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ターボ搭載のドイツ車が急増中!ターボチャージャーリビルトの現場

 現在、多くのドイツ車で採用している直噴ターボエンジン。このターボに不具合が発生する事例があり、通常はまるごと交換が基本。だが、これをリーズナブルに修理してくれる工場があるのだ。

訪問したのはコチラのファクトリー「ターボテクノサービス」

輸入車だけではなく、バスやトラック、国産の軽自動車などのターボリビルトを手掛ける埼玉県桶川市にあるターボテクノサービスの工場。広い敷地内には大きな工場のほか、交流会や技術説明の場であるサロンを併設している。

トラックやバスのターボも直す
スペシャリスト集団

 現代のドイツ車に搭載されているエンジンの多くは、排気量を小さくして、直噴ユニットにターボをドッキングさせるのが主流になりつつある。環境への配慮や燃費の向上は現代のクルマにとって至上命題。BMWもメルセデス・ベンツもフォルクスワーゲンも、直噴ターボをメインユニットとしてラインナップに加えるようになった。国産車においても、軽自動車などではターボを搭載したエンジンが昔から採用されてきた。排気量が小さくても効率良くパワーを得るためには、ターボを搭載するのが簡単な方法だからだろう。
 ここで紹介するターボテクノサービスは、ターボチャージャーのリビルトを得意とする会社。なんと今回は、特別に工場内を見学できることになったのだ。本誌の取材チームは日々様々な修理の現場に出向いているが、これだけ大規模なリビルト工場を見る機会はそう多くはない。まさに、「おとなの社会科見学」である。
 工場内の様子を紹介する前に、ターボテクノサービスの母体であるTTSグループについて簡単に説明しておこう。同社はバスやトラックに搭載されるターボのリビルトを手掛けており、業界ではよく知られた存在。バスやトラックは普通車に比べて走行距離がはるかに多く、エンジンを動かしている時間も長い。しかも大型トラックに搭載されるVGS(可変ノズル)ターボは高出力を実現できる一方で弱点もあるようで、トラブルが起きて新品交換となるケースが多かったという。そこで、TTSグループではVGSターボのリビルトに着手。今では多くのVGSターボを修理できる体制が整っている。
 当然こうした技術は、輸入車のターボリビルトも可能にする。ボルグワーナーやギャレットといったターボメーカーとのパイプを持つ同社では、細かな部品まで入手できるのだ。
 工場内に入ると、多くのターボチャージャーが修理を待っていた。最初の工程で検品し、どんなトラブルだったのかを確認。ひとつひとつのターボチャージャーはバーコードで管理され、いつ入庫し、どんな症状が出たかなど、細かく確認できるようになっている。
 リビルト作業の基本は、分解、洗浄、消耗品の交換、正しい組み付けだが、これらが製造ラインになっており、各部署のスタッフが手作業で修理を行なっている。分解するときには損傷させないよう慎重にバラし、洗浄工程においては数種類の薬剤に漬け込んで汚れを除去してサンドブラスターで仕上げる。これも素材に合わせて、ガラス、重曹、ダイヤモンドなどを使い分けている。
 前述したように、同社はターボメーカーとのパイプを持つため部品については揃えられるのだが、オリジナルの対策品を使ってトラブルを再発させない工夫もしている。材料分析をして、純正とほぼ同じものを作り上げていくのだ。こうしたことができるのも高い技術がある裏付けだといえる。単に部品を交換するだけではなく、熟練のスタッフによる加工や対策品を使用することで、より信頼性が高いリビルト品ができる。
 ターボチャージャーの不具合で多いのは、インペラと呼ばれる羽の部分とシャフトからなる回転ローター。インペラが破損してしまったり、回転バランスがおかしくなることでトラブルが発生する。ターボテクノサービスではインペラ部分に鍛造アルミの対策品を使用し、シャフトの軸受けにもオリジナルの加工を施す。そしてターボメーカーと同様のテスターを使って正常な状態に回復させるのである。構成部品を完璧に仕上げても組み付けが悪くては意味がない。ゴミなどが混入しない清潔な専用ルームで1つずつ丁寧に組み上げられていくのだ。こうした工程を経て完成したリビルト品が、ユーザーの元へ届けられるのである。
 BMWではターボのトラブルが発生している。通常ではエキマニを含めてまるごと交換となり費用は約40万円。だが、同社のリビルト品ならその半額くらいで修理できるのだ。これはBMWに限った話ではなく、ターボを搭載するドイツ車にとっては朗報だといえる。
 リビルト作業はコア(元々装着されたいたもの)を返却する必要があるので、馴染みの修理工場やディーラーを通じて依頼するのが簡単な方法だ。

ドイツ車に使われているターボチャージャー
Mercedes-Benz
ギャレット製
Volkswagen
ボルグワーナー製

直噴+ターボが主流になってきている

近年のドイツ車はダウンサイジングと環境や燃費への配慮から排気量が小さいエンジンが採用されることが多く、ターボチャージャーによって少ない排気量で必要なパワーを得ている。BMWといえば直6エンジンが代名詞だったが、現行モデルでは直4ターボがメインユニット。エンジンも直噴タイプとなっている。ターボチャージャーには様々なメーカーがあり車種や年式によっても変わってくるのだが、BMWやフォルクスワーゲンはボルグワーナー製が多い。この傾向はメルセデス・ベンツでも同様であり、ターボチャージャーのメーカーとしてはギャレット製を採用するケースが多い。

高精度の設備と高い技術力がクオリティの高さに繋がっている

工場に届いたターボチャージャーは検品し、どんな症状であるかを確認。その1つ1つがバーコードで管理されている。
症状が確認できたら、分解作業に入る。ケースなどは再使用するため慎重にバラしていく。損傷させないことが重要になる。
長期に渡って使用したターボチャージャーはオイルなどが付着して汚れている。これを薬剤を使ってキレイに洗浄する。
しっかりと脱脂した後、薬剤に漬け込むことで表面に付いた汚れを除去。その後、様々なブラストマシンを使ってキレイに再生する。
組み立て工程で重要なのはゴミが混入しないようにすること。オイルに浸してから取り付ける。
右は真っ二つに割れてしまったインペラ。ターボテクノサービスでは鍛造アルミの対策品を使用する。
トラブルが多いインペラとシャフトからなる回転ローター。これを確実に再生することが重要。
新たにシャフト部分の圧入を行なっているところ。熟練のスタッフによる確実な作業により、新品同等のターボチャージャーが完成する。

充実した設備とこだわりのリビルト方法

工場を見学させてもらって驚いたのが、テスターなどの設備が充実していること。例えば、インペラと呼ばれる羽の部分とシャフトからなる回転ローターが規定のバランスで回っているかを調べるテスターは、サイズに合わせて2種類設置。また、バランスが悪いものについては熟練のスタッフが手作業で加工して調整しているなど非常に手間がかかっているのだ。オリジナルの対策品も用意。

シャフトが正常に回るかどうかを確認できるテスター。非常に高価なものだ。
テストが開始されるとモニターにシャフトのバランス状態が表示される。OKと出れば問題なし。
ターボテクノサービスでは、劣化しやすい部分を補強したオリジナルの対策品を使用している。
リビルト費用は純正品の約半額とリーズナブル!
写真はBMW用のターボチャージャーで、基本的にはエキゾーストマニホールドを含めてまるごと交換となる。価格も高価で純正で40万円以上となるケースが多い。だが、ターボテクノサービスのリビルト品はその半額くらい修理できるのである。
 
ターボテクノサービスはTTSグループの一部門であり、輸入車のターボリビルトなどを担当。コアと引き換えになるので、詳細については問い合わせを。