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【走行11万kmオーバーの2代目Eクラス】 各部のコンディションはどうなってる??/GERMAN CARS アーカイブ 2014年9月号より

多走行車のコンディションとはいったいどんな状況なのか。購入時には確認できない下回りを中心に徹底的にチェックしてみると、「走行距離=コンディション」ではないことが判明したのだ。メカニックの見解も紹介しながら、その模様をレポートする。ただし、記事はすべて2014年9月号からの抜粋なので、中古車の相場や「現行型」「先代」などの表記はすべて2014年当時のものとご承知おきいただきたい。それでも長く乗れるドイツ車の資質を知ることは、現在でも大いに購入の参考になるはずだ。

 

96年式 メルセデス・ベンツ E320

W210タイプの2代目Eクラス。中古車は多数流通していて、その中には多走行車も多い。取材車は直6エンジンを積んだ前期型だが、ATは電子制御式の5速タイプを搭載。走行距離は11.8万kmである。
 

走行距離だけでは
本当の状態は分からない

 多走行車なんて買えない……と思っている人は少なからずいることだろう。だがそれは、走行距離を基準にしているからであって、実際のコンディションとはイコールではないのだ。その検証をするべく用意したのが、96年式のメルセデス・ベンツE320。メカニックに徹底的に点検してもらい、各部のコンディションをチェックしていきたい。
 まずは外装回りをぐるっと見てみると、劣化して黄ばんでしまいがちなヘッドライトレンズは良い状態を保っている。保管状態が良いか、定期的にメンテナンスしている証拠でもあるだろう。タイヤは交換時期にきていて、スリップサインが出ている。実際に販売されている中古車でもこういったケースは多いが、タイヤは消耗品として考えるべきだ。
 ボンネットを開けてエンジン回りをチェック。エアマスセンサーやアクセルセンサーはトラブルが多いポイントであるが、きっちりとメンテナンスされているようだ。実際にエンジンをかけてみても一発始動で、アイドリングも安定している。水回りのウォーターポンプも交換した形跡があった。発電機であるオルタネータは純正品が装着されていて、恐らくだが一度も交換していないかもしれない。いずれはメンテナンスが必要な消耗品だと言える。
 室内は非常にキレイな状態を保っていて、シートも大切に扱われているし、ウッドパネルに割れなども見られない。内装のコンディションが良いクルマは機関部も好調と言われる。すべてのクルマというわけではないが、取材車に関してはそれが当てはまっていた。ただし、一般的な中古車販売店では店頭に並んだ時点でキレイに清掃されることが多いので、例えば交換すると費用が高いシート、ダッシュボード、ウッドパネルなど、パッと見の印象ではなく全体を見て判断することがポイント。
 いよいよ、リフトアップして下回りをチェックする。購入の際には下回りまで見ることはできないので、その状態は気になるところだろう。まず、メカニックから指摘されたのがデフからのオイル漏れ。ここは定番のポイントなので、漏れの状態を見てメンテナンスが必要になるという判断が下された。ロアアームブッシュは一度交換されているようだが、小さな亀裂を発見! 同氏によると、W210の場合は走行2万㎞くらいで小さな亀裂が入り、そこから少しずつ大きくなっていくとのこと。ただ、現状ではまだ使える状態なので、メンテナンスは必要なしとのことだった。こうした見極めができるかどうかが、メカニックの知識と経験なのだ。あれこれも交換が必要と言うのは本当の点検ではないのである。
 さらに足回りのブッシュやボールジョイントもチェックしてみたが問題はなく、ショックアブソーバーからのオイル漏れもない。壊れると高くつく触媒についても異音などはなく、排気管からの漏れなどもなかった。
 点検を終えたメカニックに取材車の印象を聞いてみた。
「部品を交換した形跡があちこちに見られるので、定期的にメンテナンスしてきたクルマだと思います。今すぐに必要なメンテナンスはタイヤ交換くらいでしょうか。年式と距離を考えたら本当に良いコンディション。オーナーがしっかりとメンテナンスしてきたかどうかは、走行10万㎞オーバーになると顕著に現れますからね。実際にこういった中古車が売られていたら、多走行でも狙い目だと思いますよ」
 今回の検証において分かったことは、メンテナンスされていれば走行10万㎞というのは単なる通過点でしかないということだ。取材車と同じW210で、走行20万㎞を走ったクルマも実際に存在する。これはメルセデスに限らず、すべてのドイツ車に通じること。頑丈なボディ、整備性を考慮した作り、安定した部品供給があるからこそ長く乗り続けることができるのだ。中古車のコンディションを走行距離で判断してはいけないことを、改めて思い知らされた。 ( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )

