TOP > 記事 > 【 ドイツ車世代別メンテ/中年世代 (新車から11年〜20年) / vol.02 天井の張り替えとシートのリペア 】

【 ドイツ車世代別メンテ/中年世代 (新車から11年〜20年) / vol.02 天井の張り替えとシートのリペア 】

常に視界に入る内装の劣化はクルマに乗るたび気になるものだ。劣化が進むとドイツ車らしい高級感を損なってしまうため放置したくはないが、内装パーツは意外に高価で手を出しにくいのも事実。そんなときに頼りになるのがリペアだ。

 

天井が垂れてきてしまった応急処置として
ボンドを流し込むのは避けること

Parts Data

✔劣化するとどんな症状が出る?

視界の邪魔になるほど垂れることも

 天井パネルは生地が剥がれて垂れてきてしまう。最初はサンルーフ回りなどに発生する小さなものだが、やがて視界の邪魔になるほど垂れてしまうので、安全面においても無視できないポイントだ。レザーシートはテカリやキズが付きやすく、高級感が低下してしまう。

✔劣化の原因は?

 天井が垂れるのは熱や経年劣化が原因だが、生地を張り付けている接着剤の違いも要因の一つとなっていると思われる。レザーシートは人的な要因以外に紫外線や熱の影響が大きい。

✔長持ちの秘訣は?

紫外線や熱の影響をなるべく避ける

 天井パネルを長持ちさせる方法は内装パーツを守ることと同じ。それゆえ、熱や紫外線をなるべく避けることが重要になる。古典的ではあるがサンシェードやカーカバーは寿命を延ばす上で有効な手段となる。これにより、レザーシートも保護することができる。

 

接着剤とウレタンの劣化が
天井の垂れを引き起こす

 内装の劣化にはいろいろとあるが、ドイツ車ユーザーの多くで悩みのタネとなっているのが、天井が垂れてきてしまうこと。最初のうちは生地がちょっと浮いているだけだが、時間が経つにつれて状態は悪化していく。ひどくなってくると、頭部に接触したり、視界を妨げてしまうため安全面においても放置できないトラブルだと言えるのだ。
 天井パネルはウレタン製の薄いマットに布地が張り付けられたような構造になっていて、ベース材にマットの反対側が接着されているのだが、この接着剤が劣化して剥がれたり、ウレタン自体がボロボロに崩壊してしまう。熱や紫外線などによる経年劣化が大きな要因だが、車種によって状態が異なることから、接着剤の違いも原因の一つだと思われる。
 これを修理するためには2つの方法がある。まずは純正品に交換するという方法。内装色、生地の種類などが新車の状態になるのでオリジナルをキープできることがメリット。ただ部品代だけで約10万円と高価なのがネックだ。
 もう一つの方法が張り替え。使用する生地を自分で選べるので、内装のイメージチェンジを兼ねて張り替えをするユーザーは多い。使う生地にもよるが、費用的にも純正品に交換するよりはリーズナブルに直すことができる。
 ここではリペア作業の内容を簡単に説明しておこう。まずは天井パネルを取り外すために、バックミラー、ピラーカバー、シートベルトなどを外していく。天井パネルが外せる状態になったら取り出すわけだが、セダンの場合はリアガラスを外す必要があるため手間がかかる。ワゴンはハッチを開けてリアから搬出できるのでガラスを外す必要はない。
 その後、劣化した生地を剥がし、ベース材に付着したウレタンをキレイに除去していく。そして新たな生地を接着剤を使って張り付け、十分に乾燥させる。そしてパネルを車内へと搬入し固定したら、内装パネルなどを元に戻して作業は完了だ。
 こうして書いていくと簡単なように思えるが、シワにならないように生地を張り付けたり、張り替えた天井を車内に取り付ける作業は経験がモノを言う。また、失敗が許されない一発作業であるため、あらゆる部分で細心の注意が必要になるのだ。DIYで張り替えに挑戦する人もいるが、プロのような仕上がりと耐久性を実現するのは難しい。もちろん、趣味として失敗も良しと考えるなら楽しいものだが、新車のような満足のいく仕上がりを目指すならプロに依頼することをお勧めする。
 天井が垂れてくると視界を妨げ、安全面にも影響が出てくるため、とりあえずの応急処置をして乗っているという人も少なくない。定番なのは、下からホッチキスで生地をベース材に打ち込むという方法。金属製の芯が下から見えるのが難点だが、これはまあアリという手段。剥がれた生地を切り取ってしまうというのも、多少荒っぽいながらどうせ張り替えるなら選んでもいい方法だ。一番やってはいけないのが、生地を一部切ったりして、そのすき間から接着剤を流し込む方法。これをやってしまうと、ボンドによる固着でリペア作業が難しくなってしまうので注意しよう。

