メカニズムの違いが整備に影響してくる部分も
販売のプロ(と言っても、宍戸店長もメカニック出身)から見たE46とE90の差異に続いては、整備のプロ、同店の大内高志工場長に両車の維持について聞いてみよう。
「BMW車全般に言えることですが、やはり水回りのチェックは怠らないようにしたいです。E46とE90では弱い部分が異なって、E46ではリザーバータンクやウォーターポンプが定番です。E90はラジエターとホースの接続部や、シリンダーヘッド後部のプラスチックプレートあたりですかね。強力なエンジンを積む335iはそのぶん冷却系への負担も大きいので、電動のウォーターポンプも要チェックです」
人気モデルの定番ウィークポイントだけに、何かあっても豊富な社外パーツを利用し格安に対応できそう……と思いがちだが、「いろいろ試してみたんですが、信頼性の問題からE46のウォーターポンプは純正品をお勧めしてます。E90の電動のは社外でも良いのがあるんですが」と同店ならではの経験則を明かしてくれた。同様に「E90のABSのホイールセンサーは良い社外品に出会ったことがない」のだそう。
「あと基本的なことですが、オイル管理はマメにすることですね。5000kmごとにエンジンオイルは交換したいところです。特にスラッジが出やすい直噴エンジン搭載車(E90後期型)は早め早めの交換を。直噴やアイドリングストップはオイルを劣化させやすいシステムなんで。それと直噴はプラグも早めの交換を」とのアドバイス。比較的ATのトラブルが少ないBMWだが、ATFも定期的な交換がお勧めだという。
E46については、トラブルは出尽くしているので、何かあっても対処しやすいのだそう。「イグニッションコイルやカムシャフトのセンサーも弱点と言えば弱点ですが、事前に予兆が出るものでもないですし、不調を感じたら入庫していただいて……ということになりますね」とのこと。加えて、ライフの長いオルターネータや燃料ポンプが二度目、三度目の交換時期を迎えているクルマも少なくないという。
一方のE90は基本的にコンピュータ診断でトラブルの原因を突き詰めていくスタイル。「E90はエンジンルームがカバーされていたり、整備するのに外す部分が多くて手間がかかります。ヘッドライトのタマを交換するのですら、ひと手間かかりますから。なので、そのぶん工賃も上がりますので、何かをするときは診断結果を見て一緒に他の部分まで手を入れることをお勧めします。E46ではできなかったABSのハイドロリックユニットの分解修理がE90ではできるようになっていたり、良くなった面もたくさんあるんですけどね」と、E46以上に計画的な整備が有効であることを教えてくれた。
購入においても、維持においても一長一短な両車。どちらを選ぶかますます難しくなったところに、大内工場長からさらに悩ましい提案が。
「ランフラット向けで普通のラジアルタイヤにするとちょっと柔らかめになってしまうE90の足ですが、ショックを交換すると、これがBMWらしいスポーティさが出るんですよ」と、なんとも魅力的な意見。よりスポーティさを求めるならビルシュタイン、バランスならコニがお勧めだそうで、スプリングまで交換しなくても見違えるほど良くなるとか。
そんな話をしていると、宍戸店長が「今E30あたりに乗るのも良いんですよ~」と、さらなる選択肢まで出てくる始末。安くなったE60型5シリーズの上質さも捨てがたいし、E65型7シリーズだって魅力的だ。でも、「新車価格が1000万円のクルマは、それだけ高い部品の集合体ってことですから、3シリーズほど手軽にってわけにはいきません」と専門店ならではのアドバイス。BMWの魅力がギュッと詰まった3シリーズは本当にお勧めで、E46にしてもE90にしても現実的な価格で手に入れられる今は絶好のチャンスだという。どちらを選ぶかは好み次第という月並みの検証結果になってしまったが、言い換えれば、それはどちらにも捨てがたい魅力があることの証明。どちらを選んでもきっと楽しいBMWライフを送れるはずだ。