 

CHECK 01 エンジン回り

定期的にメンテされているのが分かる状態だ

取材車のエンジンは直6DOHC。走行11万kmを超えていてもオイル漏れが見られなかったのは、定期的にメンテナンスされてきた証とも言えるだろう。部品を交換した形跡も数多くあった。
オルタネータは純正品が装着されていた。現状では問題はなかったのでまだ使えるが、いずれ交換が必要になる消耗品である。
エンジン不調の原因になりやすいエアマスセンサー。見た目だけでは劣化をチェックできないが、CP診断を受けることで状態を確認できる。

電気的にスロットルを開閉するためのセンサー。アクセルを踏むとリンケージが作動する。

ウォーターポンプやサーモスタットなどの水回りパーツは交換された形跡が残っていた。
 

CHECK 02 その他の箇所は?

気になるのはタイヤの劣化くらい

劣化を放置しておくと黄ばんでしまうことが多いヘッドライトレンズ。取材車はクリアな状態を保っていたことから、定期的にメンテナンスされているのが分かる。
タイヤは減っていてスリップサインが出ていた。ここは交換が必要となる。多走行車にはよく見られるケースである。
インテリアのコンディションは良好でオーナーが大切に扱っていたのがよく分かる。エアコンなどの装備類も正常に作動。
 

CHECK 03 下回りは?

オイル漏れがあったが全体的に良好

購入の際に下回りまで見ることはできないが、走行11万kmオーバーの現状を知るためにリフトアップ。メカニックが各部を徹底的にチェックしていく。
見た目では問題なさそうだったロアアームブッシュに小さな亀裂を発見したが、まだ使用できるという判断だった。
デフからオイル漏れは定番のポイント。漏れがひどいようであればすぐにメンテが必要だが、現状では様子を見るということに。
スタビライザーに備わるブッシュ。劣化が進むと開いてきてしまうのがお約束だ。現状ではまだ使えるとのこと。
壊れると高くつく触媒だが、W210の場合はそれほどトラブルは多くないという。もし壊れても対処する方法はある。
足回りで劣化しやすいのがボールジョイント。ブーツに亀裂が入るのが定番だが、取材車のそれは問題なし。
オイルパンからの漏れはなく、定期的にパッキンを交換しているという判断。ということはオイル交換もされているはず。
ショックアブソーバーからのオイル漏れはなく、テスト走行した印象でも問題ないとのこと。
排気管に多少のサビが発生してしまうのは避けられない。排気漏れしているような箇所は見当たらなかった。

結論!!
走行10万キロは単なる通過点でしかない!
ドイツ車なら少しの手入れで
長く乗り続けられる!!

 

メルセデス・ベンツの
電子制御式5速AT「あるある」
シフトモードスイッチのトラブル

 電子制御式5速ATには「W」と「S」のシフトモードスイッチが備わっている。「W」にすると2速発進になり、「S」では1速発進となるのだが、これが壊れてどちらかに固定されてしまうトラブルが多い。その原因として多いのが、お菓子などの食べカスや飲み物をこぼしてしまってそれがスイッチに付着してしまうこと。状況にもよるが、スイッチ部分をキレイに清掃してやることで復活することも多いという。

( GERMAN CARS 2014年9月号より抜粋 )