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30年落ち車の信頼性回復メンテ 鬼門となる燃料系と電気系こまめな手入れで路上ストップを防ぐ

30年落ち以上が多いクラシック世代のドイツ車。十分な手入れをされてきたものしか残っていないのが現状ではあるものの、一般的に想像する以上の部分にメンテナンスが必要になりつつある。そこで普通に乗るために、信頼性を回復させる方法について考えてみよう。

いかにタフなドイツ車でも、十分な手入れをしなければ10年前後で大がかりなトラブルが多発するようになり、その時点での車両の価値が低ければ、部品取りや廃車となってしまうというのが自然な流れ。大切に保管されて十分なメンテナンスを受けてこなければ、30年も前のクラシック世代のクルマが現存しているということ自体が難しい。

 そういった状況をくぐり抜けてきたクルマ達にも、さすがに疲れが溜まっていると思う。ゴム部品などの消耗品を交換するような、広く知られたメンテナンスだけでは不完全。年数とそれ相応の走行距離を重ねたクルマならではの、セミレストア的な手入れが必要になっている。

 そんな中でも、とりわけ重要なのが、トラブルが起きれば即路上でストップしてしまうことになる燃料系と電気系のメンテナンスだ。イベントに参加するだけのクルマならいいが、日常的に乗るのであれば最低限ココだけは新車同様のコンディションに仕上げて信頼性を回復しておきたいところ。

 まず燃料系の要となるのは燃料ポンプ。バブル時代のクルマなら最低一度は交換されているはずだが、ポンプがダメになる原因は目詰まりなど外的な要素が多い。つまり燃料タンクからホースなどのラインを含めて、全体的に洗浄や部品交換などをやっておかないと、ポンプだけを交換しても対処療法に終わってしまうわけだ。加えてインジェクターの目詰まりやエンジンルーム内の燃料系パッキン、プレッシャーレギュレーターなども交換の対象。とくに内部にゴム製のダイヤフラムを持つ部品は、長年の劣化で変質したゴムが汚れの原因となる可能性があるので、ポンプを換える前に思い切って交換してしまおう。またこの世代は金属製のタンクを使っているクルマが多いので、コンディションによっては燃料タンクも思い切って交換してしまいたい。

 電気系統は非常に複雑なため、簡単には新車状態に仕上がらない。キャブレター時代の旧車ならば配線を全部引き直してもたいしたことはないが、バブル時代のクルマはそんなに簡単な構造ではないので、これはさすがに非現実的。交換よりは現在の配線類の信頼性をアップする方向性で考えた方がいい。とりわけ重要なのはアースの確保だ。クルマの配線は作用部分からバッテリーまでの電流の戻り配線に金属製の車体を利用しているが、配線と車体との接続部分は異なる金属が触れていることで発生する電蝕の影響を受け錆びが発生しやすい。このようなアースポイントを手入れすることで、電気の流れをスムーズにしてトラブルが発生しにくい環境を作ることができる。

 またクラシック世代のクルマに多いもう一つの電気系トラブルが、ハンダにクラックが入ってしまうというもの。当時のリレー類は現在のコンピュータ類よりも大作りなため、こういったトラブルが出やすいようだ。これは目視で点検して怪しい部分はハンダを付け直すことで対策することができる。

燃料噴射の状態によっては、インテークマニフォールドにビッシリと汚れが付着しているような状況も考えれる。エンジン内部も要メンテ。

アースポイントは電気の流れをスムーズに整える上で非常に重要な部分。流れが狭くなった状態では、無理な抵抗が生まれてしまう。

リレー類のハンダクラックは、バブル時代のクルマに非常に多いトラブル。目視で点検してハンダを付け直せば復活するケースが多い。

ネオクラシックの現状チェックリスト

□ウインカーに連動してインパネ照明がチカチカ

ウインカーを出すと、それに連動してインパネのイルミネーションがチカチカとあおってしまうのは、電気系統が劣化してきている一つのサイン。他にもリアのコンビネーションランプで、ウインカーとブレーキランプが交互に点滅してしまうのはアース不良が原因。

ワイパーやパワーウインドーの動きが遅くなった?

ワイパーやパワーウインドー、電動サンルーフなどは、レギュレーターに汚れが溜まると作動抵抗が増して動きが遅くなってしまう。全体的に抵抗が多いクルマは保管状態があまり良くなかったことが考えられる。故障してしまう前に清掃やグリースアップなどを。

始動後にアクセルを吹かさないと安定しない

エンジンをかけた後、アクセルを踏んでやらないと回転が安定しない、アクセルを踏んでも回転がバラついているような場合は、アイドルアップ機構や点火系などに問題がある可能性が高く、そのまま使っているとエンジン内部に大きなダメージを与えることも。

走行中にアクセルオフで音が出ていないか?

走行中にアクセルを離すとリアの方から「ウイーン」という音が出ていたら、デフをチェックする必要あり。丈夫なデフもさすがにバックラッシュ調整などのメンテナンスが必要な時期になっているはず。オイル漏れがあればもちろんだが、そうでなくてもそろそろオーバーホールを考えたいところ。

ステアリングを切るとキューっとベルトが鳴く

ステアリングを据え切りした時などにベルトが鳴くのは、ポンプにかかる負荷が大きくなっている、ベルトのテンションが合っていない、ベルトそのものが劣化しているなど様々な理由が考えられる症状。いずれにしても早めに点検することが大切な状況だ。

暑い時期になると車内にガソリンのにおいがする

燃料タンクから発生した気化ガスを燃焼させるためのラインやバルブなどが壊れている可能性がある。通常はあまりメンテナンスされるような部分ではないので、一度点検してみる必要があるだろう。あまりひどいようならば、燃料漏れの可能性もある。

ドアの下やフェンダーの裏にサビは出ていない?

サビに強いドイツ車も、保管状態によってはさすがに危険な頃。ドア下の水抜き穴部分やフェンダー裏の汚れが溜まりやすい箇所などを集中的にチェックしておこう。塗装面から見ても何も問題ないのに、ドアの中などから進攻してくるのがサビの怖いところだ。