TOP > 記事 > 【ジャーマンクラシックの魅力を読み解く3っのキーワード①/「ダイレクト」】~もう一度乗りたくなる“ドイツの絶版名車”~

【ジャーマンクラシックの魅力を読み解く3っのキーワード①/「ダイレクト」】~もう一度乗りたくなる“ドイツの絶版名車”~

なぜ多くの人がジャーマンクラシックに引かれるのか。そのヒントになるのが「ダイレクト」「デザイン」「仲間」という3つのキーワードだ。それぞれのカテゴリーについて詳しく解説していこう。第1回目は「ダイレクト」だ。

 

電子制御の介入が少ないことが
「ダイレクト」な感覚を生み出す

 クルマにおけるクラシックという言葉に明確な定義はないのだが、60年代以前をクラシック、70~80年代をネオクラシックというのが一般的だろうか。となると、90年代はネオクラ予備軍といった感じか。だが、それらのドイツ車の魅力を探る本企画では、クラシック/ネオクラシックとは分類せずに「ジャーマンクラシック」と総称したい。
 さて、本題に入ろう。30年前の国産車を街で見かけることはまずないが、ドイツ車では状況が違っている。街中ですれ違うことや高速道路で見かけることも多い。同じ時期に販売され、その台数においても圧倒的に少ないのに、なぜ多くの人がジャーマンクラシックに魅力を感じ、維持し続けているのだろうか。昔からの憧れなど情念的な部分が大きいことは確かだが、それだけはない何かが存在するのだろう。
 その何かを探る1つ目のキーワードが「ダイレクト」。ダイレクトとは、そこに何も介入していない感覚であり、それがジャーマンクラシックには色濃く残っているのだ。構造的に見るとそれがよく分かる。
 現代のクルマは、エンジンのスロットルバルブとアクセルが機械的に繋がっているわけではない。エンジンは高度な電子制御によってコントロールされており、アクセルの開度との連動によって燃料の噴射量や排気の調整、横滑り防止装置の作動などが統合されている。アクセルペダル自体がセンサーになっているクルマもあり、足で踏み込んだことを感知すると、その信号をコンピュータに送る仕組みになっている。
 一方、ジャーマンクラシックの多くは、アクセルがワイヤーかロッドで直接スロットルバルブと繋がっている。踏んだぶんだけ加速する、なんて言われることがあるが、電子制御式に比べると、アクセルにおけるフィーリングはダイレクトだ。もちろん近年の電子制御は普通に走っていてその介入を感じることは少ないが、前述した制御の仕組みを知ると「クルマに乗せられている感」を覚えることも多い。クラシック世代のドイツ車をよく知る人ほど、その違いに気づきやすいのだ。
 ジャーマンクラシックの革巻きステアリングは、細みのものが多い。ステアリングに伝わる振動によって、路面の状況を感じ取れるのはまさにダイレクトな感覚だろう。イマドキのステアリングは太くぼってりとしたものが多いが、あんこの薄いタイトな革巻きは職人技とコストがかかるものだ。スイッチを押したときの感覚もダイレクトなものだし、電動ではなく油圧やエアを使った機構は、単なるスイッチやドアロックの作動においても高級車としての演出が感じられる。お金をかけて作り上げたという感覚が伝わってくるのだ。
 メーカーによる個性の違いが、現代よりも際立っているのもジャーマンクラシックの特長。ATにおいては機械式と電子制御式を採用しているクルマがある。構造的に見ると、例えばメルセデスの機械式ATは一つのギアに複数の役割を持たせているのに対して、BMWに搭載されたZF製の電子制御式ATは1つのギアが独立して配置されている。アルミなど軽量な素材を使っているのも特長的な部分だ。メルセデスは機械式であることによる多少のシフトショックよりも、高い耐久性とダイレクトなフィーリングの信頼できるメカニズムを優先。BMWは走りの気持ち良さを追求するために、電子制御によるシフトショックの少なさと滑らかな変速を重視しているということだ。
 リサーキュレーティングボール式のステアリングギアボックスも、クラシックならではのフィーリングを持つポイント。リンク機構が多く高価なものではあるが、無駄な振動を抑えてくれるため高級車に相応しいフィーリングを持つ。さらに細めのタイヤやサスペンションによって粘りのあるコーナリングを実現してくれるのだ。メルセデスでは長くこの方式を採用しており「しっとりとしたステアフィール」と形容されることも多い。一方のBMWは一部のモデルを除いてラック&ピニオン式を採用している。これは現代のクルマで主流になっているギアボックスだが、高級感よりもシャープな感覚を優先しているBMWらしいポイントだ。
 こうして見ていくと、メーカーが求めるクルマとしての性格の違いが、時代を遡るほどに色濃く現れているのが分かる。似たような作りのクルマばかりの現代とは違って、メカニズムやフィーリングの違いを存分に楽しめるのがジャーマンクラシックの魅力でもあるのだ。。
絶対的な性能では現代のクルマには及ばないが、クラシック世代でしか味わえないダイレクトなフィーリングを持つのが魅力。エンジン制御も非常にシンプルなものだ。

メカニズムから見る

ダイレクトなフィールを生み出す理由

アクセルはワイヤーかリンケージ

クラシック世代のドイツ車は、スロットルとアクセルがワイヤーか写真のようなロッドで直接繋がっている。これがダイレクトなフィーリングに繋がっている。

イマドキのクルマは
ペダル自体がセンサー

現代のクルマはアクセルペダル自体がセンサーになっていて、その信号がコンピュータに送られる仕組み。高度な電子制御によるたまものとも言えるが、クラシック世代のようなダイレクトさを感じることはできない。
 

機械式のオートマチックトランスミッション

タテ目のメルセデスに搭載される機械式AT。構造自体はシンプルで高い耐久性を持つのが特長だ。60年代のクルマであってもオーバーホールをすれば新車時のような性能を取り戻せる。今でも部品が供給されていることも維持のしやすさに繋がっている。

しっとりとしたステアフィールを生み出すギアボックス

ギアボックス内部にボールベアリングを使った構造を持つリサーキュレーティングボール式。ボール&ナット式とも呼ばれる。高級車らしい滑らかなステアフィールのキモとなる機構だ。

現在主流のラック&ピニオン式の
ステアリングギアボックスは
クラシック世代にも使われている

クラシック世代であっても、BMWなどは早くからラック&ピニオン式を採用。部品点数が少ないこととシャープなフィーリングが特長だ。メーカーとしての違いがよく現れている部分でもある。

イマドキのクルマは
電動パワステを搭載

イマドキのドイツ車はステアリングにも電動油圧式を採用している。快適であることは間違いないが、電気的に制御されている感は否めない。

機械式AT

写真はメルセデスの機械式AT。一つのギアで複数の役割を持たせているのが特長。部品点数も電子制御式に比べて少ない。

電子制御式T

センサーを多用することで効率的なシフトチェンジを実現する電子制御式AT。BMWは早くから電子制御式を採用している。
 

クラシックベンツは作りも部品も頑丈!
コストをかけて作られているのが分かる

高年式のドイツ車では定番のトラブルであるパワーウインドーの不良。だがクラシック世代のメルセデスはその頻度が少ない。なぜかと言えば、部品自体が頑丈に作られているからで、例えばレギュレータのギアは見るからに頑丈な作り。電気的な不良は経年劣化なのでクラシック世代でも発生するが、現代のクルマのようにギアが欠けて作動不良を起こすというケースはそれほど頻繁に発生しないのだ。部品一つを見ても、コストをかけて作っているのが分かる。

クラシックベンツのレギュレータのギアはに頑丈に作られており、トラブルは少ない。