TOP > 記事 > 【 ドイツ車世代別メンテ/若年世代 (新車登録~10年未満)/vol.07 最重要!! ブレーキのメンテ 】

【 ドイツ車世代別メンテ/若年世代 (新車登録~10年未満)/vol.07 最重要!! ブレーキのメンテ 】

クルマが安全に止まるために欠かせないのがブレーキ。ブレーキパッド、フルード、ローター、ホースなどを確実にメンテしておくことがユーザーの義務でもある。維持費の節約としてブレーキ関係のメンテを怠るのは絶対にNGだ。

 

ブレーキダストが多く汚れやすいのは
高い制動力に対する代償と考えるべき

Parts Data

✔このパーツの役割は?

パッドだけでなくローターも削る

 ブレーキキャリパーのピストンが押し出されることによって、パッドがローターを押し付ける。これによってブレーキがかかるのだ。ドイツ車の場合、パッドだけでなくローターも削り、その摩擦力によって高い制動力を発揮している。ブレーキフルードは油圧を生み出す作動油である。

✔劣化するとどんな症状が出る?

 ブレーキパッドの残量が減ってくるとセンサーが感知して警告灯を点灯させる。ブレーキローターは雨などの影響によりサビが発生しやすい。段付きサビにより異音が出ることもある。

✔長持ちの秘訣は?

汚れやサビを落としておくことが大事

 ブレーキ関係のパーツは重要保安部品なので、交換サイクルを守ってきっちりとメンテナンスしておくことが大前提だが、ローターについては研磨することである程度寿命を延ばせる。また、ブレーキ回りの汚れやサビをキレイに落としておくことも長持ちさせるためには重要だ。

 

パッドとローターを削って
高い制動力を得ている

 ブレーキのメンテナンスは基本的なことなので知らない人はいないと思うが、それぞれの役割や構造を知っておくとなぜ交換が必要なのかがよく分かる。
 まずブレーキ系統がどのように作動してクルマを止めているのかというと、ブレーキペダルを踏むことで、マスターシリンダーによって押し出されたブレーキフルードが、ブレーキキャリパーのピストンを押し出して、ブレーキパッドがローターを押し付けることによる摩擦の力でクルマを止める。ドイツ車に限らず輸入車の場合は、ブレーキパッドだけではなくローターも削りながら高い制動力を得ているのである。
 そんなブレーキ系統で最初に手を入れる部分と言えば、消耗品であるブレーキパッドとローターの交換だろう。多くのユーザーがブレーキダストがひどくてホイールが汚れやすいと口にするが、それは高い制動力に対する代償と考えるべきだ。
 ブレーキパッドの材料として使用されるのは、アラミド繊維、スチール繊維、非鉄金属繊維、鉱物系繊維、セラミック繊維など。これらを「基材」と呼ばれるベースとしている。一般的には「レジン系」と呼ばれるアスベストの代替素材をフェノール樹脂で焼き固めた製法が使用されているが、一部のレーシングカーなどは耐熱性能が非常に高い焼結材を用いている。
 ダストの原因となるのは、スチール系繊維などの固くローターを削ってしまう材料で、これを多く含むほど制動力が高くフェードに強い特性となる。高速からのフルブレーキングといった状況でも、停止状態まで最高レベルの安定した制動力を発揮できるよう、純正のパッドにも高いブレーキ性能を与えているドイツ車。ダストが多いのはその代償と言うことができる。例えば、汚れの少ない社外のパッドはそのパフォーマンスを犠牲にして、国産車に近い成分で構成されているということになるので、ある程度の性能低下を覚悟する必要があるわけだ。
 ブレーキパッドにはセンサーが備わっており規定よりも減ってくると警告灯が点灯する。もっとも、1年点検や車検時に交換することが多いので放置することはないと思うが、構造から考えてみても定期的に交換しなければならないのが分かる。

ブレーキパッドは残量がなくなると警告灯が点灯するが、ギリギリまで使い切るよりは期間で区切って交換していく方が安心だ。
ブレーキ関係のメンテをするときには、きっちりとサビを落として清掃したら専用のグリースを塗っておくことも大切なメンテナンスである。

