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2022.04.13

トラブルは自力で回避!緊急脱出マニュアル①

 国産車にしか乗ったことがない人が思うほど、ドイツ車は頻繁には壊れない。しかし機械である以上、いつ壊れても不思議ではない。ところがトラブルが起きたとしても、案外簡単に直ってしまうことが多いというのもドイツ車なのだ。そこでここでは、緊急時に知っておくと役立つ有意義なトラブル解決方法を紹介しよう。

メンテが万全でも機械である以上いつ壊れても不思議ではない!

 「緊急脱出マニュアル」というショッキングなタイトルのこの企画。しかし、決してドイツ車にトラブルが多いということを暗示しているのではない。近年、ドイツ車が突然動かなくなるというトラブルは、実は減少傾向にある。
 愛車が突然走行できなくなるという経験を、過去に一度や二度している人は多いだろう。しかし、故障で動けないという話は最近めっきり聞かなくなっている。信頼性の高い高年式モデルへドイツ車の需要がシフトしていることや、やや古めのドイツ車の場合は、熱心にメンテナンスをしているユーザーが増えていることなどが、その理由ではないかと推測する。
 しかし、機械である以上、クルマはいつ壊れても不思議ではないことも事実。突然、走行不能に陥ることも十分有り得る。そんな、本来なら誰もが体験したくはない不測の事態における自力脱出方法を、ここではまとめてみた。
 いわゆる「有事」に遭遇した場合の一般的な対処法は、JAFなどのロードサービスに連絡をすることだろう。ところが、休日や遠方でトラブルに遭った場合、救援車が来るまでに長い待ち時間を要することが多い。それでいながら、修理時間はあっと言う間、ということもよくあるのだ。最低限の知識とアイテムを身に着けていれば、自分でトラブルを解決できることは多い。それができれば同乗者からは尊敬され、ピンチが一気に逆転、オトコの株を上げる千載一遇のチャンスになる。緊急脱出の方法を知ってオトコを上げるベシ!

ちょっとした知識と道具があれば、とりあえず自宅や修理工場まで自走できる状態にすることが可能というケースも実は少なくない。
故障で走行不能に陥るという状況は、滅多に遭遇するものではない。しかしいざという時に自分で解決できれば、これほど便利なことはない。

意外にすぐ直せることもある!? エンジン不動時のトラブルシューティング

 さて、数ある故障の中でも、最も精神的に大きなダメージを受けるものと言えば、エンジンがかからないという状況だろう。これを解決するためには、原因探求という作業が必要で、これが一番難しいことでもある。なぜなら、エンジンがかからなくなる原因は一つではないからだ。
 ここで重要になる3つの要素が、操作系と電気系と燃料系だ。
 操作系とは、ステアリングロックやシフトポジションなど、セーフティ機構が働いていることに気が付かず、エンジン始動ができない場合。つまり故障ではない。エンジンが始動しないすべての場合において、この操作系の確認を最初に行なうのがセオリーだ。
 次に電気系。バッテリーや点火系など、エンジン始動不可という故障において、最も多い原因がこれ。セルモーターに勢いが無い、ライト類が暗い、タコメーターの針だけ動くという状況は、バッテリー上がりの可能性が高い。セルは回るが始動しないという状況では、点火系や燃料系にトラブルがある可能性が高い。この中で、目視で確認しやすいのがプラグコードやディスビのリークトラブルで、火花が見えることがある。
 燃料系のトラブルは、燃料ポンプリレーを抜き差しするか部品を交換すること、燃料ポンプを叩くこと以外に、簡単な解決方法はない。しかし、この2つで解決できる場合が非常に多いというのも事実だ。

メーカー別ネオクラ系ドイツ車 トラブルポイントの傾向と対策

メルセデス・ベンツの場合

・バッテリーの劣化

消耗品であるバッテリーは、全ての車種に共通するトラブルポイント。バッテリーの劣化のみならず、ターミナルの緩みなどでもエンジンが始動しないことがある。

・燃料ポンプやO.V.Pリレーの劣化

燃料ポンプリレーやオーバーボルテージプロテクションリレーは、定番のトラブルポイント。理想は予備をトランクなどに積んで置き、トラブル時に交換してしまうことだ。

・プラグコードやイグナイターの劣化

プラグコードとディスビキャップは、走行5万kmごとに交換したいパーツ。そして、古いパーツを予備として持っていると安心。イグナイタが壊れた場合は、とりあえず叩いてみよう。

ネオクラ系メルセデスで多いトラブルポイントはリレー類。パーツ交換をしなくとも、抜き差しするだけで一時的に復活することもある。
BMWの場合

・バッテリーの劣化

バッテリーの劣化のほかに、メインとなるアースケーブルの劣化でもエンジンの始動ができなくなることがある。

・プラグコードやイグナイターの劣化

プラグコードやディスビは他のドイツ車と同様に定期的に交換し、古いパーツをストックしておくと安心。加えて、イグナイターも比較的トラブルが多いので、BMWの場合はこれも持っておくと良いだろう。

・エレクトリックパーツの劣化

エレクトリックパーツを古くから採用していたBMWは、リレーやヒューズの劣化でエンジンがかからなくなることもある。抜き差ししてみるか、予備パーツのストックが有効。

BMWでエンジンが始動しない原因は、その多くがバッテリーかリレーの劣化。すぐに直ってしまう場合が多い。
VW・アウディの場合

・バッテリーの劣化

VW&アウディに限った話ではないが、さっきまで何ともなかったのに突然上がるのが輸入車のバッテリー。ジャンプコードで電気をもらう場合には、太めのケーブルで繋いだままの状態を長めに維持するとかかりやすくなる。

・プラグコード&ディスビの劣化

プラグコードとディスビは、走行5万kmごとに交換しておくのがベストだ。

・吸気ダクトの亀裂

樹脂の吸気ダクトに亀裂が生じ、そこからエアを吸い込むことが原因で、エンジンがかかりにくくなることが多い。アイドリング不調の場合も、吸気ダクトの亀裂が原因であることが多い。

シンプルな作りのVWとアウディ系は、ごく一般的なパーツの劣化が原因で、エンジンがかからなくなることが多い。
ポルシェの場合

・バッテリー&メインケーブルの劣化

911のバッテリーはフロントに収まるため、熱の影響を受けにくいこともあって、比較的劣化しにくい。ただし、エンジン本体までの長さが必要なケーブルが劣化して通電性が悪くなることも。太いジャンプケーブルなどで電気をもらえば、再始動できる可能性は高い。

・ベルト類の劣化

ツインのディスビを回す小さなベルトが切れるとエンジンはかからない。よって、この小さなベルトの予備パーツを携帯しておくと安心。空冷ファンのベルトが切れてもエンジンはかかるが、オーバーヒートを起こす可能性が非常に高い。点火系のパーツは交換作業が困難なので、トラブル前の予防的な交換が最善策だ。

911系の場合、エンジンが始動しないというトラブルは少ない。ただし、トラブルが起きるとその場では解決しにくい場合が多い。