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最強の四駆「BIG3」のワイルドなパフォーマンスに迫る!

世の中は空前のアウトドアブームとなり、しかもソロキャンプ、グランピング、オーバーランダーと、楽しみ方も細分化されている。それとともに、その活動のためのトランスポーターに注目が集まり、4WD・SUVも販売台数をどんどん伸ばしている状況だ。
 そんなふうに4WD・SUVが〝一般的な乗用車クルマ〞になってくると、人とは違った個性的なクルマを求める向きも増える。スタイリッシュで環境に優しく、誰でもスマートに乗ることができる……そんな〝SUV〞ではなく、せっかくアウトドア志向のクルマに乗るのなら、冒険心をくすぐる、ワイルドな本格4WDに乗ってみて欲しい。
実際、そんな要望や声もたくさん、聞かれるようになった。そして、ジムニーやランドクルーザー、そしてJeepが軒並み人気を集めているのも、本誌読者ならご存知の通りだろう。
 そこで今回は〝最強の4WD〞として、ワイルドな本格オフロード派の3台を集めてみた。しかもどの車種でも4ドア・ロング車を選ぶことができるのに、あえて〝2ドア・ショート車のみ〞。
 ショートといえばユーティリティはスポイルされるし、室内は狭いくなり荷物は載らない。しかもロングと比べても維持費的に有利になるわけでもない…。唯一、期待できるのは機動力の高さとオフロード性能の有利さだろう。
 その意味でもある種、マニアック過ぎる3台…。世界を代表する最強の四駆の〝最強〞たる所以に迫ることしよう。

PUTデポ代表:金原崇雄氏

日本のユーザーに海外仕様の魅力的なモデルを届けてくれる「PUTデポ」の代表取締役。仕事柄様々な四駆に携わってきているが、プライベートの愛車もVDJ78トゥルーピー。本格四駆ばかりを乗り継いできた四駆のプロフェッショナル。

モータージャーナリスト:卜部敏治氏

数々の4WD誌に寄稿するモータージャーナリスト。1987年キャメルトロフィーの日本代表であり、海外オフローディングに精通している。現在の愛車は今回撮影車として登場のNEWディフェンダー90。ランドローバーをこよなく愛する四駆界の重鎮。

四駆ライター:高坂義信氏

本誌をはじめ、様々な四駆雑誌やメディアで活躍している四駆ライター。これまでにジムニー、ジープ、ランクルなど本格四駆ばかりを何台も乗り継いできた根っからの四駆ガイ。現在の愛車は今回登場のJLラングラー・ルビコン。

■LAND ROVER DEFENDER 90

電子デバイスにより高レベルな走破性を披露

NEWランドローバー・ディフェンダー90(ナインティ)の国内デビューは2021年4月のこと。ロングの110より1年遅れのデビューだった。グレード展開はスタンダード、S、SE、HSEをラインナップ。今回のテスト車は中間グレードのSEとなる。サスはコイルスプリングだが、全グレードでエアサスの選択が可能。なお、ディフェンダーはワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー2021も受賞しているが、スタイリング上の特徴としては、前後の対地アングルが大きい。最近のSUVにはない角度を確保し、オフローディングで前後バンパーをヒットする心配はほぼない。
 従来型は1948年に誕生した初代の基本コンセプトを踏襲していたが、安全対策が時代に合わなくなり、生産中止に。新型はアクティブ・パッシブとも最先端技術を取り入れている。ブラインドスポットアシスト、アダプティブクルーズコントロール、レーンキープアシスト、360度パーキングエイド、ドライバーコンディションモニター、リアトラフィックモニターなどの支援システムを標準装備。テスト車にはデータプラン付きWi-Fi接続オンラインパックを装備。専用の通信データプランであり、施設情報やガソリン価格、マップデータの取得をはじめ、音楽、天気、カレンダーなどコネクテッドアプリを使用できる。
 ランドローバー社のパワーユニットはディーゼルとガソリンに加え、BEV(フルバッテリー電気車)、PHEV、MHEVまでを用意。さらにFCEV(水素燃料電池)を搭載するディフェンダーのプロトタイプなども発表されている。