ブレーキパッド交換の際にはディスクローターの状態もチェックしておくこと。パッド交換2回に対して1回が交換の目安となっている。

ディスクローターを見るとサビがひどい状態だった。段付きサビになると異音の原因にもなるので、こんな時は研磨しておくこと。

ブレーキフルードは
吸湿性が高いのが弱点

 ブレーキローターは、パッドとともに削れていくので、パッド2回の交換に対して1回の交換サイクルとなる。注意したいのは、雨などによってブレーキローターが錆びてしまうこと。ブレーキパッドが密着する部分は錆びの進行が遅くなるため、ローター表面が段付き錆びとなってしまうのだ。ひどくなってくるとブレーキを踏んだときに異音を発生させてしまう。錆びが発生したローターは研磨しておくことである程度寿命を延ばすこともできる。もちろん減ったローターを使い続けるのは危険なので、定期的にプロに点検してもらって適切な時期に交換するよう心がけたい。
 油圧経路となるブレーキラインのホースも消耗品だ。劣化したブレーキホースは硬化してしまい、亀裂が入ってしまうこともある。劣化したホースをカットしてみると、ホース自体は何重にもなっていてカッターを使って切るにも苦労するほど頑丈にできている。それだけ高い油圧がホースにはかかっているということなのだろう。そのため劣化したホースを使い続けるとホースの一部が膨らんでしまうこともあるのだ。ホースからブレーキフルードが漏れ出せば非常に危険なので、ここも定期的に点検しておかなければならない。
 見逃しがちなのが、ブレーキフルード。これは2年、または1年に一回交換するのが基本だ。
 ブレーキフルードは吸湿性の高い合成油を使用しており、主成分はグリコールエーテル。これは非常に高い沸点と低温時でも高い流動性を持っている。つまり、高温になっても沸騰しにくく、かつ低温でも水のようにサラサラとしているのが特徴だ。もしフルードを水とするなら高温になれば沸騰してしまうし、真冬には凍結してしまう。エンジンオイルのようなものであれば粘度が高すぎて適切な制動力を発揮できない。低温でも高温でも一定の油圧を生み出せるのが、このグリコールエーテルなのである。
 しかし、吸湿性が高いのが弱点。長期間使用したブレーキフルードは吸湿性が高いことから徐々に劣化が進む。また、金属パイプを多用するブレーキラインは劣化したフルードを使い続けることで錆びが発生する。キャリパー本体やピストンが錆びに侵され作動不良を起こす可能性が高くなるのだ。
 定期的に交換されているブレーキフルードはオリーブオイルのような色をしているが、劣化したオイルは真っ黒になってしまう。長くこの状態を放置してきたクルマは、ブレーキラインも汚れているため何度もフラッシングをしないとキレイにならなかったという話を、修理工場で聞いたことがある。
 ブレーキフルードを定期的に交換しなければならないのは、こうした理由があるからだ。ブレーキフルードにはDOT3、DOT4といったようにクルマによって指定の規格があるので、必ず指定以上のものを使うこと。グレードが異なるフルードを混ぜると、グレードが低い方の性能になってしまうので混ぜるのはNGだ。

ブレーキホースは経年劣化により硬化してしまうので定期的な交換が必要。亀裂が入ってフルードが漏れ出したら危険だ。
ブレーキホースをカッターを使ってカットしてみた。カットするのが大変なほど頑丈だが、それだけ高い油圧がかかっているということだ。
ブレーキフルードの量や色は定期的にチェックしておくこと。写真のように真っ黒になっているのは劣化がひどい状態だ。
ブレーキフルードのオイル缶には混ぜて使ってはいけないとの注意書きがある。ブレーキフルードを継ぎ足すのはNGである。

 

DOTって何のこと?
ブレーキフルードの規格

DOTに続く数字が高いほど高性能になる

ブレーキフルードのグレードの表記法として一般的に採用されているのが「DOT規格」だ。新品時のドライ沸点や吸水状態でのウェット沸点などから、DOT3~DOT5とランク分けされ、数字が増えるほどに高性能になる。DOT3では「ドライ沸点:205℃以上、ウェット沸点:140℃以上」、「DOT4ではドライ沸点:230℃以上、ウェット沸点:155℃以上」、DOT5は「ドライ沸点:260℃以上、ウェット沸点:180℃以上」と規定されている。クルマによって指定のグレードがあるので、それ以上のものを使うこと。ちなみにDOT5になると、主成分にシリコーンが混入されるものも増えるが、吸湿性が高いことは下位グレードと同じ。むしろ、かつてはグレードが高いほど吸湿性が高く耐久性に乏しい傾向にあったが、今はほぼ変わらない状況になっている。

ブレーキフルードにはDOT3~5といったようにグレード分けがされている。数字が増えるほどに高性能になる。
アップグレードとして高性能フルードを試してみるのも面白い。DOT5は非常に高い沸点と、どんな状況でもペダルタッチの変化が少ないことなどが魅力。カチッとしたフィールが好きな人にはお勧め。