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【 ドイツ車世代別メンテ/若年世代 (新車登録~10年未満)/vol.06 パワーウインドーの作動不良 】

ドイツ車に限らず、輸入車の定番トラブルとなっているのがパワーウインドーの作動不良。長く乗っている人なら一度は経験しているトラブルだろう。ここではその構造を見ながら、少しでも寿命を延ばす方法を解説していこう。

 

パワーウインドーの動きに異常を感じたら
早めに修理工場で点検してもらおう

Parts Data

このパーツの役割は?

電気的に窓を開閉させる快適装備

 昇降機構であるレギュレータを使って、電気的に窓の開閉を行なうのがパワーウインドー。昔は高級車や上級グレードのみに搭載される快適装備だったが、現在はほとんどのクルマに採用されている。レギューレータにはワイヤー式とパンタグラフ式の2種類がある。

壊れるとどんな症状が出る?

 レギュレータが不良である場合、ワイヤー式は窓が落ちてしまうことが多いが、パンタグラフ式はドア内に落ちてしまうケースは少ない。内部のギアが欠けてしまうこともある。

長持ちの秘訣は?

スイッチの連打や同時押しはNG

 レギュレータやモーターへの負担を軽減することが長持ちさせるポイント。ワンタッチ機構が付く場合は、上昇や降下の途中で逆の操作をするとワイヤーやギアへの負担が大きい。一度停止させてから逆方向のスイッチを押すこと。連打したり、複数のスイッチの同時押しもNGだ。

 

レギュレータには
2種類のタイプがある

 今やほとんどのクルマに採用されている快適装備であるパワーウインドー。輸入車の場合、構造自体は国産車とあまり変わらないにも関わらずトラブルの頻度が高い。ドイツ車においても、長く乗っている人なら一度は経験するトラブルと言っても過言ではないだろう。10年以上も乗っていればパワーウインドーが壊れるのも仕方ないと思えるが、まだ新車から3年落ちといった高年式車でもトラブルが少なくないことから、国産車と比べると明らかに弱点と考えられる部分だ。
 パワーウインドーには2種類のタイプがある。現在主流なのがワイヤー式で、モーターでワイヤーを引っ張り、レールに取り付けたスライドピースを上下に駆動させている。軽量コンパクトで狭いドア内部のスペースに取り付けやすく、コストも安いことが特長だ。側面衝突に対する安全性確保のため、ドア内部に太いサイドインパクトバーを内蔵するクルマが多く、スペース的な制約の面でもワイヤー式を採用するクルマは多い。
 もうひとつが、パンタグラフ式と呼ばれるもので、古めのメルセデス・ベンツなど一部のモデルに使用されている昔からの方式。丈夫なレールでガラスを支持しているので安定性が高いのが利点。反面、故障した場合は部品の価格が高いのがデメリットになってしまう。
 どちらも窓ガラスを固定してドアの内部に取り付けられる昇降機構のレギュレータと、これを駆動するモーター部に分けられる。基本的にはこの2つで構成されているので、故障が起きるのはどちらか。希に電気系統のリレーやスイッチが壊れて動かなくなることもあるが、これは他の部品に差し替えたり、高年式車ならばテスターのエラーコードで比較的簡単に診断が可能。パワーウインドーの修理と言えば、レギュレータかモーターなのだ。
 では実際にレギューレータやモーターにどんなトラブルが起きるのか。モーターはドア内部に水が入ってサビ付いてしまったり、モーターの動力をレギュレータに伝えるためのギアが割れてしまうというパターンが多くなっている。
 パンタグラフ式のレギュレータの場合、ガラスは下側からしっかりとレールで支持されているため、安定性が高くレギュレータが故障してもドア内に落ちてしまうというケースはあまりない。
 一方、ワイヤー式の場合は左右にあるレールの上をガラスを乗せたスライドピースが上下方向に動くという構造で、ガラスは点で支えられているため、故障すると窓が脱落してしまい、閉められなくなるケースが多い状況になっている。

現在主流となっているワイヤー式のレギュレータ。樹脂製のスライドピースによって窓を支える構造になっている。
古めのメルセデスなど一部のクルマに採用されるパンタグラフ式のレギューレータ。頑丈なのがメリットだが部品代が高い。
閉まりきった位置のギア山が削れてしまったレギュレータ。パワーウインドーに備わるモーターの力は想像以上に強いのだ。
ドア内部に溜まった汚れの除去や防水シートの張り替えなど、パワーウインドーの修理は細やかな気づかいが必要となる。
 

