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想像を超えるゲレンデヴァーゲン『大フェニックス化計画』

オリジナルを維持することもいいが、オーナーならば気持ちよく走らせたいと思うのが本音。 手に入らない部品に悩むより、現役でキビキビ走れるGクラスを作る株式会社くさやまでの試みを聞いてみた。

 Gクラスの最近のトレンドの一つに、W463をクラシカルなW460ルックにする傾向が見られる。比較的新しい車両がベースなので、見た目の外装が変わるだけで、装備や走る性能は現行車に近い快適な仕様で乗れるのが実に現実的だ。

 逆にクラシック世代を迎える、W460や1990年代半ばまでのW463は、徐々に手に入れられる部品供給が厳しい状況を迎えている。見た目は気に入っているのだが、買ってみて走る性能が遅いと感じたり、アクセルを重く感じて乗るのが億劫になる感覚の方までいるという。

 ならば、比較的新しいエンジンに載せ替えるか、今載っているエンジンのマネージメントをフルコンピュータ化するというアプローチがある。制御を緻密にしてあげることでパワーが少し上がり、燃費も改善傾向に向かう。何より、パーツが現在の汎用パーツを使うので入手が容易となるのも見逃せない。

 株式会社くさやまでは、300GEに積まれている直列6気筒SOHCエンジンから、G36 AMGにも積まれている直列6気筒DOHC3.6ℓに載せ替え、点火コイルの方式を入手困難なディストロビューターから汎用コンピューターの「LINK」に換えて燃料や点火の制御をするやり方と、W460 230GEに積まれているエンジンのディストロビューターを取り、代わりに各気筒ごとにダイレクトイグニッションのプラグコードに換えて、こちらも「LINK」にて制御するふた通りの方法だ。

 どちらも横に乗せていただいたが、エンジン始動の良さからのスムーズな吹け上がりは実に滑らかで、違和感は微塵も感じなかった。トランスミッションはエンジンに合わせて、従来の4ATに加え、5AT、さらには5MTや6MTもチョイス可能なので、興味のある方は是非ともご相談されたし。

地道な作業の蓄積が希望通りのゲレンデヴァーゲンへと近づく

M104型3.6LℓAMGエンジン。移設したオルタネーターが前側のエキマニに干渉するため、V12気筒用のエキマニに交換している。

グローブボックス奥に鎮座するコンピュータのLINK.。この手のフルコンピュータの中では安価で、かつ高性能と評判が良い。

撤去したディストロビューターの代わりに、プラグに点火時期を伝えるダイレクトイグニション式に変更している。

W460とW463ではミッションとトランスファーを繋ぐプロペラシャフトの両端の作りが違うので、それぞれフランジを切断して合う形で溶接して作るのだが、これは専門の工場に依頼する。

エンジン制御はコンピュータによるオリジナルデータでの制御となり、スロットルバルブも汎用のボッシュの電子スロットルを使用する。

エンジン換装に伴い、様々なスペースの弊害が出ることがある。元々クランクプーリーの向かって右にあったオルタネーターがフレームに当たってしまうので、左に移設。その際、新たにエンジンブロックに取り付けるブラケットを同じメルセデス製のエンジンパーツからCADデータを読み取り、3Dプリンターで製作。こういった地道な積み重ねが必要となるのだ。

ゲレンデ以外にも、W123やW201など様々なヤングクラシック世代のメルセデスのメンテナンスに深く関わってきた松本代表。

【取材協力】株式会社くさやま

●京都府福知山市字長田2761-8

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