足回りメンテの第一歩はショックの交換
乗り心地と走りに作用する重要なパーツ
ボディがいつまでも跳ね続けないように抑える役割をしているのがショックアブソーバー。足回りの主要な消耗パーツとして、広く知られている。ショックが劣化すると安定性が低下し、フワフワとした乗り心地になってしまう。人によっては気分が悪くなるかもしれないほど、その揺れは気になるもの。安全性という意味においてもコーナリング時の安定性は確実に低下し、急なブレーキング時にも加重のかかっていないタイヤが浮きやすくなり非常に危険だ。同乗者にとっても、乗り心地の悪いクルマでは不快な思いをさせてしまう。ショックアブソーバーが劣化する原因は、封入されたオイルに空気やゴム、金属などの摩耗片が混ざり込むことと、内部のピストンに組み込まれたオイルの流量を調整するための弁の歪み、密閉するべきシールリングの機能低下などで、静かに、しかし確実に劣化は進んでいく。
また、ショックアブソーバーを交換する時には関連する部分も同時にリフレッシュするのがセオリー。例えば、アッパーマウントやダストブーツ、バンプストップラバーなどがそうだ。劣化したショックアブソーバーを新品に交換すると驚くほどの違いを感じられる。もちろん、BMW本来の走りを楽しむためにも、マストなメンテナンスである。
ショックを交換する時期が来たら、そのタイミングでアフター系のショックを試してみるのも面白い。スポーティなものからコンフォートまでラインナップは豊富なので好みの乗り味を手に入れるチャンスでもある。また、スプリングがダメになるケースは少ないが走行距離が多いクルマ、旧車などは点検しておきたいポイントである。
ハブベアリングにも注意
ハブベアリングは車輪を支える重要なパーツで、ホイールとともに回転している。駆動輪ではこのベアリングの中をシャフトが通り、駆動力をハブと車輪に伝えている。ハブベアリングが劣化するとガタが出て異音を発生させる。走行に比例して異音が大きくなるのが主な症状。そうなると走行フィーリングも悪化して、コーナリングの感触がいつもと違ってしまうこともあるのだ。走行フィーリングが悪くなると足回りのアームやブッシュの劣化を疑ってしまうが、じつはハブベアリングが原因だったというケースも少なくない。BMWのフロントハブはアウターケースとハブが一体構造になっていて、そこにボールベアリングが備わる構造。作業としては新品の一体型ハブを軸受けに差し込み、新品のハブナットで締め付ければ終了と、作業性は非常に良い。
サス回りを交換したらアライメント調整
アライメントは自然にズレていってしまうので定期的な調整が重要
アライメント調整をするにあたって、よく出てくるワードが「トー」「キャンバー」「キャスター」。「トー」とはつま先という意味で、車体を真上から見た時に、進行方向に対するタイヤの角度のことを指す。ボディに対して内側をトーイン、逆に外側をトーアウトという。「キャンバー」はクルマを正面から見た時のタイヤと地面の接地角度。いわゆる「ハの字」になるのがネガティブキャンバーで、その逆がポジティブキャンバー。ネガキャン、ポジキャンと略されることが多い。「キャスター」は前輪を真横から見たときの、操舵軸(キングピン)の傾き角度のこと。リア側への傾きがプラスキャスター、フロント側への傾きがマイナスキャスターとなる。一般的にはプラスに設定されている。これらの基準値は車種によって定められているが、走行を続けていくうちに自然にズレてしまう。また、足回りの整備、ローダウン、ホイールのインチアップなどを行なった場合にも、アライメントの数値はズレるため調整が必要になるのだ。調整をせずに放置しておくと、まっすぐ走らない、タイヤの偏磨耗、ステアリングのセンターがずれる、右カーブと左カーブでクルマの動きが異なるといった症状が出るなど、危険な状態に陥ってしまうことがあるため定期的にアライメント調整をしておく必要がある。
アライメントは専用の整備機器を使って調整し、基本的には数値を戻してやることが重要。チューニングが得意なショップなら好みの味付けに調整してくれるところもある。また、アライメントを調整する場合、ブッシュやボールジョイントなど正常な状態で調整しなければならないので、まずはコンディションを整えることが第一歩である。