ウインドーの水切りゴムが
抵抗になっていることも

 パワーウインドーのトラブルには予兆が現れるケースも少なくない。例えば、作動中に「ギュー」と擦れるような音がするようになったら、周囲を支えているゴムの劣化が怪しい。抵抗が増しているので、そのまま使い続けるとレギュレータやモーターのトラブルに発展してしまう。窓を半開にして走っている時に、ガラスがグラグラしている感じがしたら、ガラスを支持しているスライドピースなどが緩んできている可能性が高く、レールから外れかけていることもある。
 また、ウインドーが上昇している時に、前側や後ろ側だけが持ち上がって斜めになっているような状態になっていたらかなり危険だ。早急に点検しないと、窓が落ちてしまうこともある。
 パワーウインドーにトラブルが起きると防犯上も困ったもので、さらに雨が降っていたり寒い時だと最悪。ワイヤー式のパワーウインドーでは動きに異常を感じたら、最悪の状態になってしまう前にメンテナンスをしておくことが重要だ。レギュレータの構造によっては、スライドピース部分だけを交換すれば済んでしまうこともある。
 このように、輸入車の弱点とも言えるパワーウインドーのトラブルなのだが、扱い方次第で寿命を延ばすことは可能だ。レギュレータに負担をかける使い方というのは、スイッチを連打したり急速な逆回転を強いるような操作。とくにワンタッチ機構が付いている場合は、上昇や降下の動作中に逆のスイッチ操作をすると、ワイヤーやギアに大きな負荷がかかってしまう。一度停止の操作をしてから、逆方向へスイッチを押すようにしたい。また複数のスイッチを同時に押すと、複数のモーターが同時に作動してパワーウインドーの回路に大きな電流が流れる。もし抵抗が大きくなって負荷が増えた状態だと過電流でヒューズが飛んだりすることもあるので、操作は一箇所ずつが基本。普段動かさない窓ほど壊れやすいという傾向もあるので、後ろの窓もたまには動かすようにしたい。ウインドーに備わる水切りゴムも劣化して硬化すると抵抗の原因になる。雨水が浸入するとサビの原因にもなるので定期的に交換しておくことも重要なメンテナンスだ。
 スイッチなどの扱い方というのはクセのようなもので、自分では無意識にやっていることが多い。だが、ここで紹介したちょっとしたことを意識するだけで、パワーウインドーの寿命が延びるということは知っておいてほしい。それでも出先でトラブルが発生してしまったら、無理に動かさずに早急に修理工場で見てもらうようにしよう。

ワイヤー式は比較的作業しやすいが、パンタグラフ式は無理な力が加わると歪んでしまうことも。メカニックの経験と技術が重要。
レール部分に備わる樹脂パーツが破損して窓が落ちてしまうケースが多い。扱い方に気をつけることが唯一の予防策である。
ウインドーの水切りゴムが劣化して硬化してしまうと抵抗になるのでモーターやレギュレータへの負担が大きくなってしまう。
スイッチを連打したり、複数のスイッチを同時に押すとモーターへの負担が大きい。また、スイッチ不良によってトラブルが起きることも。
 

出先でパワーウインドーに
トラブルが起きた時の対処方法

完全に窓が落ちていなければ
ガムテープなどで固定

 トラブルの予兆を見逃してしまったり、突然レギュレータがダメになるということもある。そんな時のための対処方法を知っておくと便利だ。まず大前提としてパワーウインドーが動かないからといってスイッチを連打してはいけない。窓が落ちた場合は、端の部分でもガラスがドアから飛び出しているなら、これを摘んで引き上げガムテープでドアのサッシ部分に固定する。完全に入り込んでしまった場合の対処方法は2つ。内張りを外してガラスを押し上げてガムテープで固定するか、半透明のアクリル板などで応急の窓を作るかしか方法はない。全開で走って帰れるくらいの距離ならいいが、冬場などはツライはずだ。
 またウインドーが突然動かなくなった場合は、スイッチやリレーの不良も考えられる。スイッチを入れ替えてみるというのが常套手段だ。

 窓が落ちてしまっても、ガラスの上端部分を掴むことができれば、ガラスを引き上げてガムテープで固定することが可能。そのまま修理工場に直行だ。

窓が完全に落ちてしまった場合は、内張りを外して窓を押し上げサッシに固定するという方法がある。それ以外ではアクリル板などで応急的な窓を作るしかない。