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デリカD:5

2026.01.26

【デリカD:5進化論】次章を迎えたデリカD:5。その原点は、先代にある

力強く洗練されたフロントマスク、最新の制御がもたらす安定感、そして乗る人すべてを安心で包み込む新しい走り。その完成度はまさに、次の時代へ進むにふさわしいものだ。それは、長く愛されてきたデリカD:5が、次の章へと歩みを進めた確かな証でもある。
確かに、新型は新しい。けれどその〝新しさ〟は、何もないところから生まれたわけではない。そこには、これまでの年月をともに走り抜けてきた先代デリカD:5の存在が、確かな土台として息づいている。
数年にわたり、多くの家族や仲間と旅を重ね、雪道も悪路も、毎日の送り迎えも、どんな場面でも頼もしい相棒であり続けた。使い勝手のよさ、丈夫さ、そして何よりも〝信頼〟という価値。それらは新型がどれほど進化を遂げても、簡単には上書きできないものだ。新型は確かにすばらしい。けれどその輝きの下には、先代が築いた確かな地層がある。長年の改良で磨かれた完成度、乗る人の暮らしの中で育まれたリアルな愛着、それこそが“デリカらしさ”の根幹にほかならない。
時代が移り変わっても、受け継がれる想いがある。新型に触れて感じる〝未来のデリカ〟と、先代に乗って思い出す〝原点のデリカ〟。どちらもこのブランドを語るうえで欠かせない、ふたつの魂だ。
その両方を知ってこそ、私たちは今、このクルマの本当の強さと優しさをより深く理解できるのだ。

DELICA D:5

ワイドなフロントグリルは存在感を放っていたが、光沢の強いメッキ処理が加わることで、デリカ本来の質実剛健なイメージよりも“華やかさ”が前に出た印象。ミニバンとしての上品さと力強さが同居する表情だった。

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押し出し感を増した新型D:5の顔つきは、デリカ本来の頼もしさを一層強調するデザインだ。ワイドで堂々としたフロントまわりは、オフロードでの安定感をイメージさせると同時に、日常での存在感も大きく高めている。

高級路線へ舵を切った前型。新型デリカは“原点回帰”なのか?

2019年1月、デリカD:5が初めて迎えたマイナーチェンジは、我々メディアはもちろん、デリカを熟知するサードパーティ=アフターパーツメーカーまでも驚かせた。最大の理由は、そのスタイルデザインにある。
ボディ構成こそ変わらないものの、フロントマスクはシャープに切れ上がった新シグネチャーへと刷新。タテ型ヘッドライト、大胆なメッキ仕上げの巨大グリル、いわゆる〝シェイバー顔〟が与えられたのだ。
「え? これがデリカ? 高級車に振りすぎじゃない?」「アルファードやエルグランドの仲間入り?」
当時、そんな声が各所で飛び交った。あの〝タフなデリカ〟はいったいどこへ行ったのか、と。しかし、フタを開けてみれば、このシェイバー顔は従来を上回る販売台数を記録することになる。なぜか?
もちろん、時間の経過とともにデザイン潮流が追いついたという背景もある(言わば〝時代を先取りした顔〟だったわけだ)。だが最大の理由は、デリカが「デリカであり続けた」ことにほかならない。ラフロードを苦にしないタフな走り、高いユーティリティへのこだわり。その本質が揺らぐことはなかった。
そして今回、デリカD:5は2度目の大幅なマイナーチェンジを果たした。それはまるで、デリカという存在の原点へと回帰するようにも映る。「堅忍不抜」。周囲の評価に惑わされず、自らの価値を磨き続けてきた1台。その〝ひとつの集大成〟が、ここに完成したのである。

■全長×全幅×全高=4800㎜×1815㎜×1875㎜
■車両重量=1990㎏
■乗車定員=8名q最小回転半径=5.6m
■排気量=2267cc
■最高出力=145PS/3500rpm
■最大トルク=38.7kgf・m/2000rpm
■燃費=13.6km/L
■駆動方式=4WD
■トランスミッション=8速スポーツモード A/T
■使用燃料=64L(軽油)
■タイヤサイズ=225/55R18

