TOP > 記事 > 【 ドイツ車世代別メンテ / 高齢世代 (新車から21年以上) / vol.01 ボディのメンテ 】

【 ドイツ車世代別メンテ / 高齢世代 (新車から21年以上) / vol.01 ボディのメンテ 】

機関面と同様に、時間が経つにつれてボディの劣化も進んでいく。これは仕方がないことで、どんなに高品質なドイツ車であってもいつかはやってくるものなのだ。ここでは塗装のリペイントとサビ対策について解説していこう。

 

ボディのメンテナンスは
今後の維持における重要な
ターニングポイントになる

Parts Data

✔塗装の役割は?

サビを発生させないための保護膜

 もし、鉄の板で構成させるボディに塗装がされていなければ、急速に酸化が進みサビだらけになってしまう。塗装は見た目の美しさだけではなく、サビからボディを守る保護膜としての役割も持たされているのだ。飛び石などからボディを守るのも、塗膜の仕事である。

✔劣化するとどんな症状が出る?

 クリア部分が劣化していくとクラックが入ってしまうことが多い。また、キズが付いて鉄板が剥き出しになってしまうとサビが発生。ボディを蝕み、最終的にはボロボロになってしまう。

✔長持ちの秘訣は?

ボディにキズが付いたら早急に補修

 飛び石などでボディにキズが付いてしまったときはタッチペンなどで補修しておくこと。サビが発生しやすいポイントに防錆処理を施しておくことも重要だ。また、水抜き穴の清掃やウインドーの水切りゴムなどを交換しておくことも、サビ予防に繋がるメンテナンスである。

 

塗装やボディの劣化は
静かに進行している

 いかに丁寧に仕上げられた高品質なクルマであっても、経年変化によるヤレは避けられない。それはメカだけでなく塗装面なども同じこと。走りには満足していても、車齢21年以上の高齢世代のドイツ車ともなれば塗装の劣化が目立ち、全塗装を考えているオーナーも多いはずだ。
 とはいっても、エンジンなどの機関面に比べると塗装やボディのことを知らない人は多いだろう。メンテナンスの頻度が少ないということが、その理由の一つかもしれないが、高齢世代のドイツ車にとっては、いつかは必要になるメンテナンスだ。ここをどう乗り切るかで今後の愛車の状況も変わってくる、重要なターニングポイントなのだ。
 まずは塗装の劣化と補修方法について解説していこう。塗装は古くなるとクラックが生じることが多い。顔料が硬いホワイト系に発生しやすいが、この場合はクラックが無くなるまで塗装を剥離する必要がある。一見何ともないようでも、細かいクラックが入っているのはよくあることなので、リペイントをするときは元の塗装を完全に剥離してから行なうのが最も理想的なアプローチ。当然、費用は高くなる。
 リーズナブルなチョイスとしては元の塗装をある程度残しつつ、その上からリペイントを施す方法だ。ただ低年式のクルマほどすでに修正がされていることは少なくなく、さらにはパテが厚く盛られていることも多い。この場合、下地にサビが発生しているケースも多いため、既存のパテは全て除去して板金からやり直しとなる。したがって過去に修復した部分のリペイントとなると、費用は上がってしまうのが一般的である。ちなみに、今のパテは非常に性能が良いために、正しい使い方を守ればサビが発生することは少ない。
 ドイツ車のリペイントとなると、素人ほど塗料のブランドや乾燥方法にこだわる人が多い。メーカー指定の塗料でなければならないとか、焼き付け塗装でなけれなダメだとか……。でも、実はそれは間違い。仕上がりに差が出るのは、塗料メーカーの指定通りの使い方を守っているかどうかと、ペインターの腕の差だ。メーカー指定の塗料だろうが国産の塗料だろうが、発色や耐久性など、性能に大きな差はない状況なのだ。もちろん、塗料メーカーごとに特徴があることは事実だが、塗装のクオリティに大きな差が出るのは、ペインターの技術による部分の方がはるかに大きいのである。マスキング、色の調合、塗装、磨きなどのテクニックの差が仕上がりに現れるのだ。
 ただし、国産の塗料には輸入車のカラーデータが乏しいものもあり、古いクルマほどその傾向は強い。そのため色合わせが難しいと言われるが、最終的にはペインターの経験と勘によって色は作り出されるため、腕の良い職人にとっては、使い慣れている塗料が一番良い塗料となる。
 ちなみに焼き付け塗装に関して補足しておくと、焼き付け塗装とは塗料メーカーが定めた乾燥方法で、主に時間短縮を狙ったもの。その指定がないものは、電球や温風で乾燥する必要はないのである。

