TOP > 記事 > トヨタ車体「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」が、NEWマシン&NEWタイヤを引っ提げてダカールラリーの前哨戦・モロッコラリーに挑む!

トヨタ車体「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー」が、NEWマシン&NEWタイヤを引っ提げてダカールラリーの前哨戦・モロッコラリーに挑む!

本誌がちょうど発売される頃、恐らく吉報が届くだろう。
2023年1月にサウジアラビアで開催される「ダカールラリー2023」の市販車部門に、ランドクルーザー300 GR SPORTをベースとする新型ラリー車を投入し、前人未到の10連覇達成を目指しているトヨタ車体「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(以下TLC)」が、ちょうど「モロッコラリー2022」にエントリーしていたからだ。これは北アフリカ・モロッコの南西部からモロッコ西海岸沿いの、かつてパリ・ダカールラリーで使用されたエリアを舞台として、計6日間/5ステージを戦うラリーで、ある意味〝ダカール前哨戦〞とも称されている…。
 TLCは今年6月、ダカールラリーを念頭に入れ、モロッコの砂漠地帯で約3週間にわたるテストを行なっていた。そこには先述の通り、ファン待望のNEWラリーマシンの雄姿があった。ここでは同チームの社員ドライバーにしてエースである三浦昂(みうら・あきら)選手からのコメントを借りつつ、ダカールラリーにかける意気込みとテストの模様、そして少しずつ詳細が明かされるLC300ラリーマシンに迫ってみる。

写真はすべて6月にモロッコにて行なったテストの模様。先代のLC200 を凌駕する性能をさらにブラッシュアップしたラリーマシンにLC300 を仕上げている。

ついにベールを脱いだLC300ラリーマシン

パリ‐ダカと言った方が分かりやすいかもしれないが、そもそもダカールラリーは、道なき道を走破するクロスカントリーラリー競技のひとつで、完走率の低さから〝世界一過酷なラリー〞ともいわれる。今回のテストでは、砂丘や未舗装路での高速走行など実戦に近い環境で、新型ラリー車の開発は進められた。また昨年から引き続き、タイヤを供給するトーヨータイヤもテストに参加し、2023年大会に投入する「オープンカントリーM/T-R」とLC300の性能との最適化も図られたとか。ではなぜ〝モロッコ〞なのか?

「モロッコは過去にダカールラリーにルート設定されていた国、ということもあり、本番で走る路面に近い環境にあります。そのためテストを高い精度で行なうことができます。テストとラリー参戦の両方を行なう意味は、テストでは車両の限界性能等を見極めて、そのデータに基づいた開発をすることにあります。対して実戦では、イレギュラーな場面でイレギュラーな操作を行なう環境に出会った時に、車両の懐の深さを洗い出すことになると考えます。さらに実戦ではメカニックの動きなど、チーム力を高めるための運営シミュレーションができることも大きいですね」と三浦選手。
 では気になるラリーLC300の仕上がりはいかがだろうか。

「昨年までは車両規則に沿って、ダカールを戦えるようマシンにモディファイする…という考え方でラリーマシンをつくってきました。一方、今回のLC300はダカールからフィードバックした技術がすでにベース車両に入っているため、市販車の元々持つパフォーマンスを〝ダカールで最大化する〞ことを前提に開発しています。したがって、シャシ刷新による、特にリアサスペンションのジオメトリーの最適化やE-KDSSといったデバイスによる路面追従性の大幅な向上、軽量化および重量配分の最適化による運動性能の向上は強く感じることができています。
また、トランスミッションの多段化は、常に最適なトルクを維持でき、エンジン回転数をキープしやすくなっています。排気量こそダウンしていますが、むしろトルクフルなクルマに感じますし、ギア選択の自由度が高まったことで、ストレスフリーで走れるマシンに仕上がっていますね」。

ダカールラリー2023はデビュー戦で勝利を目指す

一方で2022年から導入されていたトーヨータイヤのオープンカントリーについてはどうか?
「今回のマシンからクルマが軽くなったことで、オープンカントリーの持つパフォーマンスをより発揮できるようになりました。専用タイヤとなる『オープンカントリーM/T-R』は、LC200時のモデルと同様に、縦トラクションを活かしたアクセルワークでのコントロール性の高さや、砂丘での強いトラクションは変わりません。むしろ、対パンク性能をさらに向上した印象があります」。

 ラリーで勝つには速さ(マシンのパフォーマンス)と強さ(耐久性)の双方が求められ、両者が高次元にバランスが取れている必要がある。速いだけでは勝てないのがダカールラリーなのだ。このバランスを見極めることが、モロッコでの最大のポイントになるという。そして、最後に三浦選手はこう語ってくれた。
「ダカールでの目標は『市販車部門デビューウィン』以外にあり得ません!年々難易度を上げるコースそのものが最大の敵だとは思っていますが、LC300がどんな道でも必ず生きて帰り、最初にゴールに辿り着くクルマであることを証明したいと思います」。

LC300ラリーマシンが装着するのはトーヨータイヤ「オープンカントリー M/T-R」の改良タイプ。テスト走行ではスタックこそあったが、その期間中にパンクしたのはわずかに1本だけだったという。これは軽量化しつつも耐パンク性能の向上を両立させた技術によるもの。間違いなくこのタイヤが、TLCの勝利をサポートしてくれるだろう。
14年間戦ったLC200のラストレースを、ダカールラリー2022の市販車部門9連覇という快挙で終えた三浦選手(写真右)。2023年は果たして…。