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伝統を現代風にアレンジしつつ積極的に新技術を投入【BMW 4代目3シリーズ E46】

サスペンションやエンジンを熟成させることで、3シリーズとして一つの完成形となったE46。伝統を踏襲する一方で、バルブトロニックなどの新技術も世に送り出し大きな進化を遂げたモデルでもある。

各部を熟成させることで進化を遂げた4代目モデル

基本的には一つ前のE36型からメカニズムを受け継ぎ、さらに熟成を加えたのがE46。足回りにストラット&セントラルアームの組み合わせを採用するのはE36時代と同じだが、アーム類にアルミ合金を使い軽量化することでシャシーの熟成を図っている。ボディを拡大しつつも50対50の重量配分が踏襲され、抜群のコーナリング性能にも磨きをかけた。電子デバイスも進化し、横滑り防止装置であるDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)を搭載。横方向へのスライドに対して安全な制御が可能になっている。さらにCBC(コーナリング・ブレーキ・コントロール)も搭載され、コーナーでブレーキを踏んだときに各ホイールに備わるブレーキ圧を個別に自動制御することにより、オーバーステアやタイヤがロックしてしまうのを防ぐ。こうした電子デバイスと熟成されたシャシーによって、より駆け抜ける歓びを感じられるクルマに仕上がっているのだ。

 エンジンは直列4気筒と6気筒を用意し、ダブルVANOSを搭載。吸気側だけでなく、排気側にもバルブタイミング調整機構を備え、全域で力強いトルクとパワーを生み出す。これにより日常走行においてはエンジンの回転数を抑えることができ、燃費の向上にも繋がっているのだ。もちろんアクセルを踏み込めばどこまでも滑らかに回っていく絶品のフィールを味わうことができる。

 伝統の直列ユニットに組み合わされるのが学習機能付きのステップトロニック。これは電子制御式の5速タイプでMTのように任意でのギアチェンジが可能。前期型と後期型ではギアチェンジの方向が異なっており、02年以降の後期型ではシフトをPレンジ方向に押すとシフトダウン、Dレンジ方向引くとシフトアップとなり、前期型ではこれが逆になる。

 現行型では更なるボディの拡大や足回りの変更がなされているが、E46はブーメラン状のロアアームなど伝統のサスペンションを受け継ぐ最後のモデル。程よい大きさのボディと重さを感じさせないナチュナルなハンドリングは、3シリーズというクルマのキャラクターを色濃く残すモデルとして現在も多くのファンから愛されている。

トランクスポイラーや専用のアルミホイールを装着したMスポーツ。リアサスはセントラルアーム式を採用。

ブラックで統一された質感の高いインテリア。ATは学習機能付きの電子制御5速タイプを搭載。

6気筒のM54ユニットは、滑らかなフィールが魅力のポイント。

メンテナンス情報 エンジン不調や警告灯の点灯による故障が多い

 水回りが弱いのはBMWに共通するポイントなので交換サイクルをきっちりと守っていくことが大事。ラジエターのサブタンクに亀裂が入り水漏れが発生するというトラブルが多発したが、すでに修理済みのクルマも増えてきている。もし、未交換なら、現段階で亀裂などが生じていなくても予防として換えておくと安心だ。水回りは夏が来る前に正常な状態に戻しておこう。

 ABSやエアバッグ警告灯の点灯、カムシャフト/クランクシャフトセンサーの不良によるエンジン不調も定番化している。これらのトラブルは突然起きることもあるが、予兆があることも多いのでアイドリング不調や点いたり消えたりする警告灯を放置せずに、早めに修理工場で点検してもらうことがトラブル予防に繋がる。エンジンが不調になるトラブルは、センサーだけではなく吸気系のホースに亀裂が入り、そこから外気を吸ってしまうことが原因であることも。インテークベローズホースの蛇腹部分や4気筒のベントバルブに備わるホースなどに亀裂が入ることが多い。E46ではゴムや樹脂パーツの劣化が目立ってきているので注意しよう。