生地が剥がれてウレタンもボロボロになってしまった天井パネル。新品交換だと部品代だけで10万円以上と高額な修理になる。
パネルはそのまま使用して生地部分だけを張り替えるのがリペア。新品交換に比べると費用も抑えることができる。
張り替える生地は素材によって価格が色々ある。セダンの場合だと約1.5~2m、ワゴンは約2.5mの生地が必要になる。
 

他のシートによ合わせた
色と風合いを再現する

 そのほか内装パーツの劣化で気になるのがシート。サイドサポートや座面など、常に身体に触れているシートだけに内装パーツの中でもキズつきやすい部分と言える。張り替えとなるとそれなりの費用が必要になるし、ちょっとのキズで全部を張り替えるという人も少ないだろう。しかし、こんな時こそリペアが有効となるのだ。
 作業の流れとしては板金塗装に似ていて、表面の汚れ、油分を落としキズついた部分にパテを埋めていく。サンドペーパーなどで表面を磨いた後、塗料を吹きつけていくといったもの。この塗料の入れ方が職人ワザであり、補修の跡が目立たないように、他のシートに合わせた絶妙な調色がされるのである。少し古めのドイツ車なら経年劣化によりヒビが入っていたりするのだが、希望すればそれも考慮した仕上げをしてくれるのが嬉しい。だから違和感もなく、ドイツ車らしいシックな内装にピッタリとハマるのである。乾燥にも時間が必要なので、リペアの個所が多い場合には多少時間がかかることも。それでも仕上がった時の印象は、これまでの雰囲気を壊すことのないものだから満足感も高いはずだ。
 またファブリックシートについたタバコの焦げ穴のリペアも可能。喫煙者なら分かると思うが、いくら注意をしていてもポロっとタバコの灰が落ちてしまう場面があるはず。そんな時もシートリペアを活用すれば大丈夫。キズの補修も含めてシートを取り外しての作業になる。
 このように内装パーツの劣化はリペアを活用するのがお勧めなのだが、少しでも長持ちさせるための予防策をとっておくことも重要。内装パーツが劣化してしまうのは熱や紫外線によるところが大きい。これらを少しでも避けることが、結果的に内装パーツの長持ちに繋がるのである。気温が低いこの時期はその影響はさほど大きくはないが、サンシェードやカーカバーを使って内装を保護することは有効な手段。天井パネルやシートだけでなく、ウッドパネルの色褪せやクリアの割れなども抑制することができるのだ。

フロントシートのサイドサポートについた擦れキズ。乗員の乗り降りが多い場所だけにとくにキズつきやすい部分だ。
表面の汚れを除去してしっかりと乾燥させたところで、パテを埋めていく。キズの度合いによってパテの種類は異なる。
ドライヤーを絶妙な加減であてながら、パテを乾かし固めていく。その温度は高すぎず低すぎずというプロならではの感覚。
サフェーサーを塗り、サンドペーパーで磨いた後、シートに合う塗料を吹き付ける。他のシートに合わせた風合いにするのもポイント。
 

作業する前に覚えておきたい
DIYメンテの重要ポイント

車内に落ちたウレタンのカスは
テープなどを使って除去

DIYでの天井張り替えで注意したいポイントを紹介しておこう。応急処置として垂れた部分の生地を切り取った状態からスタートした場合、天井パネルを外すときにウレタンのカスが車内に落ちてしまう。これはテープを使ってキレイに除去しておかないと室内のカーペットやシート内部に入り込んでしまうので注意。パネルに張り付いたウレタンは、雑巾などを使って擦りながらとにかくキレイに除去すること。これをきっちりやっておかないと耐久性にも差が出る。新しい生地を張りつけたら車内に搬入するわけだが、そのときに指でパネルを押してしまうと跡が残ってしまうため、必ず面で抑えながら搬入することもポイントだ。

ウレタンのカスが車内に落ちてしまったら、テープや掃除機などでキレイに除去すること。シートやカーペットの内部に入り込むと取りにくくなってしまう。
パネルに残ったウレタンは、雑巾などを使ってキレイに除去することが重要。
生地を張り付けるときは返し部分やルームランプ回りを入念に密着させること。
新しく張り替えたパネルを搬入するときは指で押さず、手の甲など面で支えること。強く押すと跡が残ってしまうことがある。