特徴的なのはリアビューといえる。直角に切り落としたラインとスペアタイヤキャリアでデュアビリティを表現。旧型のイメージを踏襲するのは、室内に光を取り入れるルーフリアサイドに設けるアルペンライト。リアサイドウインドーのシグネチャーグラフィックはキットオプションとなる。撮影車両のオプション装備は、ガードを兼ねるサイドステップのみ。
今回のSEグレードはレザーシートを装備する。12ウェイ電動シートであり、状況に合わせベストシートポジションを得ることが可能だ。安全対策も充実しており、パッシブ・アクティブ先進安全装備(ADAS)を標準装備。
パワーユニットは300psを発揮するP300型2.0ℓ直4ターボガソリンエンジンを搭載。P300型はスタートストップ機構、回生エネルギー再利用などを採用。これに8速ATを組み合わせている。言うまでもないが駆動システムはランドローバー伝統のフルタイム4WDだ。オフローディングで必須ともいえるハイローレンジトランスファも継承している。路面状況により駆動力をコントロールするテレインレスポンスを筆頭にスタビリティをコントロールするDSC、トラクションをコントロールETC、斜面効果速度を抑制するHDC、ロールをコントロールするRSCなど電子ディバイスを満載している。
サスは4輪独立コイルスプリングを基本とする。タイヤは18インチから19インチ、20インチ、22インチの4タイプを設定。これに合わせホイールも11タイプ設定する。SEグレードは20インチタイヤを装備し、タイヤはオールテレーンが標準装備となる。

四駆乗りによるディフェンダーインプレッション

●モータージャーナリスト:卜部敏治氏

下回りをヒットしやすいようにも見えるが、コイルスプリング仕様でも最低地上高は226㎜を確保して、突起物もなくフラットだ。コイルスプリングの伸縮性は期待できず、オブスタクルではタイヤを浮かせやすいが、各種電子ディバイスで挙動をコントロールできるのがディフェンダーのキャラクターだ。スイッチ操作一つで高レベルオフロードパフォーマンスを披露するのは、素晴らしい。ドライバーはローレンジでエンジントルクをソフトに力強く引き出せば、楽にオブスタクルを走破できるのがいい。

●四駆ライター:高坂義信氏

先代までのヒストリーを一気にひっくり返してしまったNEWディフェンダー。モノコック、輪独立懸架ゆえ、オフロードに踏み込みのもためらわれるが、意外と対地アングルは良好。255/60R20という800㎜近い外径を持つタイヤも功を奏している。サスペンションストロークは短いが、電子デバイスは賢い!

●PUTデポ代表:金原崇雄氏

車体がかなり大柄ですし、バンパー類もブラスチック。しかも四輪独立サスで…。しかしオフロードでの乗り心地はとてもスムーズで、ランクル70のドタンバタンは何?という感じ。サスペンションは簡単に浮いてしまいますが、凹凸も何の苦労もなく進んでしまうのは天晴れ。慣れない人でもオフロードを安心して走れそうですね。

■TOYOTA LANDCRUISER GRJ71

ザ・クロカン四駆らしい機動力の高さが魅力

1951年に登場した本格四輪駆動車のトヨタジープBJ、その直系に当たるのがランドクルーザー70系だ。登場は1984年。日本では2003年、販売を打ち切られてしまうが、それでも世界の市場で活躍、14〜15年、日本で1年余り再販され、予想以上の販売台数を稼いだのは記憶に新しい。
 そんなわけで、現在は日本で販売されていない70系だが、今秋の動向も気になるし、逆輸入という方法で手に入れることはできる。今回の70ショート(GRJ71L)は逆輸入車のプロショップ『PUTデポ』が輸入・登録・販売したモデルで、先の再販モデルには設定のない2ドア・ショート仕様だ。
 ホイールベースは2310㎜、今回の3台でも一番短く、全長もわずか4170㎜。これにタイヤは7.50R16相当のサイズを組み合わせているのだから、対地アン
グルはまさにナンバーワンでしかない!
 搭載エンジンは4.0ℓV6ガソリンの1GR-FE型。日本でも初期150プラドやFJクルーザーでお馴染みのユニットで、5速MTと組み合わせている。ちなみに70系には4.5ℓV8ディーゼルターボの採用もあるが、ショートには設定がないとのこと。少し残念…。
 今回の試乗車は中近東仕様の左ハンドルモデル。PUTデポの金原さんによると、為替レートでも有利、現状の世界情勢でも輸入台数にさほど影響がないため、お客様には中近東仕様をお勧めしているとのことだ。ちなみにPUTデポでは、ロングの78系トゥルーピーの人気が高いとのこと。まさに、世の中は〝ナナマル〞の波が来ているようだ。

