サビに強いドイツ車でも経年劣化には逆らえない
じつは、ドイツのクルマは錆びに強い。Teroson(テロソン)やWURTH(ウルト)など、世界を代表する防錆剤メーカーが存在し、早くから亜鉛メッキのプールに浸けてボディの細部まで完璧な錆対策を施したフルジンクボディが採用されてきた。これは、ドイツが寒冷地であることが大きな理由である。
日本でも降雪地帯では冬場に塩分を含んだ融雪剤を散布するが、ドイツの塩撒きはハンパではない。長い冬の間中大量の融雪剤が撒かれることで、並の仕様では錆びだらけになってしまうのだ。
防錆剤は主に、下回りに吹き付けて弾力のある被膜層を作り飛び石などによるキズからボディを保護するものと、ボンネットやドア内部などの袋状になった部分に注入して内側からの錆びを防ぐWAXタイプがある。当然ながら、日本向けの新車にも入念な保護がされているが、問題なのはドイツと日本の気候の差。高温多湿の日本では、パネル内に注入されたWAXが溶けて流れ出てしまいやすい。VWのゴルフ2など、洗車する度にテールゲートの下辺りに油汚れのスジが残るという経験をしたユーザーが多かったのではないかと思う。これこそが溶け出したWAXなのだ。
もちろん、流れ出したWAXを再度充填することは可能だ。専門のショップに依頼すれば、専用のツールを使って袋部分に噴射する形で塗り込んでくれる。費用はだいたい3万円程度。しかし油汚れの問題と、また数年で元通りになり根本的な問題の解決には至らない。そこで注目したいのが、錆びの発生原理を利用して、そもそも錆びないようにしてしまおうという技術。
鉄は原料である鉄鉱石から酸素を追い出して作られていて、放っておけば空気中の酸素とくっ付いて元の安定した状態に戻ろうとする。その時に手助けをするのが水分で、水が電気化学反応を発生させることで鉄をイオン化させ、空気中の酸素と結合しやすくなる。こうして錆は発生する。だから錆びは梅雨時や融雪剤が撒かれる時期に発生しやすい。この結合を、電子の力で防止しようというのがラストストッパーなのだ。
この原理は実は50年以上前から利用されていて、石油コンビナートや地下パイプライン、橋ゲタなどにも似たような装置が使われている。確かな技術的効果が証明されている電子的な防錆装置なのである。
ラストストッパーはバッテリーの電気を使用して作動するが、消費電流は3~12mAとクルマの時計に使われる程度。それでも万が一にもバッテリー上がりの原因とならないように、電圧をモニターして一定以下に低下した場合は自動的に電源を切る機能も備わっている。取り付けは非常に簡単で電源を取って車体に2本の配線を繋ぐだけ。作動をモニターするLEDのインジケーターも付いている。車体側への加工は必要ないので、装着はとにかく簡単だ。
まだまだ防錆処理が十分ではなかった1960年代頃までの旧車ユーザーの間では、すでに定番のアイテムとして周知されているラストストッパー。そろそろ車齢が20歳を超えるネオクラシック世代のメルセデス・ベンツやBMWにも、早めに備えておいて間違いはない製品と言えるのではないだろうか。
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※メーカーによる検証データ