独特なスタイリングを持つVWブラジリアは、その名の通りVWのブラジル法人によって開発されたクルマ。日本には輸入されていないため、中古車として出回ることがほとんどない希少な一台である。
ボディバリエーションは
3ドアと5ドアの2つ
フォルクスワーゲンのブラジル法人では、ブラジル版ビートルであるフスカなど独自に開発したクルマを販売している。このVWブラジリアもその一台で、デビューは73年。途中、マイナーチェンジをしながら83年まで販売されたモデルである。ブラジリアは、タイプⅣと呼ばれるVW411をベースに設計されている。タイプⅣはVW社にとって起死回生のモデルとなるはずだったが、完成してみると足回りぐらいしか目新しさがなく、販売面においては苦戦したモデルでもある。
ボディバリエーションは3ドア版と5ドア版を用意。独特なフロントフェイスに加えて、タイプⅣのバリアントよりもフロントのオーバーハングが短くなっているのが特長だ。エンジンは、多くのVW車に搭載された1・6ℓの空冷式水平対向4気筒。足回りはベースとなるタイプⅣと共通であり、フロントがストラット、リアがセミトレーリングとなっている。
VWブラジリアは周辺の国を中心に輸出されたが、日本には輸入されていない。そのため実車を見たという人は少ないと思う。そんな中で、今回は奇跡的に75年式のブラジリアに出会うことができたのだ。
販売店のガレージの奥に大切に保管されていた3ドア版のVWブラジリア。ボディカラーはオシャレなクリームベージュで、オリジナルのメッキホイールキャップはピカピカに磨かれている。フロントマスクは72年に登場したVW412に似た個性的なデザイン。メッキのバンパーがクラシカルな雰囲気をさらに増幅させている。ボディは年式から見れば上々のコンディションだ。
インテリアは実にシンプルなもので、装備としては細みのステアリング、4速MT、ラジオといった内容。まさに実用のためのクルマといった印象だ。それだけに使い倒してこそ、その魅力を感じられるクルマだと言える。5人乗りとなるシートやドアパネルはVWブラジリアのオリジナルで、当時の雰囲気を今も残しているのが魅力。RRとなるシャシーに搭載される空冷エンジンは今も元気に回り続け、空冷ならではのサウンドを響かせながら、ゆったりと走ることができる。何かと忙しい現代社会だけに、趣味のクルマぐらいは、ゆったりと時間の流れを感じながら走るというのも素敵だと思う。
前述したように、このVWブラジリアは日本に輸入されていないわけだが、中古車としてはこの一台しかないと思われる。もしかしたら、VWマニアが並行輸入しているかもしれないが、それでも数は少ないはず。もちろん希少性だけではなく、クルマ好きの視線を釘付けにするブラジリアの強烈な個性は、現代のクルマでは決して味わえないものだ。
日本には輸入されなかった激レアのVWブラジリア
希少なクルマゆえに心配なこと
VW Brasilia
気になるギモンを解決!
Q1 専用品は使われているの?
A1 外板部品は専用となっている
エンジンは当時多くのVW車に搭載された空冷の水平対向4気筒なので共通だが、ボディなどの外板部品は専用品だ。それゆえ基本的な消耗品についてはビートルなどと同様に入手できるが、ボディ関係はブラジルなど海外で探す必要がある。
Q2 新車当時の人気は?
A1 ブラジルではベストセラーとなった
ブラジル版ビートルであるフスカからの乗り換えを狙ったモデルだったのだが、価格が安かったことが影響して本場ブラジルでは大ヒットとなった。質実剛健というドイツ車らしい作り込みがなされているのもヒットの要因の一つだと考えられる。
Q3 トランクルームはないの?
A3 リアではなく、ボンネットの下にある
リアハッチを開けても、その下にはエンジンが搭載されているため荷物を積むことはできない。トランクがないの? と思ってしまうが、じつはトランクルームはフロントのボンネットの下に備わっているのだ。容量はちょっと小さいが、ないよりはマシだ。
SPECIFICATIONS 75年式VWブラジリア
全長 : 4015㎜
全幅 : 1605㎜
全高 : 1430㎜
ホイールベース : 2400㎜
車両重量 : 890㎏
エンジン方式 : 水平対向4SOHC
トランスミッション : 4MT
フロントサスペンション : ストラット
リアサスペンション : セミトレーリングアーム
ブレーキ(前): ディスク
ブレーキ(後): ドラム
乗車定員 : 5名