金属製のガソリンタンクにサビが発生すると
新たなトラブルの原因になる
Parts Data
✔このパーツの役割は?
タンクにはフィルターが備わっているが…
ガソリンタンクは文字通りガソリンを溜めておく部分で、高齢世代のドイツ車は金属製のタンクを搭載しているクルマが多い。このタンクには異物を燃料ラインに循環させないためのフィルターも備わっている。ちなみに、現在のドイツ車は樹脂製のタンクが主流となっている。
✔劣化するとどんな症状が出る?
タンクからポンプにいくホースなどからガソリンが漏れたり、タンク内部にサビが発生してしまうこともある。サビが燃料ラインを循環してしまうとポンプなどを壊す原因になってしまう。
✔長持ちの秘訣は?
ガソリンタンクが燃料で満たされていれば、よほどの温度差がない限り結露は防止できるので、サビの発生を抑制できる。そのため燃料は常に半分以上をキープするべきだ。タンク内部をコーティングすることで、たとえ水分が混ざったとしてもサビないようにする方法もあるようだ。
温度差による結露で
タンクにサビが発生する
燃料系の定番メンテポイントといえば、燃料ポンプ、フィルター、リレーといった部分で、高齢世代のドイツ車では一度は交換している部品である。燃料系の不具合はエンジンの調子に直結するので疎かにできないのはご存知だと思うが、見落としがちなのがガソリンタンク。現在のクルマは樹脂製のタンクを採用しているが、高齢世代のドイツ車では金属製のタンクを搭載するクルマがある。安全性を重視したこの金属製タンクだが、長期使用によりサビが発生するというトラブルが出ている。
このサビが非常にやっかいで、高価な燃料ポンプやエンジン本体にも大きな影響を与えてしまうのだ。それゆえ、ガソリンタンクのサビというのは放置できない重大なトラブルであるということを認識しておく必要がある。
ガソリンタンクにサビが発生してしまうのは、タンク内外の温度差によって結露が発生してしまうことにある。この結露による水分と酸素によって酸化してしまうのだ。
過去に一度くらいは、ガソリンスタンドなどで水抜き剤を勧められたことがあると思う。水抜き剤の主成分はアルコールであり、水と燃料を結びつけて燃やしてしまおうというものだ。樹脂製のタンクが主流である現在ではあまり見かけなくなったが、当時は金属製のタンクを搭載したクルマが多かったということだろう。
サビがなければ水抜き剤を使うことで一定の効果を得ることはできるかもしれないが、21年以上経過したタンクの内部を確認することは現実的ではないし、アルコールによる悪影響も考えられる。水抜き剤を入れればOKということではないので、ここは勘違いしないでほしい。
ガソリンタンクはクルマによって搭載位置が異なるが、リアシートバックの裏に鉄板を挟んで取り付けられていたり、リアシートの座面下などに装着されている。車内でガソリンの臭いがする場合、トランクのカーペット、またはリアシートの座面を外したパネル付近からガソリンが漏れている可能性がある。また、燃料ポンプを交換してもすぐに異音などが出て壊れてしまうといった場合、燃料タンク内部に溜まったサビなどの異物が原因となっているケースが多い。燃料タンクにもフィルターが備わっているが、サビなどが発生すると目詰まりを起こして、正常にろ過されなくなってしまうのだ。
ガソリンタンクを交換するとなった場合は基本的にはASSY交換となる。また、タンクには前述したフィルターユニットと燃料計のセンサーであるセンダーユニットが取り付けられているので、これも同時に新品にしておく方が安心だろう。燃料計の針がピクピクと跳ね上がったり落ちたりする場合、原因の多くはセンダーユニットの接触不良によることが多い。
インタンク式の燃料ポンプを搭載しているクルマでは、燃料計のセンサーはポンプユニットに装着されている場合もある。同様に動かなくなってしまったり、異常な動きをすることがあるので、タンクを交換するときにはチェックしておくべき部分だ。
燃料タンクは約5~10万円と車種とタンク容量によって価格は異なるが、前述したような症状が出た場合や長く乗っていくなら交換が必要となる。クラシック世代のドイツ車ではサビが発生しているクルマもあるから重要な燃料系メンテナンスのひとつ。ポンプやフィルターも大事であることは間違いないが、その寿命を延ばすためにも高齢世代のドイツ車はガソリンタンクの状態に気を配っておく必要があるのだ。
インタンク式の燃料ポンプを搭載するクルマは、リアシートの座面下にタンクが装着されている。この付近からの燃料漏れも多い。
ガソリン臭の原因は
タンクだけではない!
ガソリン臭の原因となるのはタンクの不良だけではない。例えばチャコールキャニスターやパージバルブがそうだ。チャコールキャニスターはガソリンタンクの中などで蒸発した燃料を一時的に溜めて、制御バルブであるパージバルブを介してインテークに流し燃焼させている。チャコールキャニスターの内部には活性炭が詰まっていて、水や汚れなどを除去するフィルターのような役目も持つ。この活性炭は時間が経つにつれてその性能が低下し、さらにボロボロになった活性炭がパージバルブの電磁弁を詰まられてしまうことがある。そうなると、ガソリンの臭いが車内にまで入り込んでしまうのだ。
リアシートの座面下にタンクがあるインタンク式の燃料ポンプを搭載しているクルマでは、ゴムパッキンが劣化していたり、ポンプの交換時に正しく装着されていなかったりすると車内までガソリン臭くなってしまう。ホースからガソリンがにじみ出ていることもある。
このようなガソリンの臭いを感じたら、即修理工場で点検してもらうこと。ガソリン漏れは車両火災が危惧されるから、信頼性を重視して新品の純正パーツを使うということは理解してもらえると思う。
最後にガソリンの劣化についても触れておこう。ガソリンは揮発成分が抜けやすいため、長期間使わない場合はタンクを満タンにしておくのが基本だ。揮発成分が抜けてしまうとワニスが発生(俗に言う腐った状態)してしまい、このガソリンが燃料ポンプに送られてしまうと一度は作動するものの、内部で詰まって二度と動かなくなるという現象が発生する。半年くらいなら問題はないが、それ以上になる場合はガソリン保管用の添加剤などを入れておくように心がけよう。
新品?or中古品?
失敗しないパーツの選び方
部品が供給されているなら純正品を使うべき
ガソリンタンクの交換が必要になった場合に考えるのが、新品の純正か中古品かという選択。金属製のガソリンタンクは車種や容量によって価格が異なるが、5~10万円と高価で、希少なクルマほど価格が高くなるのは他の部品と同じである。だが、「サビもないし、ガソリンを溜めておくだけのタンクだから中古でいいや……」と考えるのは危険だ。本文中にもあるようにタンクの交換が必要になるケースというのは内部のサビが原因であることが多い。中古品の場合、目視で多少は内部を確認することはできるが内側のコーティングが劣化している可能性は否定できない。今でも新品部品が供給されているクルマなら、周辺の部品も含めて純正品を使ってきっちりとメンテナンスをしておくことが大切。燃料系はクルマにとって重要な部分なので、確実なメンテを心がけよう。