カジュアルなSUVとして誕生し、いつのまにかアッパークラスを語れるポジションへと進化したエクストレイル。初代モデルがデビューしたのは今から20年以上前となる2000年のことだった。
当時は日産のSUVラインナップにおいては、テラノやサファリが存在しており、エクストレイルが提案していた斬新なカジュアルテイストに、筆者は個人的には行き過ぎ感を覚えた。しかし振り返ってみると、そのテラノとて、ダットサントラックをベースにSUVへと仕立てられたモデルで、トピックは大きすぎないボディサイズと、日常で快適さを感じ取れる乗り味、そこそこに荷物を積み込めるラゲッジと、過分でない走破性をバランスさせたことにあった。つまりテラノもカジュアルに乗れるSUVとしてデビューしていたことが分かる。
こうして言葉を並べてみると、ずばりエクストレイルに似ている。ただしテラノとエクストレイルの大きな違いは、エクストレイルでは乗用車に使われるプラットフォームをベースにして、そこに走破性を加えるという新しいアプローチを採用したことだ。それによって得られた日常における快適性やアッパークラス感は、当時のテラノでは表現できなかった部分ともいえよう。
エクストレイルは世代を経るごとに乗用車的な上質感を高め、現行型である第4世代目となると、もはやオフロードでの泥汚れをそのまま放置しておきたくない………そんなモデルとなった。ちなみに現行型エクストレイルでは、C/Dの両セグメントに対応できるポテンシャルを与えられた最新世代のプラットフォームを採用しており、サイズ的にはCセグメントでありながら、乗り味や質感の面ではDセグメントを感じさせることがポイント。ご存知の通り、このプラットフォームは、ミツビシ・アウトランダー(PHEV含む)と共用しており、そこに互いのブランドのハードウェアを組み合わせることで、個性を表現している。
エクストレイル現行型のトピックとしては、日産としては第2世代となる「e-POWER」×「VCターボ」と、電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」の採用にある。可変圧縮ターボエンジンは駆動に携わることはなく、充電専門という役割を与えられているが、効率のいい発電を行ない、高出力モーターに対応できる電力の供給を可能としていることがポイント。もちろん低燃費や静粛性もアドバンテージとしているユニットである。
そしてe-4ORCEは、前後に配置されたそれぞれのモーターを独立して駆動させる制御技術で、まさにドライバーに不安を感じさせない安定性と、意のままにと表現できるほどの操作性をつくり込んでいる。これ以外にもフロントだけを駆動させる2WDモデルもラインナップされている。
インプレション
乗り味は電動モデルらしいきめ細やかさが上質感へと繋がっている。走り出しはストレスフリー。いうまでもなくアクセルペダルを踏み込んでいるのに前へ出ないといったレスポンス遅れは存在せず。さらにそのままアクセルペダルを踏み続けていても、モーター駆動をこれ見よがしに見せつけるような過度な加速感も見当たらない。まさにスーッと滑らかに加速していく。日常域では乗り味に固さを感じる人もいるかもしれないが、それがハイスピード域でのハンドリングとフラットライド感を求めたものであることを知ると、不満に感じなくなる。むしろ、日常域ではハンドリングにしっかり感がつくり込まれており、それが安心感にも繋がっていることが見えてくる。
発電のために存在しているエンジン〝作動〟音はもちろんある。しかし、加速時のフィーリングに見合ったものとなっているし、そもそも「発電してまーす」といわんばかりに突然に高回転域を多用することもないため〝気にならない〟。そう、モーター駆動のみとなるe-POWERであることを忘れてしまうほどだ。
ハンドリングにはある種優等生すぎる印象を受けた。さらにかつてのオンセンターが曖昧なハンドリングを知っている者からすると、最初は違和感を覚える。しかしアクセルペダル操作だけで、回生ブレーキによる強い減速も可能とした「e-pedal Step」の操作に慣れてくると、そこにはハンドリングとのバランスまでつくり込まれていたことにむしろ感銘を受けるはず。
ちなみにいわゆる駆動切替スイッチは存在せず、ドライバーが求める走りは「オフロード」「スノー」「オート」「エコ」「スポーツ」といった6パターンのドライブモード切り替えによって提供される。
悪路走破性とはこういうものだと考え方が固着してしまっている方々は、それを捨て去れないならば、このモデルに近づかない方がイイかもしれない。そう、このエクストレイルは、これまでのSUVとは概念を大きく変えている。
インパネは上下で2カラーを組み合わせ、さらにワイド感を強調した造形もあって、伸びやかさが感じられる。Gグレードではセンターに12.3インチワイドディスプレイを標準装備し、NissanConnectへのアクセスはもちろん、スマホを連携させることも可能。センタークラスターからコンソールへの流れをしっかりと確保し、アッパークラスであることをアピールしていることもポイントだ。