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シン・ナナマル完全攻略 vol.2 オフロード最速インプレッション編

■LAND CRUISER70 オフロード試乗

 原点回帰と新世代感のある内外装のアピアランスに惹きこまれて、さらにスペックを知れば知るほど、ボクらの心を捉えて離さない新型ランドクルーザー70(GDJ 76W)。それをいよいよ試乗できる時が来た!今回愛知県は豊田市にあるオフロードコース『さなげアドベンチャーフィールド(以下、SAF)』取材協力のもとで〝絶対にキズをつけないこと!〟を約束に、ナンバー登録もされていないコース内オンリーの実車でオフロード・オンリーのテストドライブを実施した。

 オフロードに乗り込んでまず印象的だったのは、乗り心地の向上だろう。従来の70ではちょっと荒れた路面でも強い突き上げを感じたものだが、今回のGDJ76にはそれがない。これはリヤシートの乗員にとってはかなりの朗報だ。
 アクセルを少しだけ強めにすると背中を押されるような加速感もある。この時のダート走行でも、スムーズに伸縮するサスペンションが荒れた路面によく追従。さらにショックアブソーバーの働きもあって、しなやかな乗り味と扱いやすい挙動をみせてくれた。

最大トルク500N・mを発揮する強烈なエンジンを軸にしたパワートレーンと強靭なラダーフレーム

 まずはパワートレーンの確認だ。エンジンスタートはセルモーターはキーをひねって起動する。今時はボタンで……というクルマがほとんどだが、このあたりも実にナナマルらしくてイイ。エンジンは2.8ℓディーゼルで150プラドに搭載される1GDと同じだが、振動や音はインシュレーションの関係なのだろうか?こちらの方が少し大きめに感じる。もちろん乗用車の騒音規制をクリアしているので問題はないし、むしろ重厚感や力強さを感じさせる。それはかつてランクル70に搭載されていた直6ディーゼルの1HZエンジンを思い出させてくれる。
 発進はとにかく力強い。プラドよりギア比が低くなっているおかげで、クリープだけでクルマをグイっと押し出していく。さらにSAFのコースでは4Lシフトを推奨しているのだが、その頼もしさは圧倒的だ。4L第1速のアイドリングは時速2㎞ほどで、徒歩よりも遅く、地面を這いつくばるように走るクローリング性能は、まさに70ならではのパフォーマンスだろう。

 今回のランドクルーザー70のエンジンは、150プラドなどでもお馴染みの2.8ℓディーゼルターボ(=1GD-FTV型)を搭載し、150kW(204ps)&500N・m(51kgf・m)を発揮する。プラドに搭載される仕様とスペックに大きな変更はないが、負荷の大きな低速走行を想定して冷却性能が強化されている。
 そこに組み合わせる6速ATはマニュアルモード付き。前回の再販時とは異なり、マニュアルミッションでなくなったのもポイント。
 実は世界的にもAT(オートマチックトランスミッション)のニーズは高まってきており、このAT仕様は各国の輸出モデルにも積極的に採用されるという。もちろんこちらも低速走行重視にチューニング。ファイナル比はプラドより10%ローギアード化されているのだ。
 6速AT(シーケンシャルシフトマチック)を採用。トランスミッションは小型・高効率・低燃費を両立した6速ギヤトレーンとエンジンの最適な回転域を有効利用する専用パワーモードで、力強い走りと強めのエンジンブレーキを実現。さらにオートマチックトランスミッションガードなどを設定し、ボディの下面をしっかりと保護しているのもナナマルならでは。
 4WDシステムはシンプル、かつ耐久性と信頼性のある副変速機(サブトランスファー)付きのパートタイム式。トルク配分は2WDが前輪0:後輪100/4WDでは前輪50:後輪50。このH2‐H4‐L4の切替をシフトレバーで行なう。Hi&Loのギア比は先代GRJ76と変更はないが、ファイナル比を下げて、L4-1速時のアイドリングでは時速2㎞の超低速化を実現。なお、フリーホイールハブはオート式とマニュアル式を切り替えられるデュアルモードオートマチックロッキングハブを採用。2WD時の滑らかな低燃費走行とともに、オフロード走行での4WDの高い走破性を存分に活かすことができる。
 日本向けには3ナンバー(=乗用登録)となったランクル70だが、世界市場における“ワークホース”たる立ち位置はゆるぎない。歴代ランドクルーザーの強靱な骨格を支えてきた伝統のラダーフレームを継承。しかも小型トラック向けとしては最も剛性が高いとされる通称“Fゼロ”のラダーフレーム(1t積みクラス)を採用し、高い信頼性を担保している。今回の仕様は、そのままオーストラリアや中東にも輸出されるもので、ヘビーデューティな70のポテンシャルは少しも犠牲にされていないのだ。ちなみにランドクルーザー300/250はF-1、ハイラックスはF-3フレームを採用する。
 リフトに上げて下回りをチェックしてみたが、出っ張りはほとんどないフラットな状態にされているのが分かる。また、オートマチックトランスミッションガードなどの設定も確認できる。丈夫で耐久性にも優れたラダーフレームは、オフロード走破時に求められる高い剛性や強度の確保だけでなく、オンロード走行時の安定性や快適な乗り心地の実現にも貢献している。