モア・オフロードに回帰した屈強さと重心を高く見せる裁量

新しいデリカD:5が掲げたコンセプトは、“新たな冒険に導くギア”。そこから思い浮かぶのは、タフな走りと頼もしさ、そして揺るぎない力強さだ。今回のエクステリアは、まさにそのイメージを的確に体現した仕上がり。ミニバンでありながらSUVでもあるという、「唯一無二」の存在をさらに鮮明に描き出している。
新型デリカD:5の変更点で最も目を引くのがエクステリアだ。ボディの基本プロポーションこそ変わらないものの、最大の特徴はフロントマスク。メッキパーツを廃し、ダークグレーを基調にサテンシルバーとグロスブラックの横スリットを組み合わせたことで、ギア感あふれるタフさと、よりスポーティなムードを備えた表情へと生まれ変わった。
思えば前型でも、アフターマーケットではメッキグリルをブラックアウトするカスタムが多かった。デリカには、やはり〝タフな道具感〟がよく似合う。開発陣も今回の変更にあたり、「ミニバンであっても、他とは異なるデリカらしい力強さを再定義したかった」と語る。言い換えれば、やや高級志向に寄っていた前型の佇まいを、ワイルド&スポーティなアウトドアギアのイメージへ〝軌道修正〟した格好だ
フロント下部はブラック仕上げのアンダー部にボリュームを持たせ、アンダーガードあるいはオーバーライダー風のタテスリットを配置。あたかもアプローチアングルが拡大されたかのような印象を与えるが、実際の対地アングルは前型と一切変わっていない。つまり〝車高が上がったように見せる〟巧みなデザインワークが施されているのである。
サイドに回ると、アンダー部分をブラックアウトするとともに、新たにブラックのホイールアーチモールを設定。片側10㎜の控えめな出幅ながら、上下に噛み合うギアのような造形により、実寸以上にワイドで力強いスタンスを演出する。車両全体を眺めた際の下半身の安定感にも大きく貢献している。なお、タイヤ&ホイールのサイズ自体は前型から変更されていない。
リヤ周りも、立体感を強調した新バンパーにより力強い佇まいを獲得。アンダーのブラック部分はサイドを切れ上がったように見せ、中央にはフロントと同意匠のタテスリットを加飾している。こちらもディパーチャーアングルが向上したように見せるデザイン的な演出だ。
リヤゲートパネルは、よりシンプルかつプレミアムな面構成に改められた。横一文字のガーニッシュはブラックへ変更され、従来その下にあった〝DELICA〟ロゴはガーニッシュ上に移動。左右のリヤコンビランプも内部をブラックアウトし、シグネチャー形状も刷新されている。
これら数々の意匠変更により、デリカD:5は従来以上にSUV的な力強さを強調し、ラフロードがよく似合う〝アウトドアギア〟としての存在感をより鮮明にした。これこそが、他のミニバンとは一線を画し続けるデリカ最大の魅力と言えるだろう。

走りをもっと強くしたS-AWCという最先端技術

(左)NEWデリカD:5(右)デリカD:5

エクステリアの変更も大きいが、新型デリカD:5最大のトピックスは、やはり〝走り〟の大幅な進化だろう。その鍵を握るのが、三菱自動車独自の車両運動統合制御システム「S‐AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」の新採用である。S‐AWCは、あのランサー エボリューションXで初めて搭載された技術で、現在ではアウトランダーPHEVやエクリプスクロスといった本格SUVに採用されている。
その最先端システムが、ついにデリカにも与えられた。これにより、ドライバーの意図に忠実なハンドリングと、とりわけ雪道やアイスバーン、ラフロードなど滑りやすい路面での走行安定性が飛躍的に向上したという。たとえば従来は、雪道で「しっかりアクセルを踏み込まないと曲がりづらい」場面が少なくなかったが、新型ではアクセルオフやハーフアクセルの状態でも素直に曲がってくれる、そんなイメージだと開発陣は語る。

写真はActive Adventure Style

同時に採用されたのが、新たな〝ドライブモード〟だ。従来はダイヤルで2WD/4WD‐AUTO/4WD‐LOCKを切り替えていたが、新型では同じダイヤル操作で「エコ」「ノーマル」「グラベル」「スノー」という4つの走行モードを選択する方式へと進化した。切り替えはドライバー任意だが、「ここは4WDにすべき?」「2WDで大丈夫?」と迷いがちだった場面でも、これからは路面状況に合わせて最適なモードを選べばいい。誰にとっても判断しやすく、結果としてデリカD:5本来のパフォーマンスをより安定して引き出せるようになった。これもまた、〝走りの進化〟を象徴する大きなポイントと言えるだろう。 さらに制御技術として見逃せないのが、新採用の「ヒルディセントコントロール」だ。新型デリカミニにも搭載された機能で、スイッチをONにすれば急な下り坂でもブレーキペダルを踏むことなく、タイヤをロックさせずに一定速度を保ちながら下っていける。作動車速は約2〜30㎞/hの範囲でコントロールされ、山道や雪道といった険しい下りはもちろん、立体駐車場の急なスロープなどでも心強い味方になってくれるはずだ。とくに、女性ドライバーや運転ビギナーがデリカD:5を運転するケースが増えている昨今、このサポート機能の意義は大きい。なお制御速度をデリカミニより低めに設定しているのは、デリカD:5のほうがより険しい道を走るシーンを想定しているからだという。
こうした最先端の電子制御技術を惜しみなく投入したことで、新しいデリカD:5は信頼性や走破性、そしてドライバーと乗員が得る安心感において、明らかに〝一クラス上〟の領域へと到達した印象だ。その実力は、本格SUVと肩を並べるだけでなく、クロカン4WDにも迫るほどの高い次元にある。唯一無二の存在感には、まさにさらなる磨きと深みが加わったと言っていいだろう。

2019年のフェイスリフトでは、ガソリンエンジンと2WDモデルを思い切って廃し、“ディーゼル+4WD”に一本化することで、本格SUVとしての進化を明確に打ち出したデリカD:5。メッキパーツを多用したエクステリアは、好みが分かれる部分でもあったかもしれないが、クルマとしての本質はしっかりと守り抜いていた。

2025年、約6年ぶりのマイナーチェンジを受けたデリカD:5は、タフなイメージをいっそう強化している。メカニズム面では、ついに三菱自動車が誇るS-AWCを搭載し、SUVとしてもう1ステップ上の領域へと進化を遂げた。これまで以上に広がった走りの世界を、存分に味わってほしい。