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【 GERMAN SPECIAL CARS!! vol.17 至福の時間を特別なクルマで。/日本における ベストストリートスポーツ BMW 初代型M3(E30) 】

Mのエンブレムが放つ強烈な存在感は、昔も今も僕らの感性を刺激する。ひとたびステアリングを握れば、いつもの平凡なコーナーでさえ、魅惑のドライビングフィールドと化してしまう。そんなMにおけるスペシャルな存在がM3。初代モデルを眺めながらそのヒストリーを振り返ってみよう。

 

The history of BMW M Series
BMW 初代型M3(E30)

大きく膨らんだブリスターフェンダーにトランクスポイラーを装着したレーシーなエクステリア。ルーフエンドからリアにかけて新たに作り直し、リアウインドーを寝かすことで空力アップを実現するなど、レースへの本気度が伝わってくる作り込み。
 

絶品のチューニングエンジンを
フルに発揮するために与えられた
高いシャシー性能

 BMW M社は、BMWの研究開発を担当する関連会社。前身のBMWモータースポーツ社では、主にモータースポーツ関連の研究開発、車両生産を行なっており、そこではツーリングカーからF1まで全般的に手がけ、数々のタイトルを獲得した。現在では高性能スポーツとの位置付けになったMモデルの開発や、限定モデルの企画、アフターパーツ関連やトレーニングスクールの運用などを行なっている。
 そんなMシリーズの中でもっとも知名度が高いのがM3だろう。「エムスリー」、「エムサン」。呼び名は人それぞれでも、クルマ好きの間では完全に認知される存在になった。日本車党でも一目置く、それどころか、日本の自動車メーカーのエンジニアたちは、このクルマを手本として開発をしていることも珍しくない。しかもそれはエンジンであったり、足回りであったり、クルマの根幹に関わる部分なのだ。M3は他のメーカーにとって手本となるほど、基本の理論に忠実で理想的な作りが成されているのである。
 Mとはモータースポーツの略であり、BMW MM社が開発やエンジンの生産を担当している。BMWの中でも飛び切りのスポーツ性能を誇る特別なモデルに与えられた称号だ。レース用の部品やマシンを開発したり、レース活動、さらには特別なマシンの製作を受け持ってきた。それはBMWの本来の姿そのまま、と言ってもいい。M社の前身となるBMWモータースポーツGMBHが設立された73年以前から、BMWはレース活動をしており、BMWの研究開発部門からモータースポーツ部門が独立して子会社となったのがM社へと発展したのだ。
 そんなM社が初めて生産したクルマがM3(それ以前にM1というスーパースポーツも存在するが、ランボルギーニ社が生産を担当)。レシプロエンジンとして最高のパフォーマンスとフィールを追求し、そのエンジンの性能をフルに発揮させることができる高いシャシー性能を与えるというのが、M3のコンセプト。だからこそ運動性能に優れたコンパクトな3シリーズをベースとし、そのボディに収まるバランスのいいパワーユニットを作り上げ、フットワークのいいスポーツマシンを作り上げるのだ。
 速いマシン、ドライビングが楽しいマシンが欲しいと思っても、スパルタンな2シーターのピュアスポーツでは実用性に乏しく、それ1台で全ての用途をこなすのは無理だ。日本は雨の多い気候とあって、耐候性の高さも重要な要素。また大排気量の高性能車ではその高速性能を生かし切ることは難しい。渋滞の多い状況では、MTは辛いという人も多かろう。そんな人にはSMGというセミATもある。日本においてはベストストリートスポーツと言ってもいい存在。それが歴代のM3なのである。

レーシングユニット直系となる直4DOHCを搭載する。最高出力195psというスペック以上に、回すと楽しいエンジンである。取材車はスポーツエボリューションの2.5ℓエンジンに換装され、強化されている。
シンプルにまとめられたインテリアはセンターコンソールがドライバー側を向く伝統のデザイン。ノーマルではステアリングとシフトノブが専用品となるが、取材車は社外品に交換されている。ミッションはゲトラグ製のクロスミッション。後付けの3連メーターを装着するなど、サーキットで積極的に楽しめる仕様。
ダイレクトなシフトフィールで積極的に走りを楽しめるクロスミッション。コンパクトかつ軽量なボディと軽快に回るエンジンを、マニュアルミッションで操る楽しさはとても気持ちがいい。