ボディの塗装はペインターの技術の差が現れやすい部分。塗料や乾燥方法にこだわる前に、誰に依頼するかが重要になる。
ブリスターと呼ばれる突起は、下地の下に残った水分や油分が蒸発して、その圧力で塗装が凸凹になる。技術が低いとこうなってしまう。
以前に補修を行なっているボンネット。電着プライマーの上に直接ベースペイントを吹いており、補修箇所はパテが劣化した状態になっている。
写真はクリア部分のみを剥離した状態。費用としてはリーズナブルだが、過去に修正した跡があればそれも修正し直す必要がある。
 

サビを発生させないことが
ボディを守ることに繋がる

 ボディにとって最大の敵となるのがサビだ。塗装はサビからボディを守るための保護膜。もし、クルマのボディが塗装されずに鉄板剥き出しの状態であれば、急速に酸化が進みサビだらけになってしまう。低年式のクルマほどボディの劣化が進んでいるから、状態が悪いとレストアレベルの補修が必要になる。
 サビが発生しやすいポイントは、サイドロッカーパネルの内部やドアのフチ、リアフェンダー内部など、袋状になっている部分。湿気や水分が抜けず、しかも袋状になっているためにその内部を実際に点検することはなかなかできない。そのため、修復を行なう場合は外部にサビが浮き出てからというのが一般的だ。
 修復方法は大きく分けて2つ。ひとつは新品のパネルに交換することで、もうひとつは既存のパネルを修復すること。どちらもサビの発生がひどい場合は溶接を剥がしての大手術が必要になるが、例えば希少な新品のパネルを使うとその分費用は高額になる。費用をなるべく抑えたいのであれば、サビの発生が少ないときに修理することだ。比較的サビの確認がしやすいドアの内部を点検し、サビが出ているようならサイドロッカーパネルも同時に作業してしまうのが効率的であると言える。
 もともと装着されていたパネルを修復するというアプローチなら、その費用はかなり抑えることができるのだが、サビの再発率はこの作業の方が高くなるというリスクもある。しかも、十分なサビ取りを行なっていなければ、塗装を施した3カ月後にはサビが表面に浮き出てしまう、なんて可能性もあるのだ。
 そのため、限られた予算の中でどのレベルで仕上げるのかというのをよく相談することが大事。とくにレストとなれば費用も時間もかかる。塗装や板金修理というのは、サビの状態も含めて塗装してしまえば、どんな作業をしたのかは分からない。良心的な板金工場では、その過程を写真に撮って確認できるようにしてくれるところもある。費用についても高いから技術力があるというわけではないので難しいのだが、費用についての説明がきちんとできるところに依頼するようにしたい。手抜き作業による代償は想像以上に大きいということを知っておきたい。

塗料はメーカーによって特長があるが、それにこだわり過ぎてはいけない。それよりも、ペインターの調色が重要になる。
ボディのサビは見えるところよりも、床下など見えないところのほうが怖い。サビは静かに、しかし確実にボディを蝕んでいく。
レストア作業におけるパネルの修復は技術力が問われる部分。サビを徹底的に除去して、適正な下地を作り上げていく。
サビを除去していくとパネルの形状が変わってしまうことがある。これを修正するのもレストア作業の重要部分。非常に手間がかかる。
 

やっかいなサビからボディを守る
お手入れ方法

愛車に対する小さな心遣いが
サビ予防に繋がる

ボディをサビから守るためには、定期的なお手入れをしておくことが大切。例えば、ドアの内側など水や湿気を帯びやすい部分に定期的に防腐処理を施すこと。水抜き用の穴からスプレータイプのものを吹き付けておくだけでも、サビの発生をかなり抑制することができる。水抜き穴にゴミなどが詰まっていることもあるので、割り箸や竹串などを使って清掃しておくことも大切なメンテナンス。また、高い防腐処理がされていないクラシック世代のドイツ車であれば、洗車にも気を遣う必要がある。大事なのは、洗車した後の水分をなるべく速く乾燥させること。ボディ表面は目視でも確認できるので問題ないと思うが、ドアの内側などに水が残りやすいので入念に水分を除去しておく必要がある。エアガンを使って水分を飛ばすのも有効な手段だ。愛車に対する小さな心遣いはサビを抑制することに繋がるのである。

水抜き穴にゴミなどが詰まってしまうと水が抜けなくなりサビの原因になる。定期的に清掃しておこう。防錆処理をしておくとなお良い。
クラシック世代のドイツ車ではウェザーストリップが劣化しているクルマも少なくない。これを交換しておくことも重要だが、洗車時には入念に水分を除去しておくこと。