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2021.03.16

Mr.ジオランダー・塙選手が手掛けた象徴的なスーパースポーツSUV「Z-ADVENTURE」

4WD・SUV専用タイヤのスペシャリストブランドである、ヨコハマタイヤの『GEOLANDAR(ジオランダー)』が、ブランド誕生から25周年を迎えた。
当時の4WDタイヤはまだトラック用タイヤと同じ扱いで、ヘビーデューティではあるものの日常ユースの快適性には配慮されておらず、一般ユーザーには敷居の高い存在だった。しかし『ジオランダー』は一線を画していた。ヘビーデューティな性能はそのままに、乗り心地の良さや静粛性の高さを同時に追求しながら、その歴史と進化を重ねてきた。今でこそ、各メーカーが4WDタイヤ開発でしのぎを削っているが、そのマーケットを切り開いてきた立て役者として、『ジオランダー』の功績はとても大きい。
 そんなジオランダー誕生25周年を記念して〝ミスター・ジオランダー〞こと、塙郁夫(はなわ・いくお)選手が特別な1台を造り上げた。塙選手は日本を代表する世界的なオフロードレーサーであり、マシンビルダーでもあるのだ。

「Z-ADVENTURE」そう、そのシルエットをご覧になればお分かりの通り、日産・フェアレディZをベースとした、アドベンチャラスなスポーツSUVだ。ここでは、国内最高峰のオフロードレース「JFWDAチャンピオンシップレースシリーズ」で10年連続チャンピオンに輝いたほか、世界的なビッグオフロードレース「Baja(バハ)1000」で、日本人初完走(1991年)、2002年にクラス優勝を成し遂げるなど、数々の実績を持つ塙選手の新たなスペシャルマシンを紹介したいと思う。

「2020年からコロナ禍ということもあり、様々なレースやラリーは中止に。そこでできた時間で、ずっと頭の中にあって造ってみたかったクルマを、実際にカタチにしてみたんだよね」と塙選手。
最近の4WD・SUVカテゴリーはまさにクロスオーバーで、大別して3つのタイプがある。1つは昔ながらの本格4WD、それが車高ダウンしてSUVになったタ
イプ、そしてもう1つが乗用クーペやステーションワゴンが車高アップしてSUVになったタイプだ。「以前、参戦した〝パイクスピーク・ヒルクライム〞では、新世代のSUV的マシンが多くて気になっていたし、最近の市販車もBMW・X6やメルセデスベンツ・GLEなど、クーペ的シルエットなのに大きなタイヤを履いてSUVに仕立てたクルマが存在感を発揮しているよね。昔のパリ‐ダカールラリーにも車高を上げたポルシェ911があったな…なんて」
 ちなみに1984年のパリ‐ダカでルネ・メッジが駆る、911ベースのポルシェ953は総合優勝を果たした。今でも伝説となっている〝ロスマンズ・ポルシェ〞だ。Z-ADVENTUREを目の当たりにすると、砂漠を猛烈なスピードで駆け抜ける姿が想像できる。「マシン造りで一番こだわったのはタイヤサイズ。最低地上高や対地アングルを稼ぐためにも(直径)33インチのタイヤを履きたかった。
ちなみにZの駆動方式はFRだけど、2WDでもこのサイズとエンジンパワーさえあればクロカン4WD並みに走れるんだ」確かにBaja1000を走るモンスターマシンも、今や2WD車のバギータイプが多いのだ。「それともうひとつ、Zのシルエットを絶対に崩したくなかった。スポーツカーの車高を上げるとオモチャっぽくなる例が多いんだけど、そうはしたくなかった。ヨーロッパのセレブが、アフリカの高級ホテルに乗りつけるようなクルマがコンセプトだったんだ」

