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BMWの走りを再生させるメンテナンス  【エンジン編】

エンジン回りのメンテナンスは多岐に渡るため、ここでは見逃しがちなポイントについて解説していく。

エンジン不調の意外な原因

目視では見つけにくいホースの亀裂

 エンジンルームにたくさんのゴムホースや樹脂製のホース、パイプなどが使われているが、これらも経年劣化が進んでいく部分。吸気系のホースは蛇腹状になっているものもあり、一見するだけでは劣化の確認が難しいが、BMWに詳しいプロショップでは劣化しやすいポイントを熟知している。例えば、エルボーとも言われるインテークベローズホースは亀裂が入りやすい部分であり、そこから外気を吸ってしまうことでエンジンチェックなどの警告灯が点灯する。症状としてもエンジン不調になることもあるので、カムシャフトセンサーなどの不具合も疑ってしまうが、じつはホースの切れが原因だったというパターンは少なくない。その他にもインテークパイプが割れてしまい、同様にエンジンチェックの警告灯が点灯するケースもある。

直6ターボモデルは高圧ポンプに注意

ターボに関連するホースやタンクの経年劣化が気になる時期

 E90/92型335iなどに搭載された直6ツインターボエンジン。このエンジンは直噴タイプで、燃焼室内で混合気を作り出す。吸気バルブからは燃焼用の空気のみを取り込み、燃料はインジェクターから噴射される。燃料の噴射量を正確に制御できるため、効率化と燃費の向上、排気ガスもクリーンにできるのがメリットで、近年のBMWには多く採用されているシステムである。インジェクターから噴射される燃料は非常に高圧になっており、通常の燃料ポンプのほかに高圧ポンプというものが装着されている。高速かつ、正確に圧力を高めるための重要なパーツだ。この高圧ポンプに不具合が起きるとアイドリング時には問題がなくても、アクセルを踏んでも吹けないといった症状が出る。圧力を高めるポンプに不具合があるので、アクセルをいくら踏んでも燃料が足りない状態に陥ってしまうというわけだ。その他、直6ターボエンジンで多いのが、吸気系のホースに亀裂が入るパターン。蛇腹になっていて見た目では判断しにくい。その他、ターボチャージャーのバキュームパイプの切れや、リザーバタンクに亀裂が入ってエンジンチェックの警告灯が点灯することもある。ターボチャージャーの本体のトラブルは多発しているわけではないが、注意が必要な部分ではある。

目視では発見しにくいバキュームパイプもトラブルの原因になりやすいポイント。

樹脂製のタンクに亀裂が入るとエンジンチェックの警告灯が点灯する。

バルブトロニックにもトラブルが出ている

エンジンチェックなど警告灯が点灯するケースが多い

 バルブトロニックの仕組みを簡単に説明すると、スロットルを廃止して、代わりに新たな吸気機構があり、従来のカムシャフトとは別に、吸気バルブのリフト量(開き量)を可変させるエキセントリックシャフトを持たせ、これを電気モーターで動かしている。吸気用カムではコントロールできない吸気バルブの動きを、電動でコントロールしているのである。

 ノンスロットル化を可能にしたことで、従来の4気筒エンジンよりも低燃費でありながら、高出力とトルクの向上が可能になり、排気ガスのクリーン化にも成功。近年では6気筒エンジンにも搭載されるほど、熟成を重ねているBMW自慢の技術である。

 このバルブトロニックのトラブルで多いのが、エキセントリックシャフトセンサーの不良。エンジン内部に装着されているため交換するにはヘッドカバーを開ける必要がある。また、このセンサーは外部にコネクターが出る構造になっており、そこからオイルが侵入してトラブルが起きることもある。

 モーターはギアがロックしたり、磨耗するケースがあるが、走行距離が多いクルマであればセンサーと同時に交換しておいた方が信頼性は高まる。同時に工賃の節約にも繋がってくるのでセットメンテを実施したい部分だ。

エキセントリックシャフトセンサーは外部に出るコネクターからオイルが侵入することも。

センサーに比べるとモーターの不良は少ないが可動部なので定期的な交換が必要になる。