マニアにとってはたまらない70ショートモデル。角異型ヘッドランプのマスクは、ちょっと顔が大きい気もするが、優れた対地アングルは、優れたオフロード性能を予感させる。タイヤは225/95あるR16という、ちょっと聞き慣れないサイズだが、7.50R16相当と思えばいいだろう。ホイールはスチール製が標準だが、撮影車両は「JAOS」製に変更されていた。
今回の車両はLXグレードのナローモデル。グレードとしては中間くらいに位置し、現地ディーラーのオプションにより、ダッシュ周りやステアリングなどにウッド調の加飾が配されている。リヤシートは3人掛けのベンチシート形状で、折りたたみは一体式となる。
現在輸出仕様のランクル70に搭載されているのは、4.5ℓV8ディーゼルターボ(1VD-FTV型)と昔ながらの4.2ℓ直6NAディ-ゼル(1HZ型)、4.0ℓV6ガソリン(1GR-FE型)の3種類。
但しこの車両の出元の中東地域では1HZの設定は既に無く、特にショートにはV6ガソリンのみとなる。出力は228HP&37kg-mでトランスミッションは5速MTを組み合わせている。四駆システムはパートタイム式で、2WD⇔4WD・Hi⇔4WD・Loをトランスファレバーによって切り替える。今回のモデルは、フロントハブが直結式だったが、グレードによりフリーにできるデュアルモードハブも設定がある。またディ-ゼル車のみ、オプションで前後デフロックも選択可能だ。
サスペンションはフロントに3リンク式のコイルスプリング・リジッド、リヤにリーフスプリング・リジッド式を採用。電子デバイスも充実していて、4Lシフト時に作動するアクティブ・トラクション・コントロールや、ヒルアシストコントロールなども標準装備される。
●PUTデポ代表:金原崇雄氏
ランクル70は、やはりクラシカルな乗り味ですね。クラッチもそこそこ重めで、乗り心地はドッタンバッタンしている感じ。それをドライバーがアクセルコントロールなどで制御してあげないと、上手く走らせることができない。一方でこの自分で運転しているんだという、楽しさが最大の魅力だと思います。セミロングの76系や78トゥルーピーはホイールベースが長いのでショートほどの機動力はありませんが、乗り味的にはもう少し落ち着いた感じがありますよ。
●四駆ライター:高坂義信氏
ショートホイールベースの70系は、やはり優れた対地アングルと機動力の高さで、オフロードを走らせるのが本当に楽しい!顔は大きくなったが、ガソリンエンジンはディーゼルよりフロントが軽いので、前後リジッドの粘りのあるトラクションを稼ぎながら、ヒョコヒョコ走りつつも、乗り越えていくイメージがある。A-TRACも作動するのは驚き!

●モータージャーナリスト:卜部敏治氏

電子制御システムを搭載せず、トランスミッションはマニュアル。低回転域から発揮する最大トルクと1速と2速の低いギア比がオフローディングでの大きな魅力です。タイヤのグリップ力を最大限引き出すアクセルワークと繊細なステアリングワークができるか否か……70にはドライバーの腕を発揮する楽しみがある。