VSC&A-TRAC、DACといったハイテクデバイスも装備

 今回の新型70にはVSC&アクティブトラクションコントロール(A-TRAC)やダウンヒルアシストコントロールシステム(DAC)といったハイテクデバイスも装備されているのがポイントで、ハードとソフトの両面で高い走破性を誇るのだ。
 まずA-TRACは、岩場や雪道などのオフロード走行時に一輪がトラクションを失っても、アクセルを一定時間開けていればスリップを検知して空転した車輪にブレーキをかけて、残りの車輪に駆動力を配分。ブレーキとエンジン出力を制御して駆動力を生み出し、グリップを回復してスリップ状態から素早く脱出できるなど、難コースへのアプローチでも安定した走行を容易にする。逆に岩場などではダイレクトに両輪にトルクをかけてくれるデフロックが有効だ。またDACについても、急なしかも路面グリップの悪い下り坂に対して(例えば冬の雪道など)、ビギナーでも安心に導いてくれるはずだ。

 近年のトヨタ系SUVには、当たり前のように採用されるアクティブトラクションコントロール(A-TRAC)を、ついにランクル70も採用。しかももちろん標準装備だ。作動条件はH4かL4シフト時で、岩場や雪道などのオフロードでスリップを検知すると、自動的に空転した車輪にブレーキをかけて、残りの車輪に駆動力を配分して悪路を走破できる。ちなみにランクル300の場合、「前」「後」「前+後」と3モードの稼働だが、70では「後」「前+後」の2モードとなる。
 電子デバイス系も充実しており、DAC(ダウンヒルアシストコントロール)やHAC(ヒルスタートアシストコントロール)などの機能も備えられた。さらに雪道などでの発進時に、駆動力の掛かり過ぎすぎ防止する「2ndスタート」や、より力強い走りや強めのエンジンブレーキが必要な時に使う「PWR/HAULモード」も搭載。

サスペンションがよく縮んでくれてしなやかに動き、快適さと走破性を両立

 続いては乗り心地やオフロード走破性をチェックする。とくに本モデルから3ナンバー化され、2枚リーフになったリヤ・サスペンションのパフォーマンスは大いに期待するところだ。
 はじめにSAFの外周路を走ってみて感じたのは、すこぶる乗り心地がイイ!前後リーフの旧70はもとより、再販されたGRJ70系と比べても突き上げは小さく、とくにリヤのサスペンションがしなやかに動いてくれているのがハッキリと分かる。ひと言で言えば〝いい意味でナナマルらしくない乗り味〟だ。撮影時にリヤシートに乗り込んでいたカメラマンに話を聞いてみても、ダート走行でもイヤな突き上げはほとんど感じなかったとのこと。以前のランクル70ならリヤシート乗車は長時間耐えられるものではなかったが、これなら小さなお子さん、それに付きそう保護者にも快適なはず。さらにシートそのものもしっかりとつくられているし、この3ナンバー化の恩恵は絶大だ。
 またリヤリーフのしなやかな動きは乗り心地だけでなく、サスペンションがひねられた時のトラクションの強さにも貢献している。ストローク自体はGRJと変わらないはずだが〝伸びるというよりはよく縮む〟ようになり、それが粘り強いグリップを生みだしてくれる。例えばヒルクライムを登り切った時の左右どちらかへの蹴り上がりなど、リヤの追従性の高さをもっとも感じるシーンだ。もちろん多少グリップが弱くなってしまう状況でもA-TRACのサポートがあるため、いとも簡単にクリアしてくれる。
 ひとつ難を言えば、もうちょっと小回りが効いて欲しかった部分はある。レポーターはJeep ラングラーJL・ショートを愛車としているのだが、せめてJL並みに狭い場所も回り込んでくれれば……。同じ前後リジッド車、ジープにできてランクルにできないはずはない!と思ったところだ。

