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【German Neo Classics / vol.01】1971y Mercedes-Benz 280S(W108)新車から50年以上経った今でも日常の足にもなる走りを披露

贅沢な作りがなされたフルサイズの280S。登場から50年以上が経過しているが普段使いできるほどの走行性能を持っている。豪華な作りもこの時代のメルセデスならではだ。

 

先進的な作りと装備で今でも不満なく乗れる

Mercedes-Benz 280S

(W108)1971y 

ゆったりとしたフィーリングは

時間を忘れてしまうほど快適

 1960年代以前のクラシックモデルで、流通量や価格といった面でも、購入後の実用性という面でも、圧倒的なアドバンテージを持つのがメルセデス・ベンツ。その先進的な作りと装備で、半世紀が経った現在でも不満なく乗ることができる。その気になれば通勤にでも使える、唯一のクラシックと言っていいだろう。
 そんな中でも、コレクターに人気の高いSLシリーズや、経済性が高い代わりにメルセデスらしい高級感にはやや欠けるコンパクトシリーズとは異なり、高級サルーンらしいゆとりある走りと最上級の車内空間を満喫できるのがフルサイズモデル。さらにここでは、入手しやすくクラシカルな雰囲気が存分に楽しめるタテ目デザインの最終モデル、1965年からのW108/109に注目してみたい。
 直6に加えてV8エンジンも搭載したこのシリーズでは豊富なバリエーションがあるのも大きな特徴。現代のメルセデスのようにグレードによって個性も大きく異なってくる。
 フルサイズクラスは当時のクーペボディに近い優雅なデザインを身に纏って登場。ボディは縦にも横にも拡大され、車高は低く抑えられている。当初は直6だけを搭載していたが、68年にV8を積んだ最高220㎞/hの300SEL 6.3が登場、なんとエアサスペンションを採用していた。後に排気量の少ない3.5ℓのV8も加わり、エアサスモデルがW109、直6やV8の簡略仕様である280se 3.5など金属バネのモデルがW108と区別されている。
 撮影したのは71年式の280Sで、直6を積むキャブレター仕様となっている。往年のメルセデスらしい堂々としたスタイルは柔らかなボディラインを形成。メッキパーツを各所に使うことで上品な印象を与えている。取材車のコンディションは良く、ボディにもツヤがある。インテリアを見ると、ホーンリング付きの細く大きなステアリングが味わい深い。ウッドを贅沢に使った室内にはフロントのみパワーウインドーを装備。ナビゲーションやETCはグローブボックスの中にこっそりと収納されているので、オリジナルの雰囲気を壊すことはない。さらに、クーラーも搭載されているから普段使いできる性能を備えているのである。
 じつはこのクルマ、前オーナーが子供の保育園の送迎にも使っていたそう。保育園に行くたびにこのクルマに乗れるなんて羨ましい限りだが、このことからも毎日乗っても問題ない性能を持っていることが分かる。
 撮影時に少しだけ試乗させてもらったのだが、街中から高速までストレスなく走ることができた。80年代以降のメルセデスにはない、ゆったりとしたフィーリングは時間が過ぎていくのを忘れてしまうほど快適だった。運転中に視界に入ってくるメーターや豪華な作りのセンターコンソールによって、さらに気分を盛り上げてくれるなど完全な趣味の時間として過ごすことができるのだ。クラシックメルセデスでの旧車生活、想像するだけでもワクワクしてしまう。

見切りが良いボディラインと小回りが利くステアリングで、ボディサイズのわりに運転しやすいのが特徴。
ゆとりのあるインテリアにはホーンリング付きのステアリングが装着され、インテリアデザインのポイントにもなっている。ウッドパネルのコンディションは良好で、目立つようなキズや割れはない。シートも擦れキズや破れもない。きっちりとレストアされた1台なのである

フルサイズとして50年以上前のクルマなのに、クーラーやパワーウインドーなどの快適装備は揃っている。当時、一般人には手が届かなかった高級車であったことが作りや装備の充実さに繋がっているから、クラシックとなった今でも現役として活躍できるのだろう。

直6からV8まで豊富なバリエーションを持つフルサイズのエンジン。取材車はキャブレター仕様の直6を搭載している。
クラシカルな雰囲気を盛り上げてくれるホイールキャップはキレイな状態を保っている。足回りはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがスイングアクスルと古典的だが、驚くほど乗り心地は快適だ。直6モデルにはキャブレター仕様のほか、インジェクションも用意しており、280SEとなっている。点火系など、しっかりとメンテナンスを受けてきた個体だ。