイスを装備しているのである。さらに機械的なデバイスとして、電動デフロックも装備。
伝統のラダーフレーム構造を基本としたウィズフレーム式に、ランクル300と同じプラットフォームであるGA-Fプラットフォームを採用。プリウスなどで定評のTNGA技術や最新の溶接技術などを活用し、サイドレールとクロスメンバーの一部に板厚及び材質の異なる鋼板をレーザー溶接で接合し、質量効率を高める新構造を採用する。
サスペンションシステムはフロントにハイマウントのダブルウィッシュボーン式、リアは伝統のリジットアクスルに4リング式を採用。基本性能向上・悪路走破性の指標となるホイールアーティキュレーション(タイヤの浮きづらさ)を向上。
ランクルの伝統ともいうべき「デフロック」も当然設定される。しかも、フロント独立サスのランクルには朗報!しかもフロントのみ、リヤのみ、前後同時など、ドライバーの思うがままに独立して作動させることができるのはポイントが高い!