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AMG SLK

2022.02.04

【走りの本能を刺激するスペシャルカーの世界 Vol.03/SLK55 AMG Black Series】かつてのAMGのように手間をかけて作り上げた渾身のスペシャルモデル

マイスターの手によって一台ずつ丁寧なチューニングをしていたかつてのAMG。その現代版と言えるのがAMGパフォーマンススタジオである。市販車であるAMGモデルにさらなるチューニングを施して走りを強化、ルックスもより過激に仕上げたブラックシリーズからは、AMGが誇る技術力の高さを感じ取ることができる。

 

SLK55 AMG Black Series

マッシブなブリスターフェンダーが強調されるリアスタイルは、このクルマのベストアングル。全身ブラックアウトされた姿に、赤いテールが怪しく光る。
 

完全なカーメイクスタジオで
徹底的なチューニング

 2006年にアファルターバッハのAMGファクトリー内に設立されたのがパフォーマンス・スタジオ。カスタマーの要望に合わせてAMGのコンプリートカーをカスタマイズしたり、さらなるチューニングを加えたりするためのワークスタジオだ。そのパフォーマンス・スタジオが送り出した最初のコンセプトモデルが、ここで紹介するSLK55AMGブラックシリーズである。
 メルセデスの本拠地であるジンデルフィンゲンに専用のラインを持つSLSは別格として、今ではAMGモデルもその生産方法は普通のメルセデスとほとんど変わらない。エンジンだけはアファルターバッハのAMGファクトリーで完全な手作業によって組まれているが、それ以外の部分は各シリーズを生産するラインに乗って組み立てられている。しかし、ブラックシリーズだけは特別だ。
 AMGの工場内にあるパフォーマンス・スタジオは、完全なカーメイクスタジオ。まるでチューニングファクトリーのような佇まいの中、マイスターのハンドメイドによってボディワークやサスペンション、エンジンなどのチューンが行なわれている。ここでは以前の独立したチューナーだった時代のAMGのように、手間隙をかけた手作りのカーメイクが行なわれているのである。
 ブラックシリーズの知名度が日本で上がったのは、08年に12台の限定ながら初めて正規輸入されたSLK65AMGブラックシリーズからだと思う。ブリスター化されたウルトラワイドなフェンダーが印象的なスペシャルマシーンだった。このモデルが世界限定350台であるのに対して、撮影したSLK55AMGブラックシリーズは何と世界中に120台しか存在しない。しかも日本へは正規輸入されず、もしかしたらこの1台限りということも……。
 見た目や数値的なパフォーマンスではSL65に一歩譲るものの、その希少性では大きく上回るのがこのSLK55ブラックシリーズなのである。
 スペシャルチューンが加えられたAMGのM113ユニットは、40馬力のエクストラパワーを得て400psの大台に突入。エンジン内部のバランスをさらに煮詰めるのはもちろん、エキマニを見てもへダースに変更され、さらにバンテージが巻かれている。同時に各部の軽量化も徹底的に行なわれ、固定式に変更されたカーボン製のルーフ、鍛造アルミの採用、カーボン製ドアインナー、サイドエアバッグの撤去などによって、SLK55に対して約45キロの軽量化を実現している。
 これらによって、パワーウェイトレシオは4.3kg/psから3.7kg/psへと大幅に強化され、7速ATのAMGスピードシフトによる0-100km/h加速は4.5秒という俊足ぶりを見せつける。
 さらにアジャスタブルタイプの専用サスペンションによって強化された足回りと、フロント360ミリ径のローターに6ポッドキャリパーというブレーキによって、本格的なサーキット走行も視野に入れたセッティングが可能なフットワークとなっている。ブラックシリーズは派手なルックスだけでなく、AMGのレーシングテクノロジーが詰め込まれた、硬派なスペシャルモデルなのである。

5438ccのAMG55ユニットは、圧縮比を11:1まで高めることで400psを実現。コンプリートエンジンにさらなるチューニングを加えた、本来のAMGユニットと呼ぶべきものである。
インテリアの雰囲気は、ベースとなっているSLK55と大きくは変わらない。装備類が簡略化されているため、センターコンソールのスイッチは数が減っている。
スピードメーターは320km/hスケール。スピードリミッターは装着されず、インパネのスイッチ一つでESPをカットオフすることも可能。
形状や素材が異なるAMGエルゴノミック・スポーツステアリングを搭載。7速ATを操るパドルスイッチも備わっている。
調整可能なのは前後のスライドのみという完全なバケットシートを装着。

Mechanism Topic

徹底した軽量化を実施
あくまでも走りを優先した仕様

ノーマルのSLKクラスではドアの内張り内部にサイドエアバッグが内蔵されているが、ブラックシリーズでは軽量化のためこれを撤去。内張り自体も軽量なカーボン製の専用パーツを作成して使用しているのだ。ここまで徹底した軽量化を行なうのも、走りを優先した明確なコンセプトによるもの。メルセデス・ベンツをベースにエンジンチューンと徹底した軽量化を加え、サーキットで戦っていたかつてのAMGを思い出すこだわりの部分と言えるだろう。