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30年落ち車の信頼性回復メンテ〜重要ポイント別解説〜Part.03

ネオクラシック世代のドイル車は、ドアロックやヘッドライトの光軸調整など様々な部分に空気圧を使用していた。エンジンの負圧だけでなく、わざわざモーターで負圧を発生させて作動しているシステムも多い。このためエアチューブが張り巡らされ、これも要メンテのポイント。

エンジン不調の隠れた原因ともなりかねないエア漏れトラブル

 今のクルマならばモーターで動かしている空調のフラップやドアロック、クロージングサポート機構にヘッドライトの光軸調整といった装備類を、空気圧で動かしていたものが多かったバブル時代のドイツ車。これには吸気ポートからエンジンの負圧を取って利用したものと、わざわざ電動のモーターでポンプを作動させて負圧を発生させているものがある。

 どちらも長いチューブとゴムジョイント、そして逆流防止弁などがボディのあちこちに張り巡らされていることに違いはないが、とくに注意したいのがエンジンの負圧を利用しているシステムだ。これはチューブや作動部分などの状態をキッチリと保っておかないと、劣化した部分から二次エアを吸い込んでエンジン不調の原因となりかねない。この時代のクルマはコンピュータチェックでエラーコードを読み出すことができないので、不調の原因を探るためにあっちを換え、こっちを換え、さんざん手間と費用がかかった結果チューブからエアを吸っていた、というケースも十分に考えられるのだ。

 一方、負圧ポンプを使っているシステムは、故障した場合にユニットを分解してリペアできる場合が多い。丸ごと交換するとなると10万円以上は確実にするユニットなので、メリットは大きいだろう。また、例えばメルセデス初代CLのドアクロージングサポートなどは、セダン用と同じポンプが搭載されているので、今まで使用していなかった2つの口にチューブを差し替えることで復活するというパターンも実際にある。

●●●現在では電動モーターによって駆動されるようなメカニズムを、負圧によって作動させていたバブル時代のドイツ車。このためのエアチューブがボディのあちこちに取り回されていて、そのジョイント部分には逆流を防止するバルブも取り付けられている。こういった部分の経年劣化にも注意が必要で、外側からでも定期的にチェックしてやることが大切。

電圧制御のための抵抗は電熱線やセラミック

ICレジスターを使用した最近のものとは違い、クラシック世代のクルマは電圧制御に電熱線やセラミック抵抗などを使用している。電気エネルギーを熱に換えて発散させる基本は同じでも、周囲への影響やそのものの耐久性などに大きな違いがあるのが注意点。

電熱線と絶縁&遮熱のためのセラミック端子を組み合わせた電動ファンの制御抵抗。2スピード式のファンを低速回転させるための抵抗器だ。直接的に熱を生み出し発散させるため、抵抗そのものが劣化しやすいのはもちろん、周囲の部品にも輻射熱によって影響を与えやすい。分厚い金属製の遮熱板で覆われているのが印象的だ。

抵抗器は直接的に熱を放つためサビや接触不良が発生しやすい

 例えばブロアーファンのモーターのようにスピードをコントロールしたい場合、全速回転の電圧から段階的に抵抗を与えて電圧を落とし、回転速度を低くするというのが制御のセオリー。このために使用されるのが抵抗器だが、最近のモデルではICレジスターを使ってスマートに放熱しているのに対し、バブル時代のクルマはいかにも「抵抗器」という電熱線やセラミック抵抗を使用している。モーターの力がさほど必要ではないブロアファン程度なら、調整の段階が今のクルマよりも少ない程度でたいした違いはないが、大きな電流が流れる電動クーリングファンなどになると、抵抗器の発する大きな熱量がメンテナンスにおける注意点にもなりかねない。

 例えば、熱によって端子のサビや腐食が進む。これによって接触不良が起きファンが回らなくなり、オーバーヒートの原因となることも。また熱で配線の被覆が溶けてしまい、ボディの金属部分に触れてしまえばショートしてヒューズが飛んでしまう。抵抗器そのものの寿命も、直接的に熱を発するため長くはない。

 クラシック世代のクルマでは、こういった抵抗器がどこに使用されているのかを把握して、ターミナルや配線の状態などを時々チェックしてやる必要がある。あまりにサビが進んでいたり、セラミックのガイシが割れたりしている部分があったら、交換してやることが必要。故障しなければ気にすることもない現代のクルマとは違って、ちょっと気に掛けてやるだけでトラブルを予防できるのがこの時代の抵抗器である。