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トライトン

2023.11.17

新型トライトン テストドライブ!シンカする三菱4WD技術を証明

 日本ではそのポテンシャルをテストするシーンはほとんどない、と言っても過言ではないのに、ここのところヘビーデューティを語りたくなる本格派4WDデルへの注目度は高まっている。
 かつての“クロカンモデルを”知っている者からすると、最新のモデルたちは乗用車的になったといえる乗り味や快適性を持っている。一方でトラブルが少ないことからロングライフに対応できるし、さらに例え手放すことになってもリセールバリューが高いなど、クロカンを知らぬ人にも本気で薦められるモデルへと進化していることも身をもって感じている。 
 そんなヘビーデューティモデルとして7月にその存在を明らかにしたのが、三菱の新型ピックアップトラックのトライトンだ。海外生産へと移管し、国内で見ぬ間に随分立派なサイズに成長していたが、なんと、これをほぼそのままに、国内導入することも同時に発表された。そして今回“そのトライトン・プロトタイプ”と三菱のオフロードを走れる全モデルを合わせたテストドライブを、北海道にある三菱のテストコースにて試す機会をいただいた。
 ちなみに、そのほかの車種とは、デリカD:5、アウトランダーPHEV、デリカミニだ。トライトンのようなラダーフレームを採用したヘビーデューティタイプではないが、いずれも三菱SUVの精鋭たちだ。一体どこまでオフロードを走れるのか……そしてトライトンのポテンシャルはいかがなものか、ワクワクしながら出かけることとなった。
 テストドライブの様子の前に、まずはトライトンについて簡単に説明しておこう。かつて日本で販売されていたストラーダの(もう少し細かに語ると78年に誕生したL200)の末裔となるモデルだ。スタイリングはひと目でお分かりいただけるように、なんでも積み込めるベッドとキャビンとを組み合わせた“ピックアップトラック”スタイルだ。
 かつてを知らぬユーザーにしてみれば新鮮に見えるかもしれないが、90年代までは国内でもよく目にしていたジャンルなのだ。ただし世紀が移りつつある時期に、日本ではディーゼルユニットへの排気ガス規制強化などもあってフェードアウト。国内で目にしなくなったとはいえ、その生産はタイでずっと続けられており、初代トライトンはV6ガソリン+4新型トライトン(プロトタイプ)新型トライトン(プロトタイプ)新型トライトン(プロトタイプ)ATという組み合わせで“限定車”というカタチで逆輸入されていた。ただし大ヒットには至らず11年に販売を終えている。
 ちなみに、受け入れられなかった理由に、ラインナップがガソリンエンジンのみということもあったが、国内向けには大きすぎると評されたボディサイズもある。
 ところが、それから数年経った17年。かつてストラーダの好敵手だったトヨタ・ハイラックスがやはりタイからの逆輸入を開始。大き過ぎるボディという弱点は変わらなかったものの、ディーゼルユニットの搭載も功を奏して、予想外に大ヒット。そして、その後を追うように三菱も、再びトライトンを国内導入するという、流れになって今に至る。

■新型トライトン(プロトタイプ)

世界を駆ける三菱のもう一つのフラッグシップモデル

 来年に日本へ導入される新型トライトンについて簡単に紹介しておこう。ボディサイズは全長5360㎜、全幅1930㎜、全高1810㎜と、国内で取り回しや駐車場に苦労するサイズであることは変わっていない。エンジンはツインターボを採用した2.4ℓディーゼルで、トランスミッションは6速AT。ボディはラダーフレーム別体構造とし、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン式コイルスプリング、リアはリーフリジッド式を組み合わせ、4WDシステムにはパジェロ譲りのスーパーセレクト4WDⅡを採用。まさにヘビーデューテイ4WDそのものの内容だ。

今年7月26日、生産国であるタイにおいて、3代目となる新型トライトンは発表された。ラダーフレームを一新して、乗用車的な扱いやすさからオフ走破性までをブラッシュアップ。ライバルを大きく引き離すポテンシャルを手に入れた。来年初頭に国内へ再投入することも発表済。
ボディサイズは大柄となり、ウインドウ面積も狭められるなど、キャビンからは周囲を把握しづらいのではないか?と思われるかもしれないだろう。しかし実際は逆。ボンネットの両端はカットされている分、その先の路面の様子を確認できるなどといった、デザインと視認性(機能性といっても良い)をバランスさせているところが多い。
水平基調のインパネ、目立ってはいないがサポート性の高いシートデザインなど、まさに、シンプルかつ質感を覚えさせる、乗用車テイストがあちこちに見られる。リアシートは膝前のスペースをしっかりと確保しているだけではなく、フロントシート下へ足をすっと入れられる形状としていることなど、ピックアップトラックだから仕方ない…という言い訳は一切感じられない隙の無さだ。

