国内随一の総合4WD・SUVパーツメーカとして、知られるJAOS(ジャオス)。同社はモータースポーツプロジェクト『TEAM JAOS』として、国内外のオフロードレースに参戦し、そこで得られた貴重なノウハウを次の製品づくりにフィードバックしている。
2022年からはメキシコで開催され、半世紀以上の歴史を重ねるSCORE World Desert Champion ship SCORE BAJA1000(以下、BAJA1000)に舞台を移し、北米3カ年計画をスタート。第1期のラストイヤーとなる昨年は、念願の完走を果たすだけでなく、市販車無改造クラスで優勝を果たした。そして2025年1月に開催された東京オートサロン会場で新たな新3カ年計画が発表された。最大のトピックスは参戦車両をLEXUS GX550hへと変更したこと。
世界一過酷なオフロードレースと称されるBAJA1000においてハイブリッド車は稀有な存在であり、ある意味未知の領域への挑戦だ。もちろん未来の地球環境を見据え、JAOSが今後避けては通れない〝カーボンニュートラル〟というテーマも、今回のプロジェクトには込められている。
これまでBAJA1000にチャレンジしてきたことで一定数のノウハウは蓄積されたが、レースマシンの変更はそれをはじめから構築するような大きな挑戦だ。社員ドライバーである能戸選手は急ピッチでマシン製作する必要があったが、過去の経験を活かし、マシンは無事完成。今回はそのシェイクダウンの模様をレポート。テストは2回に分け、群馬県・旧浅間サーキットと長野県・モーターランド野沢という異なるシチュエーションを走り込むことで、サスペンションのセッティング/タイヤのチョイス/シート調整/ブレーキ調整などを実施した。
なお、今回も群馬トヨタグループ(以下、GTG)が強力にバックアップし、合計7名のメカニックがレースマシンをサポート。BAJA1000のサービス作業は綺麗な設備が整ったピットとは全く異なり、まさに野戦病院のような過酷な環境。現地での作業をイメージしつつ、サスペンションの交換手順や燃料ラインの切り替え方法などを、全員が頭と体に叩き込んでいた。
さて編集部が取材に訪れたのは、2回目のシェイクダウンで、場所はモーターランド野沢。この日はタイヤの選定を行なっていて、豊富なオフロードタイヤのラインアップを誇るトーヨータイヤのオープンカントリーシリーズからM/T、R/Tトレイル、A/TⅢの3本を実装して繰り返しチェックを行なう。
一方大きな起伏が連続する浅間サーキットでは、ジャンプをくり返し行ないサスペンションやブレーキを始め、各部のセッティングをサプライヤー担当とともに煮詰めたという。今年11月がいよいよ初陣。ハイブリッドマシンがBAJA1000をどう戦うか!?TEAM JAOSに期待したい!



TEAM JAOSのサービス作業を担当するのは群馬トヨタグループ(GTG)から選出された精鋭メカニックたち。TEAM JAOS監督はジャオス代表・赤星さん、そしてチームアドバイザーを群馬トヨタの横田代表がつとめ、まとめ役となるのはRVパーク店長・二宮さん、2年目の参戦となる小畑さんが頼もしい兄貴分的存在だ。その他5名(大久保さん/須藤さん/田神さん/高橋さん/吉田さん)は初挑戦。中には海外渡航が初のメンバーもいるそうだ。
GX550h “OFFORAD” TEAM JAOS 2025 ver.


3年間の経験を活かして、タイヤサイズは迷うことなく37インチに。BAJA1000=乾いた路面の印象があるが、実は雨が降るとかなりマッディになるらしい。それを想定してタイヤのグリップを確認し、R/Tトレイルが選ばれた。ショックはKYBのスペシャル仕様に変更するが、これまで使用した物を流用せず、今回のマシン用に改めてショックを新開発。他にもプロジェクトμのブレーキやトヨタ紡織のスペシャルシートなどが入念にチェックされた。

モーターランド野沢はコースに緩やかな傾斜がついているが、全体的に見るとほぼフラットな路面。しかも硬くしまった路面であるため、高速走行時のグリップ感に加えて、さまざまな挙動やタイヤの耐摩耗性などを徹底的にチェック。OPEN COUNTRY R/Tトレイルが第一候補ではあったが、(それを想定したセッティングも行なっていた)が、実走テストでしか分からないこともあるため、同じくOPEN COUNTRY M/TとOPEN COUNTRY A/TⅢも比較した。結果、R/Tトレイルの 37×12.50R17が今回のマシンのタイヤに選ばれた。

今回のGX550h “OFFORAD” TEAM JAOS 2025 ver.のコイルスプリングは市販品のBATTLEZをベースとしたもので、ダンパーも同じくKYB製。ちなみにBAJA1000・2025大会からレギュレーションに変更があり、ダブルショックの使用が禁止となった。そこでリザーバータンク付きのシングルダンパーを、GX550h “OFF-ROAD”に向けて新たに専用開発。その性能検証やサスペンションのセッティングのために、起伏が多い浅間サーキットではジャンプを繰り返すなどして、入念なチェックが行なわれた。




昨年のBAJA1000ではクラス優勝だけでなく、ドライバー交代を行なわず走り切って「アイアンマン」の称号も手にした能戸選手。ドライバー兼マシンビルダーであり、これまでTEAM JAOSが参戦してきたラリーマシンの数々は彼が主導して製作したもの。ちなみにオフロードレースデビューは小学生の時で、当時からBAJA1000参戦するのが夢だった。

- TEAM JAOS特設サイト
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- JAOS
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