 フロント:3リンクコイル、リヤ:リーフによる前後リジッド形式の足回りを採用。このタフなサスペンションレイアウトは、もちろん3ナンバーになっても変わらず踏襲されている。エンジンの軽量化もあって、スプリング&ショックアブソーバーがは大幅に見直され、乗り心地はソフトライド化された。そう、リヤのリーフはなんと2枚に!センターと両端でバネレートを変えるテーパー式とすることで、乗り心地と走破性の両立を狙った。
 
 サスペンションはストローク量がそれほど大きいというわけでもないが、とくにリヤについては“よく縮んでくれる”印象。その分、伸びた側のタイヤが地面を粘り強く捉えてくれる。リーフ枚数も2枚と少ないため、伸縮はしなやか、ショックアブソーバーもこのリーフに合わせチューニングされていて、姿勢の変化をよく制御してくれる。

強烈な低速トルクで激しいモーグルもあっさり走破する

 走行シーンをモーグルセクションに移すと、当然極端に前後サスペンションをひねる状況になるが、ここではさらにアーティキュレーションの強さとトラクションの安定感を感じることができた。路面に対して粘り強く踏ん張ってくれる感覚は、やはり再販モデルのGRJ70以上だ。しかも動きがしなやかで、路面変化に対して素早く追従してくれるので、グリップを失うことが少ない。そう、急激な挙動変化に対しても怖さがないのだ。オマケにここでは強烈な低速トルクを発揮するエンジンも走りをサポートしてくれるため、ほとんどアイドリングでOKで、時にちょんちょんとアクセルをアオるだけで激しいモーグルをあっさり走破して走ってしまうほどだ。
 そんなわけで3ナンバーになっても、ナナマルはリアル・オフローダーたるパフォーマンスを決して失っていない。むしろ走りに磨きをかけた印象さえあるシン・ナナマルだ。

 モーグルでは、ディーゼルの低速トルクを生かしてアクセルコントロールをシビアにならず、ジワジワと攻めることができる。A-TRACも活用できるが、フロントの重さを利用して、フロントに荷重移動した瞬間にアクセルを開ける用に走ると、より強いトラクションを得ることができる。ダウンヒルではDACの使用がオススメ。

 さなげの外周路では、従来型に比べ飛躍的によくなった乗り心地が印象的だったが、一方ヒルクライムでは追従性のいいサスペンションと、低速で力強いパワートレーンの相性の良さを発揮する。大小ワダチができた少し荒れた路面の上り(20度くらい)を4分の1アクセルをキープしているだけでスルスルと登り切る。低回転域から発生する極太トルクはディーゼルならでは。

既存のGRJ76/79用のアフターホイールの装着も可能

 タイヤ&ホイールはGRJ76からの変更はなし。タイヤは265/70R16のオールテレーン(ダンロップ・グラントレックAT23)で、ホイールはP.C.D.150-5Hと、これも従来と同じサイズ。フェンダーのワイド量も大幅な変更はなさそうだし、これなら既存のGRJ76/79用のアフターホイールの装着もできるだろう。

動画でもシン・ナナマル! レッツゴー4WD公式YouTubeチャンネルで公開中

さなげアドベンチャーフィールド全面協力のもとで実現した今回のランクル70特集。そのオフロード試乗の模様をレッツゴー4WD公式YouTubeチャンネルで公開している。まだまだ実車が走っているところを見られない貴重な動画をチェック!

レッツゴー4WD公式チャンネルで実際にSAFを走っているランクル70の模様を公開中