ちなみに車高のアップ量はわずか50㎜。ただしZの純正タイヤは外径約680㎜で、今回装着した33インチタイヤは約830㎜と、150㎜も大きい。さらにタイヤ
幅も広く、装着できるようにするには相当な苦労があったはずだ。「シルエットをキープするために、とにかくインナーフェンダーを可能な限り切りつめて。外側の前後フェンダーはワンオフ製作で、片側50㎜ワイドに収まっているよ」
そして、一見ワイド&ローなシルエットだが、最低地上高は実に250㎜を確保しているという。実際、オフロードコースのモーグルを走らせてくれたが、塙選手が操るとFR車も普通のクロカン4WD並み…いや、それ以上の走破力を発揮!もちろん、下回りをヒットさせることなく、さらにタイヤを空転させることもほとんどなく、コースを走り切った。「ただやっぱりFRだから、スタックの可能性は4WDよりは大きい。だからフロントバンパーにウインチを内蔵したり、サンドラダーをGTウイングのイメージで積んでおいたよ」
 もちろんオンロード走行も快適そのもの!ノーマルのフェアレディZがむしろシャコタンに見えるほど、Z-ADVENTUREはオフロードも街もスタイリッシュに駆け抜けていたのだった。

パワートレーンはフェアレディZのものを流用。エンジンはV6/3.7ℓ、トランスミッションは7速ATだ。スペックは336ps&37.2kg-m。ただしファイナルは3.4から4.3に変更。33インチタイヤを装着しているが、ノーマルよりも7%ローギアードだ。またリヤデフにOS技研のLSDインストールしたほか、マフラーはHKS製に変更。
フロントセクションにはウインチも搭載。駆動がFRのため、オフロードを攻めすぎた場合スタックの可能性もあるが、自力で脱出できるアイテムだ。仕様はナイロンワイヤー・1.5tクラスで、つまりはジムニー用と同等の性能だ。
サスペンションは基本的に4輪独立懸架式を踏襲。ただしアームを中心に小変更して約50㎜のリフトアップを実現。スプリング&ショックアブソーバーはKINGのコイルオーバー式&リザーバータンク付きに換装した。レーシーな造り込みに思えるが、現時点ではレース出場の予定はなく、あくまで快適な日常ユースを目指したとか。
タイヤはもちろんジオランダー。マッドテレーンタイヤのM/T G003を選びフロントには255/75R17、リヤには33×12.5R17を装着。この大径ファットタイヤを履かせるため、インナーフェンダーには大がかりな加工がされている。外側はフェンダー自体を製作した。純正より片側50㎜ワイドだが、Zのシルエットは崩されていないところがスゴイ!
フロントアンダーにはプロスペックのJAOS製ガードを装備し、エンジン下を保護。一方リヤにはヒッチメンバーも。実際、今回はスモールクラスのレースマシンを載せたトレーラーを引いてもらったが、こうした使い方もできるのがZ-ADVENTUREのパフォーマンスなのだ。さらにリヤエンドには自力脱出のためのサンドラダーを搭載。GTウイングスポイラーのように見える製品を選んだというが、なかなかスタイリッシュだ。そしてラゲッジスペースにはスペアタイヤを積む。前後に入るようフロント用のサイズ255/75R17をチョイス。

Zのフォルムを残したスーパースポーツオールラウンダーの実力!

フォルムは今どきのクーペタイプSUVそのもので、ノーマルのZがシャコタンに見えて違和感があるほどにバランスが良すぎる。走りは日常ユースでもまったく不便はないし、高速道路の走りも快速&快適なのだ。
ダートの走りを見ているとそのままオフロードレースやラリーで通用しそうなイキオイを感じられた。また、今回は深めの砂地も走らせたが、塙選手の走りならFR駆動でもハマる気配はなし! 33インチタイヤの装着を前提としていた理由がよく分かる。
オフロードコースのモーグルセクションを走る。ボディディメンションやサスペンションストロークの不足は心配だったが、最低地上高は250㎜確保されているし、塙選手はさすがの走りを披露! ボディへのヒットもタイヤの空転もなくセクションをクリア。またZアドベンチャーとジオランダーM/T G003の相性も良いようだ。特にトラクション性能には目を見張るものがあった。
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◆NISSANフェアレディZに33インチタイヤを装着!Mr. ジオランダー・塙選手が手掛けたGEOLANDAR M/T G003をはいたスーパースポーツSUV「Z-ADVENTURE」◆