テストコースは三菱自動車十勝研究所内の十勝アドベンチャートレイル

 今回のテストフィールドは北海道にある『三菱自動車十勝研究所』内にある十勝アドベンチャートレイル。かつてはオープンな施設としてつくられたものだが、現在では研究開発を行うためのクローズドコースとなっている。
 ちなみにこのコース、かつてドライバーとしてパリダカールラリーで日本人初となる総合優勝2連勝を果たし、最近では、チーム三菱ラリーアート総監督としてアジアクロスカントリーラリーに参戦している増岡 浩氏の設計によるもの。しかしそのコースは、さまざまなコーナーを備え、いろいろなレベルのモーグルを用意し、角度を変えたヒルクライム(路面状況もさまざま)を設定するなど、クルマの性能を確認できる内容となっていることがポイントだ。そのヒルクライムには「ダカール坂」という名称が与えられていた。

今回の〝オフロード〟テストドライブを行なったのは北海道は三菱自動車十勝研究所内にある十勝アドベンチャートレイル。当初はオープンな施設としてつくられたものだったが、現在では研究開発を行なうためのクローズドコースとなっている。

新型トライトンの実力に驚愕! 試乗インプレッション速報

 テストドライブは、新型トライトンからとなった。オフロードでの試乗となったが、コースインするまでの数mの間に、そのすべてが乗用車的になっていることに気づいた。まずは、タイヤの接地感が豊かであり、その転がりも実になめらかであり、アクセルペダルに足を乗せただけですっと発進させてしまった。ステアリングを操作すればそこにはダイレクト感がありつつ、軽快さも備えていた。そう、ピックアップトラックに色濃く残されていたはずの「曖昧さ」が見当たらないのだ。
 細かに観察するも、たとえば、ステアリングギア比はクイックになっているのだが、かといって、違和感を覚えるほどのクイックさはない。まさに、意のままの感覚がそこにはあり、乗用車的そのものだった。ボディサイズは決して小さくなく、ロングホイールベースも相まって、独特の乗り味があるはずなのに、それがない。

 その上で、乗り心地にも不満は見当たらず、上下動の激しいオフロードでありながらも、突き上げを感じさせる手前にとどめていたから驚きだ。もちろん、少々大きな入力に対しては、乗用車そのものの乗り心地とは異なる面もあるが、そこに不快と表現したくなる乗り味は見当たらなかった。トルクフルだが、扱いやすさも備えていたエンジンフィールも強く印象に残った。
 これは明らかにフルモデルチェンジによって手にいれた、新しいピックアップトラックスタイルだ。実は、新型へとスイッチした際に、ラダーフレームも一新しており、それによってハンドリングから乗り心地、そして快適性に至るまで、すべてをブラッシュアップしていたのだという。
 もちろん、オフロード性能も、サスペンションを伸ばしてタイヤを接地させ、そこに、4WDシステムとシャシー制御を加えるという、走破性の基本に忠実な設計により、高い走破性だけではなく、ドライビングしやすい、いや、ドライビングが愉しいという気にさせてくれたことも、強く印象に残っている。今回は、ほかのモデルとできるだけ同じシーンを走れるようにとコース設定されていたこともあったが、なんと、このコースを、4WDシステムはフルタイムモード、ドライブモードはノーマルのままで走り切ってしまった。ちなみに、新型トライトンには、7つのドライブモードが設定されているが、これをグラベルへと切り替えると、タイトコーナーでグイグイとインへと誘うかのような制御へと変わり、ロックやサンドでは、タイヤがグリップを失った際に確実にクルマを前進させてくれる。つまり、4WDシステムによる確実性に、操る愉しさと安心感までをハイバランスさせていた。

パジェロ譲りのスーパーセレクト4WDを採用。燃費効率に優れる2WD、さまざまなシーンに対応できるフルタイム4WD、確実なトラクションを約束してくれるパートタイム4WDに加え、ローギアを組み合わせてハードなオフロードも果敢に走破できるローモード(パートタイム4WD)を備える。
トライトンの要でもあるラダーフレームは、先代モデルよりも断面積を65%増やした。またハイテン材の採用比を高つつ軽量化を図りながら、曲げ剛性では60%、ねじり剛性では40%アップを果たした。その特徴は強靭かつ軽量なだけでなく、ハンドリングや乗り心地といった乗用車的なフィーリングを高めるのにもプラス。もちろん衝突時のエネルギー分散もデザインに織り込まれている。対してサスペンションはフロントはアッパーアームを高い位置として、オフロードにおけるサスペンションストロークを大きく確保できるダブルウィッシュボーン式。リアはリーフリジッド式なれど、リーフスプリングの枚数はなんと3枚で対応。もちろん軽量化にも貢献。
国内仕様のタイヤは265/60R18 のみ(の予定のようだ)。標準装備されることを念頭に開発されたタイヤサイズであるがゆえに、乗り心地に不満は見当たらない。