■Jeep WRANGLER JL

低いギアと良く伸び縮みする足を持った猛者

SUVやピックアップなど、多彩なラインナップを完成させているJeepシリーズだが、そのルーツであるミリタリーJeepの直系とも言えるのが、ラングラーシリーズ。現行モデルのJL型は2018年にデビューしたが、先代のJK型で登場した4ドア=アンリミテッドはJLでも主役に…。
もちろん2ドア・ショートモデルもラインナップしているが。
 今回の撮影車両はその2ドアモデル。日本では受注生産とされており、かなりレアな存在だ。しかも撮影車は北米仕様であり、さらにオフロードウェポンを大充実させた〝ルビコン〞だ。さらに日本仕様には未設定の6速MT+パートタイム4WDのドライブトレーンを採用している、ハイパフォーマンスモデルなのだ。エンジンは3.6ℓV6ガソリンだが、そもそもMTを選べるのは、このエンジンのみだった。
 まさにリアルJeepを体現するようなモデルであるラングラーだが、先の理由などから、日本ではアンリミテッドの販売台数が9割以上を占めるという。本格派のショートモデルの方が珍しい……というのは、なんとも寂しいことではある。
 ちなみに、今回のテスト車両は純正カスタムも施されている。サスペンションは北米ではオプション設定となる2インチアップキットを装着(純正なのにショックアブソーバーはFOX製)、タイヤは35インチサイズのマッドテレーンに変更(ちなみに北米仕様ルビコンの標準サイズは33インチ=285/70R17)。もちろんこれらはオフロード性能の大きな向上に効果的だ。

とくに2ドアモデルは、モデルチェンジを重ねても、Jeepの伝統を色濃く受け継ぐシルエット。ただしボディサイズはかなり大柄になった。ホイールベースは2460㎜と、4ドアより550㎜も短い。今回の北米仕様“ルビコン” にはハイラインフェンダー、前後スチールバンパーなど日本仕様にはない装備も。2インチアップのフォルムに。35インチタイヤも組み合わせている。
上記の実用重視のランクル70に比べると、オシャレに彩られた印象のインテリア。インパネにはレッドアルマイトカラー、革巻きステアリング、シフトノブにもレッドの差し色が。シートは撥水タイプのファブリック、乗車定員は4名となる。
日本でも人気の2.0ℓターボのほか、本国にはディーゼルやハイブリッド、V8エンジンなども用意されるラングラーだが、今回の仕様は6速MT。となるとエンジンは必然的に3.6ℓV6が選べるのみ。四駆システムも、日本仕様は前輪をオンデマンドで駆動させるフルタイム4WDモードを持つが、今回の仕様はシンプルなパートタイム式で、2WD、4WD・Hi、4WD・Loのポジションを持つのみ。ただしルビコンは、トランスファLoレンジの変速比が4.00と極端に低いのが特徴で、クローリング性能を強化。駆動系では強化デフ、前後デフロックなども標準装備されている。
サスペンションは前後とも5リンク式のコイルスプリング・リジッドを採用。ルビコンはフロントのスタビライザー解除装置も標準で、オフロードでストロークアップを図ることもできる。今回の車両はMOPAR 純正の2インチアップキットに換装、ショックアブソーバーは高圧モノチューブ式のFOX。
●四駆ライター:高坂義信氏
4Loにシフトすると、低すぎるとも思えるギア比、そして長大でアーティキュレーションの強いサスペンションの相乗効果で、障害をジワジワと乗り越える走りが似合う。たとえばモーグルの登り斜面も、アクセルを踏み込むことなく、アイドリングでグイグイ登っていく。同じ前後リジッドでも、ランクル70は少し勢いをつけながら乗り越えていくイメージで、そこが両車の走りの違いか?トレッドも広く、ムリな態勢になっても怖くない……。いやむしろそれが逆に怖いのかもしれない。

●モータージャーナリスト:卜部敏治氏

ランクル70同様にMTがオフローディングで楽しさを生んでいる。ただしラングラー・ルビコンはオフロード走破性を高めるギア、トランスファ、デフロックなどのメカ的な駆動システムが満載だ。オフロードではデフロックをオンにすると楽に前進できるが、
デフロックを最終手段としていかに使うか、頭脳を駆使する楽しみが魅力である。

●PUTデポ代表:金原崇雄氏
クラシカルな乗り味のランクル70、最先端の電子デバイスでオフロードをこなすディフェンダー…ラングラーは、ちょうどその中間的な印象です。クラッチワークや乗り味もソフトで、ドッタンバッタンすることはあまりない。コイルサスペンションの特徴でしょうね。オフロードで乗る楽しさがしっかり残されていますね。