あらゆるトラブルパターンを熟知している
格安に修理できるメソッドを確立した!
どんなクルマであっても、ATの不良は高額修理に入る。クルマによっては数十万円単位の費用がかかるので、乗り続けるか、新たなクルマに乗り換えるか迷う選択だ。メルセデス・ベンツやBMWにおいては修理メソッドが確立されており、トラブルが発生してもオーバーホールで対応できるから、まるごと新品に交換するよりもはるかにリーズナブルに直すことができる。
だが、フォルクスワーゲンやアウディに搭載されているDSGとSトロニックに関しては、オーバーホール不可と言われることが多かった。その理由としては、消耗部品の供給であったり、分解するための技術、ツールなどが揃わないというもの。そのため、トラブルが多発していても、ディーラー以外は手が出せないというのが状況が続いていた。ディーラーではミッションをまるごと新品に交換するのが通例なので、高額な修理になってしまう。それによりまだ乗り続けたいと思っていても、フォルクスワーゲンやアウディから降りてしまった人も少なくないはず。
そんな状況を打破したのが、静岡県沼津市にあるうしぶせ自動車。DSGとSトロニックのオーバーホールを可能にしたファクトリーである。早速、代表の河田氏にトラブル状況について聞いてみた。
「DSGやSトロニックといっても、様々なタイプがあります。大きく分けると乾式と湿式があり、ギアも6速と7速があります。弊社ではどのタイプも修理可能です。乾式の7速について話をすると、アウディA1、A3、TT、Q2、VWゴルフⅥ、Ⅶ、シャラン、トゥーラン、シロッコ、ザ・ビートルなどに搭載されているトランスミッションです。
どれも販売台数が多いクルマですが、クラッチの磨耗によって発進時、後進時にジャダーが出るという症状が多いです。これは乾式のクラッチであるため、物理的にクラッチが減ってしまうのが原因。ディスクとプレッシャープレートのクリアランスが広くなってしまった場合は、クラッチの交換が必要になります。
異音が出て、前後全く動かない場合には、メカトロニクスと呼ばれるユニット不良、オイル漏れ、油圧不足、内部にあるソレノイドバルブの不良などが多いです」
では、なぜ今まで他の工場でのオーバーホールができなかったのか。
「こうした修理をする際には、メカトロニクスを外す知識や工具、消耗部品を用意する必要があるのですが、まずそれを独自のルートで入手しています。さらに、分解の手順や注意すべきポイントなどはこれまでの経験で得たものがあるので、オーバーホールが可能になったんです」
そんなうしぶせ自動車にはDSGやSトロニックの修理依頼が殺到している。それだけ多くの人が悩んでいるということなのだが、河田氏はこのノウハウを全国に広めたいと考えている。ビジネスとして考えれば自社の技術を教えてしまうのは損をしてしまうように思うのだが、定期的にプロメカニック向けのセミナーを実施しているのだ。
「もちろん、遠方から来てくれるユーザーさんはありがたいのですが、もし私がユーザーなら、自分が住む地域で直せるのが一番だと思うんですよね。そういった思いもあって、技術を公開することに決めたんです。技術的なノウハウはもちろん、部品の供給もできるので、今後、DSGやSトロニックを直せる工場を増やしていくのが、今の目標ですね」
このような修理メソッドが確立されたことで、フォルクスワーゲンやアウディのを選ぶ際の不安やリスクが軽減されたといえる。DSGやSトロニックに異常が発生した際にはぜひ相談してみてほしい。また、修理のノウハウを知りたいというプロメカニックからの問い合わせも大歓迎ととのことだ。
●「DSG」「Sトロニック」ってなに?
VWのDSGやAudiのSトロニックは、今日、最も進んだトランスミッションといえる。例えば6速タイプの場合、1、3、5速の奇数側ギアと2、4、6速の偶数側ギアにそれぞれ独立したクラッチを与え、走行中はどちらかのクラッチを接続することで駆動力を得る。変速は主にクラッチを切り替えるだけなので、瞬時に行なえることからシフトもスムーズでロスが少ない。イージードライビングを実現しながら、スポーツドライビングでもMT以上の速さを発揮できる。まさに理想的なギアボックスだ。
●トラブルパターンは?
その複雑な構造によるものなのか、DSGやSトロニックにはトラブルが多く発生している。クラッチの磨耗によるジャダーの発生、突然クルマが動かなくなる、異音の発生、ミッション本体からのオイル漏れなどが代表的なトラブル事例となっている。また、クルマによって乾式と湿式があり、さらに乾式にも第1世代と第2世代があるなど、様々なタイプがある。
これまでできなかったオーバーホールが可能に!
ディーラーではまるごと交換が通例
DSGやSトロニックのトラブルは、今に始まったわけではなく、以前から多数の事例が報告されている。だが、その対処方法についてはメカトロニクスやミッション本体などをまるごと交換するしかないと言われていた。実際ディーラーではこういったASSY交換となるのが通例。だが、うしぶせ自動車では独自の修理技術と部品の入手に成功し、リーズナブルなオーバーホールを可能にしている。
- うしぶせ自動車
- TEL:055-931-9260