 ATはATFのオイルパンから漏れることがあるが、基本的には丈夫。その中でいくつか報告されているトラブルが、シフトポジションスイッチの不良。ATの警告灯が点灯し、エマージェンシーモードに入り2速にホールドされてしまうことが多い。後期型でも発生しているので注意が必要だ。また当然ながらBMWをよく知る修理工場で、定期的なATFとフィルターを交換をしておくことが重要なメンテナンスだ。

 E46自慢の機構であるバルブトロニックやダブルVANOSは、稀にセンサーやオイル漏れが発生しているが、頻発するようなトラブルはない。だが、今後の維持において要注意ポイントであることは間違いない。 

 足回りの劣化が進んでいるクルマも増えてきているので、BMWらしいシャープなハンドリングを楽しむためにも、フロント側だけでなくリア側にも手を入れておきたい。とくに走行距離が多いクルマは、リアサスペンションのリフレッシュを検討したい時期だ。

定番となったラジエターサブタンクの割れ。内部から亀裂が進行するケースがあるので、

未交換なら予防的に換えておいても損はない。

多くのクルマに発生しているオイル漏れ。とくにタペットカバーパッキンからの漏れは

4気筒、6気筒ともに増加傾向にある。

多発しているABSやエアバッグ警告灯の点灯。ABSはユニット不良、

エアバックは助手席の着座センサーの不良が多い。

AT本体のトラブルは少ないが、シフトポジションスイッチの不良で警告灯が点いたり、

2速でホールドというケースがあるので注意。

ブレーキのブースター用の負圧を作るためのバキュームポンプ。とくに4気筒はトラブルが多い。

写真はバラしたところで、本体の合わせ面から漏れることが多い。Oリングの劣化が原因であることがほとんど。

 

“ツーリング”のメンテナンスポイント 負担がかかりやすいスタビリンクの劣化に注意

機関面のメンテナンスはセダンと同じなので、発生するトラブルも共通だ。セダンとツーリングの大きな違いはリア回り……と言いたいところだが、足回りもセダンと共通だ。5シリーズではリアにエアサスペンションが装備されるが、E46には付かない。そのため足回りのメンテもセダンと同じような感覚で良いのだが、荷物をたくさん積んで走る人は、ブッシュやボールジョイント、ショックアブソーバーに負担がかかっていることが多い。例えばスタビリンク。上下の動きに作用するリンクなのだが、ショックアブソーバー側のボールジョイントにガタつきやブーツ切れを起こしていることが多い。段差を乗り越えたときに「ゴトッ」という異音を感じたらここが劣化している可能性が高い。そのほかの部分はまだ大丈夫だと思われるが、丈夫なロアアームの下に備わるリーディングアームのブッシュはチェックしておきたいところ。また、シャープなハンドリングを取り戻すためにもフロント側にも手を入れておきたい。ロアアームブッシュを中心に全体的なリフレッシュが必要だ。

 ツーリングならではのポイントとしてはテールゲートダンパーの不良が考えられるが、現在のところトラブルは発生していないようだ。しかし、ガスダンパーの劣化により交換が必要になる部分なので、ゲートの開閉時に違和感を感じたら修理工場で点検してもらおう。リアワイパーやテールランプの接触不良なども気になるところではあるが、今のところは大丈夫そうだ。

上下方向に作用するスタビリンクは負担がかかりやすく、ブーツ切れやガタつきを起こしているクルマが多い。異音の原因にもなる。

 代表モデルの主要諸元 02年式320i

■全長×全幅×全高:4470×1740×1415mm■ホイールベース:2725mm■トレッド(前/後):1470/1480mm■車両重量:1440kg■エンジン方式:直6DOHC■総排気量:2171cc■最高出力:170ps/6100rpm■最大トルク:21.4kg-m/3500rpm■サスペンション形式(前/後):ストラット/セントラルアーム